恋愛小説を勧められました。
定期考査前最後の休日なので、滑り込みで投稿。
これから一週間触れないので更新できません。
しばらく授業を受けて、それから、少しの休憩時間がとられた。……まぁ、そこでもマナーなどが見られているのだけれど。
しばらく会話をしていると、夫人がこう言ってきた。
「ところで……陛下は……どうなんですの?」
「どう……とは?」
……信頼されていないのかな、とかは思ってるけど……
気持ちが沈みかける私だったが、夫人はこう言った。
「ほら……その……恋、などのお話です。」
「こい?」
少し考えて、夫人の言うそれが『恋』であることに思い至る。
私は……苦笑した。
「確かに仲がいいことには越したことはないですが、王と王妃は、同じ志を持つ仕事仲間のようなものでしょう?友愛で十分なのです。」
友情は一生だと言うし。そう言うと、固まられた。
「…………えー……なんといいますか……」
「?」
言葉を探していたようだったが、やがて決心したような表情で、侍女に何事か囁いた。そして、侍女は一礼して、部屋を去った。
しばらく無言でお茶を飲んでいると、侍女が戻ってきて、何かを夫人に差し出した。
「来たわね。」
上機嫌に夫人はそう言うと、それを私に差し出した。
「…………恋愛小説ですか?」
「そうよ!!!」
目をキラリと輝かせた夫人は滔々と語り出す。
いかに乙女の心理が繊細であるか、恋愛の甘さや切なさについて、などなど……
「どうぞ読んでみてくださいまし!」
真面目で厳格そうな夫人にこんな一面があるなんてなぁ。
思いながら、私は本をめくった。
それなりに長かったため、速読しようとしても、まぁまぁ時間がかかった(にもかかわらず、夫人は私に期待の目を向けるのをやめなかったが)。
「えー……」
「どう!?感想は!?」
正直に言ってもいいだろうか。
「……文章の書き方や、心理や情景の描写はおっしゃられたように、とても美しかったです。」
「ええ!ええ!」
「しかし、共感は、難しいです。細かい設定はいいとして、廃嫡せずとも、手を取り合える道はあったでしょうに。納得は行きませんね。」
今度は私が語ることになった。
その内容は、現実にあって、それが貴族社会でどうみられるか、どうすれば回避できたか、などの、子女の夢なんてみじんも感じさせないものだった。
「……本気で、おっしゃっているの?」
「……あ、も、申し訳ありません……夫人の愛読書だと言うのに……その、私には難しいテーマでしたわ。」
こんな言葉でとりつくろえるはずがない。夫人の目は据わっていた。
「いえ、べつに、感想に腹を立てたわけではありませんわ。ただ……」
フッと息を吐いた夫人は呆れたような笑みを浮かべた。
「セレスティナ様の恋愛偏差値の低さに驚いただけです……。」
肩の力が抜けた。呆れられるのはいい気分ではないが、今は怒っていなかったことを喜ぼう。
れんあい……したことないからなぁ……
しなくてもいいし。そもそも、貴族や王族に生まれて、恋愛できるなんて思わない方が幸せだろう。
これ以上刺激しないように何も言わまいと決意し、向き直ると、また、別のものを手渡された。
「……とりあえず、ここからね。」
……手渡されたのは、幼児向けの絵本だった。
マジですか。
読んでくださりありがとうございます!!!




