聖杖物語黒の剣編エピソード1覚醒第3章己滅技<バーサクモード>
いよいよ決戦開始!
朝日が燦々と降り注ぐ中、マコとヒナに出会う。
「おっはー、美琴。」
「おはようございますです。」
「おはよー。」そう言ってあたしはマコにこそっと訊く、
「あの、昨日の件は?」マコはニカッと笑って、
「言ってねーよ、美琴。」と、言ってくれた。
「ありがと、マコ。」小声で答える。ヒナが、「?」と、小首を傾げる。
「あはは、今日もいい天気だなーって。」
「胡散臭いです。」ヒナがジト目で見てる。あたしは、笑ってごまかした。
「あははっはははっ。」ちょっと額に汗かいて・・・
「ぼーーー。」
「ぼーーー。」あたしとマコが、中嶋君とヒナを見つめてる。
ーなんか、いい感じだなー。ー
「ねえ、マコ・・・」
「わかってるよ、今日は2人で帰ろ。」そう言って、お喋りに夢中のカップルを置いてマコと帰る。
「ヒナ、嬉しそうだったね。」
「そーだな。」
「これから、2人になるのかな?」
「そりゃあカップルだからな。」
「じゃなくて、あたしとマコの2人になるのかなって・・・」
「そっか、まあしかたないよ。ヒナを応援してやんなきゃ。」
「・・・マコ。マコっていい人だね。」
「そっかぁ?当たり前じゃん。応援するのってさ。」
「そうだね、さすがマコ。」
「・・んでもねーよ。」
「あはは。」あたし達は、下校途中ヒナを応援する事で話し合った。
<ピロピロピー>-あれ?携帯が鳴っている。-
見ると虎牙兄からだった。
「なに?虎牙兄?」少々慌てた様な虎牙兄の声が入る。
「ああ、美琴。学校はどうした?」
「今帰り。マコと一緒にね。」やや安堵した様な虎牙兄が言う。
「学校から離れるんだ、美琴。魔獣鬼の反応が学校から出ている。」
ー!ー
「え?そんな、あたしは学校にいないのに。なぜ?」
ーはっ!まだ学校の中には、ヒナと中嶋君が居る!!-
あたしは電話を握り締め踵を返す。学校へ、ヒナの元へ。
「待て!美琴!!」<プツー、ツー>携帯を切り、クラスへ急ぐ。後からマコも付いて来てくれた。しかし、クラスの中はすでに闇が支配していた。
「ヒナ!」大声でヒナを呼ぶが答えは返ってこない。
「マコ!お願いが有るの。あたしの家に行って、ユキ姉さんに知らせて、コーガ兄、獅道兄さんに来てもらって欲しいって。・・・お願いだから・・・」
「美琴!お前、どーすんだよ!」あたしは、必死に頼む。
「マコお願い!早く!!」あたしの気迫に飲み込まれたのか、
「美琴、待っていろよ。いいな!」と、一声言って駆け出してくれた。
ーこれで、マコは大丈夫の筈。-
「すう。」あたしは息を吸い込み、
「冴騎 美琴よ。魔獣鬼斗兎鬼!友達を解放して!」あたしは、これが罠である事を知っている。
ーわざわざあたしの友達を狙ってくるのだから。しかも幸せなヒナを狙ってくるなんて許せない。ー
クラスのドアが勝手に開き中の闇が見える。
「よく来たな、冴騎 美琴。さあ、入るのだ。友達が居るぞ。」
ー!やっぱり罠だ。虎牙兄、ユキ姉さん早く来て、お願い。-
「二人を解放して。」あたしが言うと、
「お前が助けに来い。」と告げる。あたしは一瞬戸惑うが、意を決してドアの中へ入った。<シュン>あたしの周りが闇に変わる。赤黒い闇の中でヒナが倒れていた。あたしが駆け寄ってヒナを抱き起こす。
ー!!-あたしはヒナが泣きながら気絶した事を知った。そして、制服のブラウスが肌蹴ている。
「ヒナに何をした!」怒りであたしは叫ぶ。
