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聖杖物語 黒の剣編 エピソード1覚醒 第1章ブレスレット

「ただいま。」

あたしは、そっと玄関を開けて家にはいった。

「美琴!何時だと思っているんだ。」

玄関に入ったとたん、獅道兄さんが怒鳴った。

「ごめんなさい。獅道兄さん。」

「何も連絡せずに、心配するじゃないか。こんな時間まで何処に居たんだ。」

「あの・・・友達とおしゃべりしてて・・・」あたしは、しどろもどろに答える。

「友達と?こんな時間までか?」

「え?だってまだ、夜になったばかり・・・」あたしはついっと時計を見て、驚いた。

ーええっ?うそ?10時を廻っている?マコとヒナと別れて、あのお店に寄っただけなのに?そんなに時間がたってるなんて・・・ -

「美琴!本当に友達としゃべってただけなのか?」

「えっと、あの、その・・・」

「ちゃんと、答えろ!」

ー獅道兄さんいつになく怖いよ。そんなに怒らなくても・・・。でも、悪いのはあたしなんだし・・・ -

「ごめんなさい、獅道兄さん。」

「ちゃんと答えろと言っているんだ。」

ーうえん、どう答えたらいいの?だって夜道で知らないお店に入って綺麗なハープを手に持ったらブレスレットになって・・・そうだ、ブレスレット! -

あたしはハッとして右手を見る。そこにはハープを形どった、綺麗なブレスレットが光っている。

「黙ってないで答えろ!」

そのガチャッ玄関が開いて、虎牙兄が帰ってきた。

「おい、外まで聞こえてるぞ。獅道。」

「あ。虎牙兄さん、実は美琴のやつが・・・」

「知っている。いや、聞こえていたよ。」そう言って虎牙兄はさっさと玄関からダイニングに行く。獅道兄さんも一緒にダイニングに行く。あたしはそそくさと二階の自室へ上がってベットに転がった。

