ふたりでお話ししました。
私は絵本を手渡されて、中庭で何度も読み返してみた。
「主人公たちの心情……単純な文章なだけに読み取りにくい……」
何を意図して手渡されたのかよくわからないままだ。絵が綺麗とかそういうことではないと思う。
今回、コミュニケーション能力の向上が目的のはずだから、登場人物たちの心情を考察してみている。
「彼女のことを魅力的に思ったから、キスという求愛行動を行った……?しかし、容姿だけをみて求愛するなんてありえるのだろうか?相手のことも知らず、信用できるかもわからないのに……」
信用……。
はぁ……。気にしないように努めていても、やはり、頭に浮かんでくる。
だらしないとはわかっていても、頭を抱え込んでうなだれる。
「セレス。夜会ぶりだな。」
「ええ。……どのような御用でしょうか?」
陛下自らやって来られるなんて、なかなかないぞ。
「いや、ルシフェルがお前と話して来いというのでな。意味のないことを言うやつではないので、やってきたのだが……何を話せばいいのだろう。」
「……さぁ……?私に聞かれましても……」
何があったのだろう。
「何かトラブルがあったわけでもないですよね。」
「ああ。なぜか、恋愛感情などについて語られたが。」
「私もです。それで進められたのがこれです。」
「…………ぷっ……こほん。」
「笑いますよねやっぱり。私の恋愛偏差値は、子供並み、と言うことでしょうか……。」
……まぁ、初恋もまだだし、そう言われても仕方ないが……。
「俺もそうだ。別に、恋愛でなくても、国政について、協力ぐらいできるだろう?」
「そうですよね!」
なぜみんなそんなに恋愛にこだわるのだろう。
「恋愛には、なにか重要な意味があるのでしょうか……。」
「そうだな。」
恋愛……私が今気にしているのは、信頼についてだ。その人が好き、と言うのと、信じる、というのは同じなのだろうか。
「……陛下、あの……」
「なんだ?」
「私のことは、嫌いですか?信頼できませんか?」
「……なんの話だ?」
「あ、いえ……。」
唐突すぎた。
「今の、恋愛の話か?」
「まぁ、そうですかね。」
違うけど。
「嫌いではないし、むしろ好きなほうだ。信頼もしている。だが、これは、恋愛ではないのだろう?」
「……信頼、しているのですか?」
「ああ。」
信頼している……?
「なら、なぜあんなに仕事が少ないのですか?」
「…………は?」
不思議そうな顔をされた。
「ああ……そうか、こいつはちょっとおかしいとこがあるんだった……。」
「陛下、突然失礼です。なんですか?」
「いや、通常の場合、あのくらいの仕事量が普通だ。むしろ、普通の人間はなかなかやりたがらない量だ。」
「……なんと!」
自分がずれている自覚はあったけど、まさか、私の勘違いだったのか!!
「いや、早とちりしてしまい、申し訳ありません……。信頼してもらっていたのに、疑うなんて……。」
「いや、こちらも、不安にさせてしまって悪かった。」
公的な場でもないので、ふたりでちゃっちゃと謝りあう。
……でも、そっか。
信頼されてたんだ。
「ふふ……。」
ちゃんと、役に立ててる。嬉しい。
思わず顔がほころんだ。
「!」
こちらにきてからは、嬉しいことがたくさんある。
頑張ろう。
「あの、ありがとうございます。これで夫人の宿題に集中できそうです……って、どうされました?」
「っあ、な、なんだ?」
「いえ、上の空のようでしたので……。」
「ああ。少し考え事をしていてなっ……俺も仕事があるからな。」
なにやら慌てているようだ。引き止めてしまっていたか。
「はい。すみません。頑張ってくださいませ。」
「ああ……。」
私はそのまま見送った。
……頭抱えていたけど、体調が悪かったのだろうか。
足取りはしっかりしていたが、疲れているのかもしれない。
もっと私の仕事を増やして貰えばいいかな。
そんなことを考えながら、私は恋愛をテーマにした絵本に再度目を落とした。
読んでくださりありがとうございます!!!




