愛する人のため云々とかよく物語で聞くけど、あれ結局自分のためだよね
謎のタイトルにもう泣きそう。(←なおせって)
な、なんだこの人…
私はじり、と後ずさる。
「私は、選ばれし存在…この度は、この国の王妃様のためにはせ参じた…私はあの日、彼女に一目ぼれしてしまったのだ…!!」
……何この人。
どこから現れたのか。
というか、かんっぜんに騎士服着て現れたけど、もしかして、城に務めているのだろうか。
そして、妹姫と出会った…と。
「…確かにあれは、きれいな顔してるよなぁ…」
私なんかよりも圧倒的に。
…いや、私だって、醜いわけじゃないけどさ、やっぱ愛される容姿ってあるワケよ。
親はおんなじはずなのに、何この理不尽。
「やはり、貴様も恋敵!!…ココで、切り捨てる!!」
何か言っているけれど、悲しみにあふれている私の耳には聞こえない。
「む し だ と ! ?」
地団太を踏む彼にやっと意識が向く。
「…あ、ごめん。何だっけ?」
「……許さぬ…」
そういって、彼は抜刀の構えになる。
ピリリとした殺気に、気が引き締まる。
内容は全然聞いてなかったが、本人にとってはなかなか大切なことだったようだ。
悪いことをした。
…それなら、精いっぱい相手するのが、筋ってもんだよね?
え?謝らないのかって?…いや、やったことは戻んないじゃん。意味のない謝罪は、もうしたくないんだよね。
「参る。」
そして、加速する騎士。
ふむ。…平民だと思っている相手に、いきなり魔法を乗せて移動、真剣で対応とか、本気でキレてんな。
…殺されたくないしな。
私はそれを回避し、同じく加速して、距離をとった。
――ちなみにこの時の私は、間者だと疑われ無いように、とか、平民は魔法を使えない、とか、そういったことはスポンとどこかに消えていた。
ギラリとこちらを見た彼に、私は、咄嗟に防護壁を張る。
「怖いなぁ!?」
何このひと。ほんとに。
顔がいいだけに、残念すぎる!!?
てか、最大の恋敵は、王様だろ。
本来私が王妃のはずだから、もしくは父上…ノーム王国国王、になるかもしれないが。
「……可哀そうに…」
あの父親、妹姫を手放す気なんてさらさらなかったぞ。
だから、妹姫は今回、玉の輿に乗るために、強行突破したわけだけども。
…それで、国同士の信頼が損なわれたらどうするんだろうなぁ?
「フフ…?」
本当に何を考えているんだろう。あの子は。
ノーム王国が、民がどうなってもいいと言うのか。
……小さいころみたいに、また叱ってあげないといけないのかしら?
「……じゃま。」
「なっ…いま、貴様、なんと!?」
「邪魔だって言ったんだよ。聞こえてんだろカス。俺は、あの子に話があるんだよ!!」
怒りをにじませていうと、何を勘違いしたのか、呟き始める。
「……ふっふっふ…そこまで本気になってくれると、こちらも嬉しいよ…」
やや楽しそうになってきている。
…こいつ、もともと戦うのが好きな人間なんじゃないか?
…自分のためにだけ、こんなことをやっている人に、私の目的を妨害されんのか?
切れた私は、完全に魔法を開放して、一瞬で相手を叩きのめした。
手加減とかいらないだろ?
騎士なんだから。
私は、ニヤリと口角を上げて、彼にとびかかった。
ああ。血がたぎる。
こんな本気の戦闘なんて、いつ振りだろうか。
楽しい。ああ。子の命を懸けている感じ。
私がこういった戦いをしなくなったのは、成人したときから。王女には、許されないことだったのだ。
しかし、私は、軽度の狂戦士となっていた。
それからは我慢の毎日。
いつの間にか、戦わないのが常になっていた。
「ははははは!!」
「ひぃっ……」
「…逃げないでよ?仕掛けてきたのはそっちじゃないか。」
私は彼をさらに追い詰める。
楽しい。
逃げ惑う、彼の姿が。強ければ、誰かが肯定してくれる。
「負けない。負けたら、悪者にされる。」
勝てばいいのだ。
全て。彼女に勝って、勝って、勝って。
―――なんで、私は、誰にも、愛されないんだろう。
私は、無感情に、剣をふるった。
最後に見えたのは、男の、怯えた顔。
主人公何か心に闇抱えてるっぽいです。
そして、お姫様なのにバーサーカーでした。
読んで下さりありがとうございます。