ー助かったア。いいとこで虎牙兄帰ってきてくれた。それに、今日は虎牙兄一人だし。ユキさん付いてこなかったし・・・ -

ダイニングから獅道兄さんの声が聞こえる。

「そんな。虎牙兄さんは、美琴に甘すぎだよ。」

「・・・」

ー虎牙兄の声は良く聞こえないな。何話してるのかな? -

「僕だって美琴の事が心配だから言っているんだ!美琴に何かあったら。ダークサイドに捕まったらどうするんだ。」

ー何?何の話?ダークサイドって? -

(バタンッ)ドアの閉まる音が響いて二人の話し声がやむ。

ーああ。あたしのせいで、二人がケンカしちゃった。どうしよう、ちゃんと謝らないとだめだよね。 -

ベットに三角座りをしながらボーッと考える。右手をのブレスレットを見ながら

ーねえハープあたし、どうしたらいいのかな?あなたを獅道兄さんに見せたら信じてくれるかな? -

なんだか悲しくなって涙がポロッと流れ落ちる。

(コンコン)ドアをノックする音が・・・

「美琴。いいかい?」虎牙兄の声だ。

「あ。うん、いいよ。」

あたしは慌てて涙を拭いながら言った。

(カチャッ)ドアを開けて虎牙兄が入ってくる。

「なんだ。電気も付けずに。」部屋の明かりをつけて、虎牙兄があたしの隣に座る。

「美琴。獅道の事、わかってやってくれないか。アイツも美琴の事を心配してああ言ったんだ。」

ーうん。わかってるよ。 -

「ごめん。虎牙兄。悪いのはあたしなの。勝手に道草して帰るのが遅くなったから・・・ほんとにごめんなさい。」

(ぽんっ)虎牙兄があたしの頭に手を載せわさわさと撫でてくれる。

ーあっ、これ。きもちいい。 -

昔からあたしが落ち込んだときに虎牙兄がやってくれる、あたしのお気に入り。

ーとっても気持ちが軽くなる・・・ふわふわするような感覚。  ー

「明日になったら、獅道に謝っとけよ。オレからも言っとくから。」

「うん。虎牙兄、わかった。」

虎牙兄は、そう言うとあたしの頭から手をどけた。そして、

「美琴、本当はどこで、何をしていたんだ。」そう訊いてきた。

ーんん。虎牙兄、信じてくれるかな。 -あたしが右手のブレスレットを見ながら口ごもっていると、

「あっ、いいよ。無理にしゃべらなくても。女の子だもんな、秘密にしておきたい事もあるよな。」

ーあっ、虎牙兄勘違いしてる。あたしが誰かと付き合っていると思ったのかな。そんな勘違いされちゃあ、

絶対いやだよ。もう言おう。信じてくれなくてもいいから、勘違いされたままなんて、嫌だから・・・ -

「虎牙兄、信じてくれる?」あたしは、思いつめた目で虎牙兄の顔を見た。

虎牙兄の瞳はいつもの優しい目差しで見返してくる。

「ほんとはね。お店に寄ってたの。知らないお店でね、色んな珍しい品がいっぱいあって、時間がたつのを忘れるくらいあたし、そのお店に居たの。そしたらね、綺麗なハープがあって、見とれていたらそのお店の人が、あたしにくれたの。と言うか、ハープがあたしと契約したと言うか。よく判らないけど、これなの。」あたしが、虎牙兄に右手のブレスレットを見せると、

「本当だ、綺麗なブレスレットだ。」虎牙兄は、さして驚くでもなく、あたしの差し出した右手のブレスレットを見入っている。

「これ、ブレスレットだろ。ハープにはどうしたら、戻るんだい?」

ー?何?虎牙兄の反応。まるで、このハープの事知ってるみたい・・・ -

「えっとね、あたしが本当に必要だと念じたら、元に戻るって。お店の紳士が言ってた。んと、取猫さんって人。」

「そっか、このハープ。美琴の事、気に入ったんだね。」

「そ、そうかな。虎牙兄でも出来るんじゃない。」そう言って、ブレスレットを虎牙兄に渡そうとしたら。

ーえ?はっ外れない。 -

「えっ?何で!外れない、ぴくりともしまいよ!」あたしはパニックになる。左手でブレスレットを引っ張っても手の一部になった様に動かない。

ーどっどうなってるの?まるで、肌にくっついてるみたい。 -

「虎牙兄!取れないよ。どうしよう。」

半べそをかいて、虎牙兄に訴える。慌てるあたしに、

「良く似合ってるじゃないか。美琴。」

「そっそんなのんきな事言ってる場合じゃないよぉ。虎牙兄、なんとかしてよぉ。」

あたしが必死に外そうとしている左手に、手を乗せて

「別に外さなくてもいいじゃないか。ブレスレットが美琴を守りたいってさ。離れたくないって言ってるんじゃないのかな。美琴。」

「虎牙兄・・・」

あたしは虎牙兄の言葉で落ち着きを取り戻した。

「でも、これ学校へも、着けていくの?どう説明したらいいの?」あたしが、まだ戸惑っていると、

「はっははは。美琴らしくないな。外れない物はしょうがないだろ。そう言ったらいいじゃないか。」

「そんなー。また皆にからかわれちゃうよ。」

「んん?美琴は、そんなにからかわれてるのかい?」

ーうわっ、余計な事言っちゃった。 -

「どんな風に、からかわれているんだい?」

「えっと、あの、その。背が低いとか、胸が少年だとか・・・」

「ははは。そりゃ、かわいいじゃないか。」

「えー、ひっどーい。」虎牙兄は、(ぽんっ)とあたしの頭に手を置いて、

「兎に角、オレは美琴の事、信じているからな。」

「うん。」-えへへー。虎牙兄信じてくれてる。うれしい。 -

虎牙兄はそう言って部屋から出ようとすると、振り向き様、

「・・・胸が、少年なんだ。」って、いたずらっぽく言った。

「ばか!」あたしは、枕を投げつけた。

「ははっ、その調子、その調子!」虎牙兄は枕を投げ返し、部屋から出て行った。

ーくすっ、ありがとう。虎牙兄。大好きだよ。 -

あたしの胸は、キュンキュンしていた。小さいけど・・・

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