「ふふふ、欲望のままだ。こいつのな。」何かが近づいて来る。闇の中から現れたのは・・・
「!!な、中嶋君!?」
明らかにその姿は変わっていた。大きく裂けた口元、服はボロボロに破けてブヨブヨの肉体を覗かせ、そして瞳は赤黒い不気味な色。
「そ、そんな。中嶋君!酷いっ。」
「ぐふふ、こいつの魂は旨かったぞ。」
「喰らってしまったの?中嶋君の魂を!」
「次はその娘の番。そして、美琴お前もなア!」そう言って斗兎鬼は、式鬼と化した中嶋君を嗾けてあたしに近寄せてくる。あたしは、式鬼になった中嶋君に対して、
「もう、救えないの。中嶋君。」か細い声で言った。そしてすっと右手を差し上げ、
「聖導器、ハープよ!」と叫ぶ。右手のブレスレットが光を放ち身体を包む。右手にハープが現れ、そしてあたしは願う。
ー式鬼にされた中嶋君の魂が安らかたらん事を。-ハープが音色を奏で始める。それはこれまでと違う音曲、あたしが心の底から湧き出す言葉を叫ぶ。
「鎮魂歌<レクイエム>」ハープから出る音に式鬼が立ち止まり動かなくなる。
ーごめん、ごめんね。中嶋君、ヒナ。・・・あたしを許して。-さらに音色が強く、光が強まる。
式鬼の瞳から涙が零れ出し、
「さ、冴騎。ありがとう、ヒナを助けてあげて・・・頼むよ。」一瞬だけ式鬼が微笑んだがやがて、
くず折れるように倒れた。
「ぐくっ!音曲のレベルが上がったというのか。巫女め!」斗兎鬼が慄くが、あたしはそこで力が尽き始めていた。肩で息をする様に、
「はあ、はあ、はあ。」立っているのがやっとと、言う位に体力を奪われていた。
「ふふふ、そこまでの様だな。巫女よ。」
「まだ、諦めちゃいないから。」肩で息をしながら言い返す。そして倒れたままのヒナの前にふらふらと立ちはざかる。
「いい心がけだ、巫女。ならばお前からだ。」斗兎鬼が、触手を振り上げ襲い掛かる。あたしはヒナの姿を見て、式鬼とされ倒れた中嶋君を交互に見た。
ー許せない。-<ドクンッ>意識が遠くなる<ドクンッドクンッ>頭の中が赤黒い怒りで混乱する。
「ゆ、許せない。」あたしの髪飾りがピンク色から、ゆっくりと黒く澱んだ色に変わり始める。
あたしはもう一度、
「許せない。」そう言った時、意識が失われる。
「美琴ちゃん!」ユキが魔獣結界に入った時、目の前で魔獣鬼と対峙している美琴の異変に気が付いた。倒れた女の子の前にいる美琴の姿は、髪が逆立ちうっすらと開いた瞳の色は、血の様な赤色に染まっている。そして、最も気になるのは綺麗なピンク色だった髪飾りが赤黒く闇のオーラを発散させていた。
ーいけない!このままでは、美琴ちゃんがダークサイドに入ってしまう。止めないと!-
「美琴ちゃん!しっかりして!!」ユキはそう言うと美琴に走り寄ろうとするが、
「邪魔をしないで!」赤い瞳の美琴がユキを制する。
「許せない、許せない、許せない!」美琴が何度も同じ言葉を発する。その度に髪飾りが黒いオーラを美琴の周りに噴出す。
ーだめ!このままでは、本当に美琴ちゃんが・・・。どうすれば?いいの?-ユキは一つの方法を思いついた。その方法とは、
「美琴ちゃん。」
ー!・・・はっ!あ、あたし一体何を?え?-あたしに抱きついているユキお姉ちゃん?どうして?-
「もう大丈夫よ、美琴ちゃん。」ユキ姉さんが苦しそうに言った。
「え?ユキお姉ちゃん?」そこで気が付いた。ユキ姉さんの聖導服が、ずたずたになって体中に傷が付いている事を。
ーユキお姉ちゃん、何でこんな姿に?-
