聖杖物語黒の剣編エピソード1覚醒第3章己滅技<バーサクモード>
エピソード1 覚醒 第3章己滅技<バーサクモード>をお送り致します。
いよいよ斗兎鬼との決戦が、幕を開ける。虎牙は、ユキは、そして美琴は勝つ事が出来るのか?
「おい、獅道。ちょっと?」獅道が目をうるうるさせて二人を見ている。
「なにかあったのか?お前達?」獅道はこちらを向いて
「本当にこう言う事には鈍いな兄さんは!」ふてぶてしい事を言ってくる。
ー?何の事だ一体?-朝のダイニングで仲良くクッキーを焼いているユキと美琴。その姿を見つめている獅道。
ー何なんだ、この光景は?昨夜何があった?-
「それじゃあ、学校行って来るね。帰りにマコとヒナの所へ寄ってこのクッキー渡してくるから。行ってきますユキお姉ちゃん!」そう言って元気良く美琴が出て行く。
「気を付けて、美琴ちゃん。」ユキも、何時もの微笑で美琴を見送っている。
ー昨日何があった?-虎牙は怪訝な顔でそんな二人を見ていた。
ーそれは兄さんが原因の一つなんだぞ。でも僕にもアタックするチャンスはまだ有るなー獅道は、コブシを握り締め思いっきり考えた。
あたしは、昨夜ユキお姉ちゃんと約束した。どちらが虎牙兄の心を掴んでも何時までも仲良くしようって。
ーあたしってホント馬鹿だった。何も知らずに一人で悩んでただけだった。ちょっと心が晴れたかな。この青空みたいに。-
あたしは空を見上げて朝の日差しを受けた。<ドンッ>
「あっ!」
ーヤバッ人にぶつかっちゃった。-
「ご、ごめんなさい。」慌ててその人に詫びる。
「・・・」
ー女の人だ、ちゃんとお詫びしたのに怒ってるのかな。ー
「あなた、何処の学校?」
ーうわっ、高飛車な人だな。-
「何処の学校って訊いてるの。」
「あ、あの西都学園です。」
「そう、だったらちょうどいいわ。一緒に行きましょうか。」
ーえ?うそ。学園まで付いて来る気?ちょっとぶつかっただけで?-
あたしが困った顔をしていると、
『早く行かないと始まってしまうわよ。」
「あっ、はい。」仕方なくこの女の人と一緒に歩き始める。
ー学園に来てあたしの事とやかく言うのかな?やだなぁ。-
あたしが、チラチラ女の人を見ながら歩いていると、
「あなた、高等部?」と、訊いてきた。
「え?はい。高等部1年です。」
「そう。それじゃあ訊くけどあなたのクラスに美琴って子いる?」
ーえ?あたし?-
「あ、あのなぜ?」
「んー。ちょっと気になるって言うか。探しているのよ。冴騎 美琴って娘を。」
「・・・あの、それ、あたしです。」
「!」女の人が立ち止まってあたしを見る。
「あ、あの何か?」あたしが聞くと女の人が、
「そ、そう。あなたが・・・。あの人に似てないから、気が付かなかったわ。」
「あの人?」
「い、いやなに。ははは。」
ーなにこの人、ちょっと変。-あたしがそう考えている間もずっとあたしを見つめている。そして女の人の目が鋭くなり、
「綺麗な髪飾りね。」
「あ、ありがとう。父がくれたんです。」
「・・・そう。」細く切れ上がった目付きのまま、女の人が言う。そんな会話をしている間に学園に着いた。
「あの、あたしは学校がありますので、失礼します。」女の人に挨拶をして分かれようとすると、
「冴騎 美琴・・さん。」
「?」あたしが立ち止まると、
「覚えておくわ冴騎 美琴さん。」そう女の人は言って職員室の方へ向かって行った。
ーあちゃぁ。ホントに職員室の方へ行っちゃった。後で呼び出されちゃうのかな。-
あたしは教室に向かいながらあの女の人の名を聞き忘れているのを思い出した。
ボーッ。あたしは、教室の窓から見える青空を眺めていた。
ーマコとヒナが居ないと、学校ってつまんないな。-
「・・・美琴、冴騎!」
ーわっ!びっくりした。-
「え?な、なに?」慌てて振り返ると、クラスメートの中嶋君が、
「今日、西野ん家行くって言ってただろ。これ渡してくれないか?」
「あ、うん。解った。」
渡された物を鞄に入れていると、
「?まだ何か?」中嶋君は少し口ごもった後、
「ちょっと、付き合ってもらえないかな?」
「?どこに?」
「いいから!」って、いきなり手を引っ張って教室から出る。
「ちょっと、いきなり何するのよ!痛いってば。」教室から出たところで、手紙を差し出しながら、
「これ。」って、渡された。
ーえ?なにこれ。もしかして、ラ・ラブレター?-
「え?え?これって、何?」
「うっ、その、手紙なんだけど・・・」
「これをあたしに?」
「い、いや、その、いっつも3人でいるから渡しづらくてさ。」中嶋君が赤くなって手紙を差し出す。
『渡してくれないかな、西野に、さ。」
ーなーんだ。そっか -
「あ、うん。」手渡された手紙を受け取りながら、
