4A Games「METRO: Last Light」
前回の「METRO2033」の続編、「METRO: Last Light」はアルチョムがダークワンを壊滅させてから一年後の話になる。
「前作から一年後、オーダーというメトロの治安を守る組織に加入していたアルチョムの元に、カーンという男(前作で何度か世話になる変人)が恐ろしい知らせを持ってきた。殲滅したはずのダークワンに生き残りがいるというのだ。
カーンはその生き残りが最後の希望だというが、オーダーの指導者であるミラーは、娘のアンナと共にその生き残りを始末するようアルチョムに命令する。
彼らの生息地だった植物園の跡地で、アルチョムはダークワンの生き残りを発見した。まだ幼いダークワンから精神干渉を受けた結果、アルチョムは意識を失いファシストに囚われてしまう。
任務を遂行するため、それ以前に生き残るため、アルチョムは一緒に尋問を受けていた共産主義者パヴェルと協力してファシストの手から逃れようとする。」
全30chapterの内3chapter分のあらすじがこんなものだ。この後アルチョムは子供のダークワン、リトルダークワンを追い、同時に前作で見つけて復旧した軍事基地D6を巡る陰謀と戦う事になる。
「敵なら、殺せ」
このゲームでのアルチョムは、前回も書いた通りこの言葉に従って行動してきた。そんな彼にゲーム中盤である事実が突きつけられる。
ダークワンたちは人間に敵意を持っていなかった。
彼らの言葉であるテレパシーは普通の人間には耐えられない物で、ダークワンは人間に話しかけているだけだったのだ。
そして、アルチョムは彼らのテレパシーに耐性がある。幼い頃にメトロの外に出て、ダークワンと接触した事があるからだ。
人とコミュニケーションを取る事を望んでいたダークワンは、アルチョムを襲うミュータントを追い払い、彼と共に荒廃した街を眺める。
「ひとりぼっちだよ」
そう言ったアルチョムにダークワンはこう答えた。
「一人ではない、一人目なのだ」
ダークワンたちは、こうして彼らと会話ができるようになった彼を架け橋として、人とコミュニケーションを取る事を待ち望んでいた。
だが、アルチョムは彼らに死を運んできた。かつて人類の文明を焼き尽くしたミサイルで、同じように彼らを焼き尽くしたのだった。
たった一人残された幼いダークワンはかつてのアルチョムと同じ、いやそれ以上に孤独な境遇にある
。アルチョムが彼の家族、仲間を全て殺してしまったからだ。
この事を知って尚ハンターの言葉に従うか、悔い改めるか。それはプレイヤー次第であり、それぞれの選択に相応しい結末が待っている。
結末に言及してしまうと、共産主義者たちはアルチョムらの見つけたD6に眠る生物兵器を狙っていた。メトロに死をばら撒くために。敵を殺し、全てを支配するために。
D6の封鎖された部屋で眠っている生き残り達を解放する。その事と引き換えにリトルダークワンの力を借り、アルチョムらは共産主義者の陰謀を明るみにする。
少ない兵力で膨大な物量を持つ共産主義者と戦うオーダーのメンバーだが、次第に圧倒され、抵抗する力を失ってしまった。
勝ち誇る共産主義者の目を盗み、アルチョムは自爆スイッチに手をかける。
もしもハンターの言葉に従い続けたなら、アルチョムの人生はここで終わる。命と引き換えに争いを食い止める事になるのだ。
しかし、アルチョムが行動を改めたなら、敵に対して慈悲を見せる事をしてきたなら、彼もまた許される。
「アルチョム、もうその必要は無いよ。」
仲間達を目覚めさせたリトルダークワンが姿を現し、自爆スイッチを入れようとしていた彼の手を止める。それと同時に、彼の目覚めさせてきた仲間が姿を現した。
ダークワン達は精神に干渉して、味方を敵だと誤認させる事ができる。どれほど人数が多くても、敵と味方の区別がつけられなければ関係が無い。
敵を殺す事をやめられなかった共産主義者達は、かつての人類と同様に自分達の力で死ぬ事になった。
そうして人類を破滅から救ったダークワン達は、再会を約束して遠くへと去っていく。
どちらの結末も、「物事が納まるべきところに納まる」というスッキリとした感覚が味わえた。
小説版は小説版で、「METRO2034」という異なる筋書きの続編があるらしいが、これは日本語に翻訳されていない。
敵を殺していけるほど強くはなかった小説版のアルチョムが、どんな道を辿るのか。そして、ダークワンの殲滅がどういう意味を持つのかを打ち込んだ時点で理解していた彼が、一年後にどうしているのか。
興味はあるが英語の小説を読破する自信は無いので手をつけていない。




