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聖杖物語黒の剣編エピソード1覚醒最終章明日へ

闘いの後、虎牙を救う為身を差し出す美琴。

無事に元の世界に戻れるのか。

エピソード1覚醒最終回

「いやあああああああっ!虎牙お兄ちゃあああん!!」声の限りを尽くして呼びかけたが、魔龍との闘いは始まった。虎牙が魔龍に喰らい付き、魔龍が虎牙を弾き返す。壮絶な闘いを見ながら美琴は怯え震える。

ーいやっ、虎牙兄が元に戻れなくなるなんて、そんなの絶対嫌。助けて、お父さんお母さん・・・ユキお姉ちゃん。虎牙兄を助けて、あたしはどうなってもいいから。-必死に祈る。

ーあたしが強くないから、あたしが力が無いから。虎牙兄を救えるならどんな事だってするから。だから力を、虎牙兄を救える力をください。お父さんお母さんお願い。-あたしは髪飾りを握り締め胸に押し当ててひたすら祈った。

<ぱああ>あたしの手の中で光が現れ、それが全身を覆い尽くす。

ーここは?光の中?-光の雲の中で、あたしは不思議な人と向かい合っていた。

ーあれ?あたし?でも、全然あたしより大人の・・・-

「美琴、救いたいよね。愛する人を。」あたしの前にいるあたしそっくりで、でも優しそうな人が、語りかけてくる。

「・・・はい。助けたいです。虎牙兄を・・・」

「そう、助けたいよね。ならば、覚悟がいるわ。」

「覚悟?」あたしは、思わず聞き返す。

「そう。美琴の記憶が無くなってしまうかもしれない。そう、全て愛する人の記憶さえも・・・その覚悟が出来る?美琴。」

「全ての・・・記憶が・・・無くなる?」あたしは心の中で思った。

ー全ての記憶が無くなる・・・それは虎牙兄や、ユキ姉さん、マコやヒナの事でさえ失われてしまう。・・・でも、それであっても今、虎牙お兄ちゃんを助けられない方が嫌だから・・・-

「・・・出来ます。記憶を失う事より、虎牙兄を助けられない方がもっと嫌だから。だから助ける方法を教えて!教えてください!!」最期は叫ぶ様に言ってしまった。

「そう、そうだよね美琴。愛してるのだものね。虎牙の事を・・・」そう微笑みかけて、あたしに言ってくれる目の前の人。そしてあたしの手を握って、

「その勇気があればこの後も虎牙を愛し続けていけるわ。だから、一緒にいきましょう。虎牙の元へ。さあ。」あたしは、答える

「はい。」あたしは、女の人の手を握り返し力強く頷いた。

<ぱああぁ>光の渦があたしを包む。

ー虎牙?虎牙お兄ちゃん?-あたしは一人で光の中を歩く。その中で狂った様に苦しんでいる虎牙兄を見つけた。

「虎牙お兄ちゃん!」思わず駆け寄ろうとすると、

「来るな!来ないでくれ美琴!!」苦悶の表情で虎牙兄が唸る。

「どうして!帰ろうよ、虎牙お兄ちゃん。」

「駄目なんだ。どうしても怒りが収まらない。」そう言った虎牙兄の瞳は、黄色く澱んでいる。

「駄目だよ、虎牙お兄ちゃん。帰ろ。ねぇ。」あたしはそう言って近づいて手を差し出す。その手を振り払って、

「近づくな!それ以上近づいたらオレは、美琴をどうするか解らないんだ。だから近づくな!」

ーいいの。いいんだよ。虎牙お兄ちゃん。虎牙兄を助けられるなら、あたしどうなってもいいの。-あたしは、虎牙兄にそっと抱きついた。

「うぐあああっ!」虎牙兄は高らかに吼え、抱きついたあたしの肩を掴み、上着を引き裂く。

ー!虎牙お兄ちゃん、大丈夫。大丈夫だからね。あたしどんな事されても耐えて見せるから。だから帰ろうよ、あたし達の世界へ。ユキお姉ちゃんが願った未来へ。-あたしは虎牙兄のするがままに任せて願った。やがて、光が辺りに差し出すと共に、虎牙兄の息遣いも納まっていく。

「美琴、オレの美琴。」あたしの耳元で、虎牙兄の優しい声がする。

「虎・・・牙・・お兄ちゃん?」あたしの手を握ってくれた虎牙兄が、

「助かったよ、美琴。オレ正気に戻ったから。もう帰れるから・・・」

「ああっ!お兄ちゃん!!」あたしは、虎牙兄に抱きつき涙を流して喜んだ。

「あたし、虎牙お兄ちゃんが居ない世界なんて嫌だよ。あたし虎牙お兄ちゃんが好きなの。誰よりも。愛しているの虎牙の事を。」あたしは虎牙兄の顔を真っ直ぐに見つめながら本当の自分の気持ちを伝えた。

ーこれがあたしの本当の気持ち。今までずっとずっと自分の中に秘めていた本当の気持ちだよ。虎牙お兄ちゃん。この後、あたしが記憶を失っても、きっときっとお兄ちゃんを好きになる。好きになれるから、だから今だけでもおにいちゃんの事愛してるって言わせて。これが今のあたしの最後のお願いだから。-

