思い立ったが吉日っていうけど、行動できるのが結局別の日だったら凶日なのかな?
題名長っ!って自分で思った。
センスないんだよなぁ…
数日後、私は、その、騎士団員募集の列に並んでいた。
筆記試験と、実技試験の二つを受けることになっている。
……ただ、筆記が、簡単すぎて、ちょっと、この国の教育事情が心配になった。余計なお世話だろうけどね……。
いや、妹の入れ替わりが明らかになれば私がどうなるかは分からないから他人事ではない……?
問題は実技試験だ。
私は、魔法と少しの護衛術しか扱えない。
それでどこまで戦えるか……。
まぁ、筆記の方でかなり頑張ったから、騎士団の文官的なものにならなれるかもしれないし、とにかく、精いっぱい頑張ろう。
はじめの相手は、大柄な男性だった。
「よう、小坊主。へし折られたくなければ、大人しく家でねんねしてな。」
「……悪役で、しかも負ける奴みたいなセリフだな……」
「は?」
ぽろっと口からこぼれた。いやでも、こんな人いるよね?小説はあまり読んだことないけど大体こういう人負けちゃうよね?
まぁ私より体格いいし実際強いからこんなに態度もでかいんだろう。大丈夫かな私……
それにしても小坊主、か。男装は完璧にできているみたいだ。女の骨格で何とか男の人の動きトレースしてるだけだけどこの試験に女が参加することなんて誰も想像してないんだろう。
「試合、開始っ!!」
審判の声が響いた。
最初に動いたのは、男だった。
「うおおおおおおおお!!誰が負ける奴だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
私のセリフに怒り心頭だった様子だ。
…この程度の挑発に乗っているようじゃ、騎士団員なんて無理な気がするのだけれど……。
ま、私の知ったことではない。
力だけに頼ってくる相手なら私にも勝機はある。
私は軽くステップを踏んで、するりと男の背後に回る。
そして、渾身の力で相手の膝を後ろを蹴った。
バランスを崩した男は、勢いそのまま。盛大にこけた。
……うわぁ、膝の皿、割れてなかったらいいな……嫌な音したから、かなりの確率で割れてる気がするけど……。
いろいろ教えてくれたのは、件の城の暗部の人たちだったりする。
相手もしてくれたんだけど、見事に受け身をとってたからなぁ……。
「あー…大丈夫ですか……?」
私も、ここまできれいに決まるとは思ってなかった。
しばらく鍛錬なんてやってなかったし。
「っつ……てめぇっ……!!」
さらに頭に血がのぼった様子の男は、ギラリとした目でこちらを見た。
……やばい。
「ざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひゃぁ、」
私は、その攻撃を躱す。
うっわ地面割れたよ。この人魔力使ってる形跡もないし純粋な腕力?すごい。
躱す、躱す、躱す……あれ?
この人、かなり遅い。
体格が大きい相手には、どうするんだったか。
私の腕力じゃ、真っ向から昏倒させるのは難しいし……あ、そうだ。
私は、足元にあった瓦礫を顔の横に蹴り上げた。
反射的にそれを除ける男。
私は中腰になっている男の膝を踏み台にして、その顎を蹴り上げた。
「ぐぅぅっ……」
ちなみに、足に風を纏って威力を上げているので、生身の攻撃より、凶悪具合が増している。
…人間の顎は、急所である。
鍛えた人間でさえ、顎に一撃を食らえば……脳が揺れる。
本で得た知識をそのまま使ってみた。
ちなみに人体実験したことは、一度もない。
ただ、幸いなことに、男はきちんと倒れてくれた。
テンカウントされても、動かない。
私は、うっすらと笑みを浮かべた。
一回でも勝つことができたのは大きい。
初戦がこの人で良かった。
私は知らなかった。
心配するセリフも、独り言も、相手をおちょくっているように見えていたことも、背後をとったのにとどめを刺さなかったことは、相手をバカにしているのと同義だと言うことも。
……それらの行動のせいで、最後に浮かべた笑みが何とも凶悪に映ったことも。
読んで下さり、ありがとうございます。