ブルーレイ化記念「ウルトラマンパワード」
権利問題などの理由からソフト化がされていなかったウルトラマンシリーズの作品が3作、この度ブルーレイで発売される事になった。どれも思い入れのある作品なので、それらについて書きたい。
今回は90年代前半にアメリカで製作された「ウルトラマンパワード」について。
この作品は初代ウルトラマンをリメイクした物だ。登場する怪獣もレッドキングやバルタン星人などだが、ストーリーやデザインにかなり大胆なアレンジが加わっている。
例えばジャミラのエピソードは、日本版で
「宇宙で怪獣になった宇宙飛行士が、自分を見捨てた故郷に復讐する」
のに対し、パワードでは
「宇宙で何かの影響を受けた結果、巨大な怪物に変身するようになったジャミラが、自分を研究、利用しようとする組織から逃げ回る」
となる。ジャミラのデザインも、「苛酷な環境に適応した結果、異形に変化した生物」という感じだった日本版と比べて、パワード版は「宇宙服が体と一体化した無機質な生物」といった感じだ。シルエット自体はほぼ同じなのに印象の違いは大きい。
バルタン星人は「地球に来るまで数々の星を侵略してきた宇宙人」として登場し、終盤で生物兵器としてドラコを送り込んでくる。
「ウルトラマン」ではレッドキングに羽根を毟られ、ウルトラマンと戦う事は無かったドラコ。この怪獣もジャミラと同じく大胆なアレンジがされている。
生体反射外骨格(スペシウム光線を弾く程の強度)で覆われた赤紫の体色、昆虫のようにも見える顎、袖や袋のような構造の腕からは鋭い鎌が飛び出てくる(暗器使いのようなイメージ)。オリジナルが敗北したレッドキングを鎌で切り裂き、ウルトラマンの胸にも人間なら致命傷レベルの大きな傷を付けた。
そんなドラコから送信されたデータを元に調整されたのがパワードゼットン。オリジナルを更に無機質にしたような見た目で、羽根がある事以外は大きな印象の違いは無い。データに裏付けられた隙の無い動きと光線の反射・吸収能力を持つが、ドラコが得たデータの不備を突かれて、相打ちのような形に持ち込まれる。
ドラコは「データの収集用」の試作品だったが、バルタン星人たちは「これで倒せればそれで良し、駄目ならゼットンで確実に始末する」とかなり強く作っていた。強すぎて採取したデータが偏ってしまう程に。データに基づいた動きをするゼットンにとって、それが致命的な隙になった。しかし、ウルトラマンの側もその隙を突くためにかなり無理をすることになり、ゼットンを倒した後に自分も力尽きてしまう。
重量感を出すためなのか、戦闘シーンにおけるウルトラマンと怪獣の動きはゆっくりしている(殺陣のノウハウが無い事や、怪獣の造形を細かくして動かしづらくなった事も影響しているらしい)。そこにアメリカの暴力規制が加わった結果、ウルトラマンは殴る、蹴るといった事はあまりしない。ある程度話が進むまでは特にそういった描写が抑えられていた。
これを迫力に欠けると嫌う人もいるが、個人的には日本とは異なる環境に適応した結果であり、怪獣の大きさが出ていて良いと思う。
全体としては、初代ウルトラマンと似ているようで違う、そんなところが魅力的だと感じる、そんな作品だ。正直残り二作品がかなり個性的で尖った作品なので、それらに比べて「特にここ」という所があまり無い。全体としては他の作品に負けない位の思い入れがあるが、まとまった文章にしにくかった。
それが出来るようになれば、他所で書く感想もより良いものになるかもしれない。