虎牙兄が、あたしを抱きしめてくれている。

ー恐い、恐いの。虎牙。この喜び、嬉しさが消えてしまうのがとても辛くて恐い。でも、これがあたしの選んだ選択。-ふと気付くと、虎牙の後にもう一人の大人っぽいあたしが微笑みながらこちらを見つめている。その目が、あたしに語り掛けている。

「大丈夫、大丈夫だから。昔のあたし、恐れないで。強くなって、強くなってね。」そう言ってあたしを励ましてくれた。

ーうん。わかった。きっと、あたし強くなる。強くなってみせるから。ありがとう、もう一人のあたし・・・-そして、虎牙の瞳を見つめる。

「美琴、オレは強くなる。そして、美琴だけはきっと守る。守ってみせるから・・・」

「うん。虎牙、信じてる。信じてるから・・・」あたしと虎牙の視線が絡み合い、あたしはそっと目を閉じる。虎牙の唇の感覚があたしの唇に触れた時、あたし達は光に包まれた・・・


ーんんっあれっ?ここは?-目を醒ますと、あたしは学校の裏林の中で倒れていた。あたしの手を握っている人が居る。

「ここで何があったんだろう?」そしてあたしの手を握っている人に目をやると、

「げっ!虎牙兄!!」

ーなっなんでこんな所で虎牙兄と手を繋いで寝てたの?それに何でこんなすーすーするんだろ?-あたしは自分の格好に目をやると、

ー!ひいっ!?あたし何て姿してんの?ブラウスは破けてブラが丸見え、スカートも破れてパンツも丸出し!!-

「ひえぇ、ど、どうしてこうなったのー。」手を握っていた虎牙兄が、あたしの悲鳴で目覚めた。

「あ?美琴?」あたしは顔を真っ赤にして問い詰める。

「こ、こーがニィ。ちょっと訊きたいんだけど、あたしに何をした?」

「?え?」虎牙兄は目をキョトンとして、あたしを見ている。

「何をしたのって、訊いてるの!」

「?」さらに虎牙兄は、目を点にしてあたしを見ている。そして手をポンっと打ち思いっきり言った。

「始めてをもらったよ。美琴に。」

ーボカンッあたしの頭が爆発した。-

「なっ!なんですってぇー。」虎牙兄はあっけらかんと、

「かわいかったぞ、美琴。」

ーしゅううううぅ。頭が真っ白になる。虎牙兄とあたし、もしかして・・・しちゃったの?え?何で?何も思い出せなーい。-

「美琴。」そう言って虎牙兄は自分の上着をあたしに羽織らせてくれ、<ギュウ>と強く抱きしめてくれる。

ーあわあわ、ど、どうしてこうなったの?あたしこんな大切な記憶、どうして何もおもいだせないのよぉ。うわああああっお願い誰か助けてプリーズぅ!!-

あたしは、虎牙兄に抱き寄せられつつほーけていた。


<カーン、カーン>墓地の鐘の音が響く中、あたし達はヒナを慰めていた。周りのクラスメートが囁きあっている。

「車の事故に巻き込まれたんだって。」「身体が原型をとどめない位ずたずただって。」「中嶋君かわいそうに。」そんな、クラスメートの輪から少し離れた場所でヒナは泣き崩れていた。あたしとマコは、そんな彼女に何も話しかける事が出来ずにただ肩を抱いてあげるしかなかった。やがて告別式は終わり、皆が帰ってもヒナは泣き止まない。

「ヒナ、そろそろ帰ろう。身体が冷え切っちまうぞ。」マコが優しくヒナを諭す。

「ヒナ。さあ、帰ろ。」あたしもヒナの手を取り歩き出す。

「ありがとうです。」か細い声でヒナは言った。そして涙を拭きながら、

「広人君にさよならって、言えました。ミコッタン、マコッチ。もう大丈夫です。ヒナは、ヒナはもう大丈夫です。」目を真っ赤にしながら微笑むヒナに、

ーヒナって、本当はすっごく強いんだ。あたしより何倍も・・・-そう思った。マコがヒナの肩を抱き、

「そうだよな、ヒナ。お前って本当に男前だよな。」

「おっ男前って何なのです。」

「ははは、言葉通りだよ。」マコが茶化す。

「酷いです。」そうむくれたヒナの目にも、マコの目にも涙が光っている。あたしもまた、もらい泣きしてしまう。けど、こんな仲の良い友達があたしには居る。それが今、とっても嬉しい。

ー中嶋君、ユキお姉ちゃん。ごめんね。-あたしの為に亡くなってしまった二人に心の中で詫びる。

ーきっと二人の為に、あたし強くなるから。強くなってみせるから。もう二度と涙を流す人を作らせたりしないから。涙を流すのはあたし一人で十分だから・・・-やや俯き加減で考え事をしているあたしをマコがチラッと見て、何か言いたそうだったが、何も言わずヒナの肩を抱きながら歩いていった。

あたしの髪飾りが夕日を受けてキラッと光った。



 エピソード1 覚醒       END


多くの犠牲を払い、仮初の告白をした美琴。

虎牙との愛は山あり谷あり。

彼女の試練は、これからも続きます。

どうか、美琴を応援してください。

「聖杖物語」をこれからも末永くご愛読くださいます様

宜しくお願いします。


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