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聖杖物語黒の剣編エピソード1覚醒第3章己滅技<バーサクモード>

「美琴様。」

「はい、取猫さん。今晩は。」あたしの横に、白猫堂が現れた。

「美琴様、今お帰りですか?」

「ええ。取猫さん、何かありましたか?」

「ちょっと、気になる事がございます。宜しいでしょうか?」

「はい、伺います。どんな事でしょう?」

「学校でございます。」

「学校で何か?」

「魔獣の反応が、また・・・」

「学校で・・・ですか?」

「ええ。詳しくは判りませんが・・・くれぐれもご注意くださりませ。」

「ありがとう。取猫さん、この件は兄達にも?」

「ええ、連絡は入っている筈です。」

「わかりました。では、また・・・」

「はい、美琴様。お気をつけて。」

「ありがとうございます。」あたしが、立ち去ろうととすると、

「あの、美琴様。」あたしは振り返って、

「まだ何か?」

「少し宜しいでしょうか。」

ー改まって、何かな?- あたしは取猫さんが促すまま白猫堂に入った。

「どうぞこちらへ。」取猫さんが、すすめる椅子に座った。

「改まって何ですか?」

「少しお話したい事がございまして。」

ー何時に無く真剣だな、何の話だろ?-あたしの顔をまじまじと見入っている取猫さんにあたしは訊く。

「どんな話でしょうか?」我に返った様に取猫さんは、

「誠に失礼かと思いますが、美琴様はお父様が生きておられるとお思いでしょうか?」

ー!?お父さんが生きてる?-

「もう5年たってしまいました・・・生きているなら・・・生きているなら何か知らせが来ると思います。・・・だから、もう・・・」あたしが、答えに詰まってしまうと、

「生きてはもういないと?」

「そう、そう思ってしまいました。」あたしが下を向きながら答える。

「そうでございますか。生きておられないとお思いですか。」取猫さんは、天井を仰ぎ見ながら言う。

「何かご存知なのですか?」

「美琴様、私は。私は元、狼牙様の聖導士を務めておりました。その前は・・・式鬼として魔獣鬼の下僕でございました。」

ー式鬼?そんな事が有るの?式鬼になったら魔獣鬼が滅ぶと同時に消滅するって聞いた事ある。とすると魔獣鬼が滅んでいない事になる。でも、主たる魔獣鬼から勝手に離れて聖導士になんてなれるのかな?-

「どうやって、父の聖導士になれたのですか、取猫さんは?」

「それは、聖獣界の巫女。聖姫様の御蔭でございます。聖姫様が女の子をお預けになる時、お父様・お母様

に私をお預けになられました。その時以来私はお父様の、狼牙様の聖導士として生まれ変わったので、ございます。」

「そうだったんですか・・・父さんの・・・聖導士として、今まで・・・。」

「狼牙様の聖導士として、また美久様を知る者として、美琴様にお告げ申し上げます。狼牙様は今だ聖獣界・転生の間に向かわれておられません。この意味、お分かり頂けますでしょうか。」

ー?お父さんが聖獣界へ行く?どう言う意味だろ。- 取猫さんが言った。

「獅騎導士、聖導士が死ぬと聖獣界の契約した者の所に行き、転生するまでそこで魂は安息を得るのでございます。ですが、聖獣・狼神の所に狼牙様はおいでになっておられないのです。つまり、狼牙様はいまだ何処かでご健在と、いう事になります。」

