聖杖物語 黒の剣編 エピソード1覚醒 第1章ブレスレット
ーうーん。いつの間に・・・ -
翌朝一番に獅道兄さんに謝ろうと起きてきたのだが、
ーこれは一体?なぜユキさんが居る?ー
ダイニングでユキさんと獅道兄さんが、仲良く朝食を作っている。
ーうわっ、獅道兄さんデレデレだよ。あんな獅道兄さん見たことないな・・・ -
あたしは、ダイニングに入り損ねていた。
「あら。美琴ちゃんおはようございます。」
ーうわっ、見つかった。 -
「あ、あの。おはよう。」
こそこそと、獅道兄さんの所に行き耳元で、
「昨日は、ごめんなさい。獅道兄さん。」と、謝った。
「よし、ちゃんと謝ったから許すよ。」獅道兄さんは、上機嫌だ。
「ちょっと、獅道兄さん来て。」あたしは、獅道兄さんの服を引っ張ってダイニングの外へ連れ出し、
「なんだよ。」獅道兄さんが毒づくのを気にせず、
「あのね、ユキさんいつの間に来たの?」
「あー、そう言う事か。それは、お前が寝坊だからだよ。さっき来てくれたんだよ。」
獅道兄さんが、少しうれしそうに言ってダイニングに戻った。
ーそっか、それならしょうがないな。でも、ほんっと獅道兄さんデレすぎぃ。ー
あたしは、くすっと笑っちゃった。
「あれ、ユキ来てたのか。」虎牙兄が現れるとユキさんが、
「あ。先輩、おはようございます。」と、微笑を振りまく。
ーにが手だ。やっぱりこの人。 -
あたしは、虎牙兄とユキさんを交互に見ながら思った。
ーでも、虎牙兄は、あたしを信じてくれてる。今はそれで、十分幸せだよ。 -
あたしも、虎牙兄に、
「おはよう、虎牙兄!」と、微笑みかける。虎牙兄は、ビックリした様に、
「なっなんだよ、二人とも。」
ーふふっ、びっくりしてる、びっくりしてる。 -
あたしはユキさんに視線を向けて、
「昨日はお弁当ありがとうございました。」と、元気良く言った。
「え、ええ。どういたしまして。」ちょっと、戸惑った様にユキさんが答える。
「今日は、あたしが作りますから。」
「え?もう三人分作ってしまいました。はい。」そう言ってユキさんがかわいい袋を差し出してきた。
ーうっ、さっ先を越された。 -
袋を受け取ってしまった。
「ありがとう・・・」袋に視線を落としながら、そう言うのがやっとだった。
「おっ!今日はやけにおとなしいじゃないか。」と、獅道兄さんが言う。
「うん。ちょっと、吹っ切れたかなって。」
「ふーん?」
「ちょっと、獅道兄さん。」あたしは、手招きして獅道兄さんの耳元で囁く。
「ユキさんに告白したら。」
「んなっ!」
ーにひひっ、しかえし成功! -
同様する獅道兄さんを尻目に、あたしは学校に向かって家をでた。
「ふーん。そっか、あれからそんな事があったのか。」
マコがお弁当をパクつきながら、訊いてくる。ヒナも、パンを食べながら、
「ほんと、綺麗です。このブレスレット。ほんとに取れなくなったのです?」
「うん。ほんとに取れないんだ。これが・・・」
「へー、です。」チョンチョンブレスレットをつつきながら、ヒナが珍しそうに言う。
「これ、本当に魔法のブレスレットかもね。」マコが笑いながら言った。
「です。」ひなも同調する。
「あははっ、そんな訳無いよ。ただ取れないだけだから。」
「なに能天気な事言ってんのよ、美琴。」
「へ?」
「それ、これからずーっとしてる訳?」
「です。」
「ど、どうしよう!マコ・ヒナ!」
「やっと、事の重大性を把握したか・・・」
「です・・・」
マコはあたしに、にやっといたずらっぽく笑いながら、
「それくれた店の紳士とやらなら、外し方知ってんじゃない?」
「行くのです。」
「そっ、そっか。お店の人なら取り方知ってるかも・・・」
「よし決まり、帰りにちょっと寄っていくか!美琴。」
「うん。行こう!」こうしてあたし達はあのお店に向かう事にした。
「あれ?お店ほんとに無いよ。」
「道間違えたんじゃない?」あたし達三人はお店を探してウロウロ歩いた。でも、
「こんだけ探してないって事は・・・」
「ミコッタン、やっぱり夢見てたとか。です。」
「でも、ブレスレットは本物だよヒナ。」
「ですー。」
「ごめんね、二人とも。こんなに探してもらって。」
「いいってー。でも歩き回ったらのどかわいたぁ。」
「です。」
ーあ、そうだ。この先家近いし。 -
「ねえ、マコ、ヒナ。家寄ってく?飲み物位あるし、そうしてよ。」
「んー。そっか、じゃあ久しぶりに美琴ん所行くか。」
「うん、そうして。今日のお礼もしたいし。」
「ok!です。」
ーあ、そっか。マコもヒナもあたしん家に来るの、お父さんが居なくなってからは、初めてなんだな。
前はちょくちょくきてたけど・・・ -
「ただいまー。」あたしが、玄関に入りざま声を上げる。
「おじゃましまーす。」「お邪魔しますです。」二人も声を掛ける。すると、
「おや、珍しい。お友達かい?」獅道兄さんがリビングから出てきた。
「そう、近くまで来たから寄ってもらったの。」
「いらっしゃい、西野さん、野間さん。」獅道兄さんが、珍しく上機嫌で声を掛けてくる。
「ゆっくりしていくといいよ。後で紅茶持って行くから。」
「は、はい。おかまいなく(です)。」二人がカチカチになりながら、返事した。
ーくすっ、二人ともキンチョーしてる。 -
あたしの部屋に入るなりマコが、
「ねっねえ、アレ獅道お兄様だよね。すっごいかっこいいー。」
ー?お兄様?? -
「カッコ・ステキです。」
ーステキ?? -
「美琴っ!」「ミコッタン!!」
ーえ?どうしのよ、二人とも? -マコとヒナがあたしの肩を持ちながら、
「お兄様頂戴!!」
ーはぁ? -
家から二人を送る事になり、少し離れた大通り迄出てきた。2人ともまだ赤い顔をしている。
ー獅道兄さんって、そんな美男子だったのかな?あんまり考えたこと無かったけど。確かに大学を飛び級して、卒業する位頭良いし、背も高いけど何時も一緒に住んでいるから、なんとも思わなかったな。 -
「あ、美琴。もうこの辺りでいいよ。」
「です。」
「そっか、じゃあまた明日ね。」
「うん、またね。」
「バイバイです。」あたしは、2人に手を振って別れた。
二人と別れて家に向かう途中、見慣れない路地を見つけた。
「あれ、こんな所に道あったっけ?」その路地は奥へ行く程暗く、何処へ繋がっているのか判らなかった。
ちょっと興味が湧いて、どこまで繋がっているのか見ようと近づいた時、
ー!! -あたしの左手がその闇から出てきた手に掴まれた。
「あっ!」と、声を出すのが精一杯だった。