「美琴ちゃん、私は大丈夫だから、心配しないで。」そう言ったユキ姉さんが、あたしの前で倒れてしまった。
「ユ、ユキお姉ちゃん!」慌てて抱き起こす。
「・・くっ、美琴ちゃん。もうすぐ虎牙先輩も来てくれる・・から。私が美琴ちゃんを守るって約束したから。」そう言うとユキ姉さんはゆっくりと立ち上がる。しかし、その足は力が入っていずふらふらだった。
「ユキお姉ちゃん、だめだよ。あたしなんてほっとけばいいのに!」ユキ姉さんはゆっくりとあたしを見て、
「約束したんだ、あの人に。あなたを守りますって、・・・変なラブレターだったかしら・・ね。」
ー昨日の・・ラブレターにそんな事を・・・-
「魔獣鬼!私が相手だ!!この子には一指も触れさせない!」ユキ姉さんが力を振り絞って叫ぶ。
「ぐはは、元より折角のお膳立てをぶっ壊してくれたお前を生かしておくわけなど無い。八つ裂きにしてくれるわ。」
「くっ!ほざくな!!」ユキ姉さんが身構える。あたしとヒナを守る様に。斗兎鬼の触手が数本闇を走ってくる。<ビシッ>
「あっ!!」あたしの目の前まで来た触手が切れ、千切れ飛ぶ。
ー!!これは!-
「虎牙兄!」あたしの横にいつの間にか白銀色の虎の鎧を纏った虎牙兄が居る。
「すまん、待たせた。」そう言ってあたしとユキ姉さんの前に出て、剣を斗兎鬼に振りかざす。
「虎牙先輩・・・」ユキ姉さんが虎牙兄を振り仰ぐ。
ーなぜかユキ姉さんの顔色が曇っている気がするのが、気がかりだけど・・・-
「でも、コーガ兄が来てくれて良かった。もう安心だよね。」虎牙兄と魔獣鬼が睨みあっている。
「ぐるる、がはあああっ!」斗兎鬼が遠吠えを上げ身を震わせながら、虎牙兄に襲い掛かった。それを剣で弾き返し一撃を加える虎牙兄。
「やった!」あたしが喜ぶのと同時に斗兎鬼が、もんどりうって倒れた。だが、
「くふふ、やりますね。ですが遊びは終わりです。私の全力が防げますかな。獅騎導士!」そう言うと、斗兎鬼は身体を大きく振るわす。
「ぐごおおおおっ。」絶叫と共に、斗兎鬼の身体は突然巨大化しだした。
「不味い!バーサクモードに入ってしまったわ。」ユキ姉さんが額に汗を浮かべて言う。
「バーサクモード?」あたしが訊くと、
「バーサクモード・・・それは、相手が倒れるか自分が倒れるかしないと、元に戻れない危険な技。しかも、自分が制御出来るタイムリミットまであるの。それを越えたらもう元へは戻れなくなる・・・」
「そんな危険な技を・・・」
「そう、ヤツはどちらにしても、もう元へは戻れない。あたし達を倒さない限り。」
ー!そんな。虎牙兄、頑張って!-巨大化し、さらに醜悪と化した斗兎鬼に虎牙兄が挑んでいる。圧倒的に強力な力を持つ斗兎鬼に虎牙兄は、苦戦を強いられている。
「何か、助ける事が出来ないかな。」そう言うあたしにユキ姉さんが、
「美琴ちゃんは、この子を守ってあげてください。」そうヒナの方を向いてあたしに告げた。
「ユキお姉ちゃん!どうする気なの?」ユキ姉さんがあたしの顔を見て、
「ふふふっ、美琴ちゃん。私も聖導士、守りし者なの。虎牙さんの聖導士だから・・・」何時もの微笑を返してくれた。
「でも、ユキお姉ちゃん身体が・・・」
「大丈夫!これ位で参っていたら、虎牙先輩のペアなんて務まらないからね。」そう言ったユキ姉さんは、視線を斗兎鬼と闘っている虎牙兄に向けた。
<バッシュー>
次回、第三章己滅技<バーサクモード>最終回。美琴は、何を見るのか。
闘いは終わりを告げるのか?
次回も読んでくれなきゃ、だめよーん。