ー!!お父さんがまだ何処かで生きている!生きてるんだ!!・・・良かった。-

「何処にいるかわかりませんか?」あたしは息咳切って取猫さんに訊いた。

「残念ですが、そこまでは。」ちょっと歯切れの悪い口調で取猫さんが答える。

「そう・・・ですか。」あたしは落胆の表情を浮べて言った。

「美琴様、お父様がどの様なお姿で現れられようとも、その時は受け入れて下さいませ。これが取猫の願いでございます。」

「はい。」あたしは、そう答えて黙ってしまった。

「お気をつけて。」そう取猫さんは言って、あたしを送り出してくれた。

ーお父さんが生きている・・・かもしれない。そうなら、もしそうなら良いのに。遭ってみたいな、お父さんに。- あたしはその時、後の悲劇を知る由もなかった。


「ただいまー。」家に帰ると、

「お帰りなさい、美琴ちゃん。」笑顔のユキ姉さんが出迎えてくれた。

「ただいま、ユキお姉ちゃん。」笑顔でそう答える。

「あら、何か良い事がありましたか?」

「え?うーんと、友達の恋の橋渡しってのをやったんだ。」

「え?恋の橋渡し?」

「そー。ラブレターだよ。ラブレター!にひひ。」

「ラ、ラブレターですか?」

「うん、男の子からのラブレターを友達に渡したら両思いだったんだ。」

「うわあ、いいなあー。」

-ユキ姉さん本気で羨ましがってる・・・・ー

「ねえ、ユキお姉ちゃん。・・・書いたら?」

ユキ姉さんが思いっきり引く。

「え?ええ?そ、そんな事、む、無理よ。」

ー思いっきり慌ててる。-

「そー、書かないんだ。じゃあ、あたしが書こうかな。虎牙兄に。」あたしは、悪戯っぽくユキ姉さんを弄る。

「あわわ、だめっ!だめだってば美琴ちゃん。」さらに、弄る。

「なんで?あたしも虎牙兄の事、好きだし。」

「もう、意地悪しないで。美琴ちゃん。」ユキ姉さんは困った顔をして言った。

ーにひひ。ユキお姉ちゃんってかわいい所あるんだなぁ。面白いけど、弄られやすいキャラなんだ。-

「じゃあ、書く?」と、あたしが訊くと。

「うー、書く、書くから。これ以上苛めないで・・・ね。」

ーおー、結構素直じゃん。よろしい。-

「OK!じゃあ書こうか!」

「ええっ!今から?」

「書くって言ったよね?今!」

「えっ?えっ?そっそんな、心の準備が・・・。」あたしは、止めを刺す。

「はい、はい。書こうねー。」

「そんな、お願い許して。」あたしは、ユキ姉さんをリビングに連れ込みラブレターを書かせる。

「えっと、なになに。(拝啓、冴騎先輩お元気ですか・・・)って、何時も会ってるだろー。」

「えーん、ラブレターなんて書いた事ないから・・・」

「もっと、こう、情熱的な事書かないとー。あたしが友達から聞いたラブレターはロマンチックな事いっぱい書いてあったよ。初めて会った時から今までの事とか、今の気持ちとか。」

「ふーん、その人ロマンチストですね。」

ーあ、あかん。これ・・・-

「普段のユキお姉ちゃんみたいに、気持ちを前面に出したら、きっといいラブレターになるよ。」

「うん、そうだね。美琴ちゃん。」

ーふふ、やっとユキ姉さんらしくなった。これで、ユキ姉さんは告白出来るかな・・・。-

そう思った時、胸にチクリと痛みが走る。

ーなんでだろう。どうして胸が苦しくなったのかな?あたし、吹っ切れた筈なのに・・・どうして?-

「あ、ユキお姉ちゃん。後は自分で考えて、書いてね。あたし、お風呂入ってくるから。」そう言ってあたしはお風呂に駆け込んだ。シャワーを浴びながら思う。

ーあたしは、あたしは本当はどうしたいの。虎牙兄に相応しいユキ姉さんをあたしは認めたはずなのに。もう2人の邪魔はしないって決めた筈なのに・・・。この胸の痛みは、何?-シャワーを浴びながらあたしは、自分の迷いに戸惑った・・・。


次回、いよいよ魔獣鬼との闘いが、始まります。

美琴は、聖導士ユキ、獅騎導士虎牙と共に、勝つ事ができるのか。

次回も読んでくれなきゃ、だめよーん。

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