「ヒナの友人として中嶋君に聞くけど、直接渡さないの?手紙?」
「あ、いや。メールだと軽く見られそうで。手紙なら目を通してくれるかな、っと。」
「ふむふむ。それで?」
「読んでくれたなら・・・何とかアプローチ出来て、告る時告り安いかなっと。」
「なーる!やるね。中嶋君!わかったわ。ちゃんと渡してあげる。」
「ありがとう。冴騎。」
「で、もう1つ訊くけど、ヒナの何処が好きになったの?」
「え?何処って・・・。そうだな、あの口調とかさ。」
「とかさ?」
「とか・・・胸とか・・・あ、いやなに、あはは。まあ、全体のかわいいとこ!」あたしはジト目で中嶋君を見ながら、
「ふーん、おっぱいなんだ。」
「ち、違う、違う。それは、言葉のあやで・・・」
「あんな、キラキラして言って・・・まあ、いいわ。ヒナに言っとくから、中嶋君おっぱい大好きって。にひひ。」
「うわー、やめてくれよ。人選誤ったかな。こりゃ。」
「くす。うそうそ、冗談だって。オッケ、渡してあげるね。」
「冗談かよ、まったく。でも頼むよ、冴騎。」
「うん。白森屋のパフェ1つでいいわ!」
「ゲッ、見返り求めんなよ。」
「中嶋君って、からかいがいがあるんだね。くすくす。」
「あーもう、わかったから。」そう言って中嶋君は頭を下げた。
ーそっか、中嶋君がヒナにねぇ。春が来たか、ヒナにも。告白してくれる男子が居たとは。それにしてもあたしには、虎牙兄に告白する勇気がないのに、中嶋君って勇気あるなー。羨ましいぞ、ヒナ。-
そんな事考えているうちにヒナの家に着く。
「あら、美琴ちゃんお久しぶり。」
「ご無沙汰しています。ヒナちゃんの容態は?」
「あー、あの子ってもう学校行けるのにずる休みしちゃって。美琴ちゃんからも言ってやって。」
「あはは。これ学校のプリントです。」
「まあ、悪いわね。ゆっくりして行ってね。今、お茶入れるから。」
「あっ、お構いなく。」そう言って、ヒナの部屋に入る。
「ねーヒナ、問題発生!」
「いきなりなんですか。ミコッタン。」
「これ、中嶋君から、はい。」あたしが手紙を差し出すとビックリした様に、
「えっ!えっ、広人君から?」
「おんやー、ひろとくん・・・ですってぇ。にひひ。」あたしは悪戯っぽく笑う。
「あっ、ち、違いますですぅ。」慌ててヒナが言いつくろう。
「あはは、いつの間にヒナってば、そんな仲になってたの?」
『違いますってば・・・」顔を真っ赤にしてヒナが答える。
「くうー。焼けるやけるぅ。」あたしが、煽るとヒナは手紙をひったくる。
「にひひ、なんて書いてあるのよ。ヒナ!」あたしが覗き込むように言うと、
「み、みちゃだめですぅ。」涙目でヒナが隠す。
「あの、ミコッタン。今、読むのです?」
「にひひ、そー。」
「だめですぅ。」
「えー。読もうよー。声出して読んでよー。」
「むぅりぃですぅ。」あたしは、ヒナの肩をがっしり掴み、
「読むの!」ヒナが涙目で、
「美琴、キャラ崩壊してますですぅ。」
ー赤・・・ポッ・・・- ヒナもポワーとしてる。
ーよっよくこんな文書書けるなー。中嶋君ってロマンチストだったんだ。(僕の愛する人)だって、うぷぷ。-
「ねー、ヒナ。どう?感想はって、あれ?」ヒナは、赤面して気絶してる。
「うわーヒナ!ちょっとその反応はアウトだよー。」あたしはヒナの肩を持ってガクガク揺らす。
我に返ったヒナは、
「あの、ミコッタン。お願いが有るのです。」
「なに?あたしが出来る事なら聞くけど。」
「マコッちには、内緒でお願いするのです。」
「マコに?うーん、どうしようかなー。」
「ひーん。ミコッタンの意地悪ですぅ。」
「あはは、うそうそ。オッケー。黙っといてあげる。」
「お願いなのです。」
「にひひ、でもヒナ。良かったね。ヒナも中嶋君の事、好きだったんだ。」
「うーん、好きとかじゃなくて、なんと言うか傍に居ても良いかなってので・・・です。」また、顔を赤らめてヒナが言う。
「にひひ、おあついねぇー。この。」あたしがヒナを肘でつつきながら煽った。
「ミコッタンこそ、何かあったのです?いやに今日は昔のように明るいのです。」
ーえ?あたしが明るい?昔って・・・-
「今日はこの間までの悩みが吹っ飛んだみたいな感じ、なのです。」
ーそう見えるのかな?-
「ミコッタンも告白したのですか?」
ードキッ!こ、告白!そんな事出来るわけないじゃん。でも、そうだ!手紙って手があったんだ。-
「ヒナ!あたしも告白出来るかもしれない。」すっくとあたしは立ち上がり、思わず力こぶしを握り締める。
「?あの、ミコッタン??」訳が判らないって感じのヒナに、
「あたし帰るね。ヒナ明日は学校来るんだよ!中嶋君待ってるから、にひひ。あっと、そうそう。これ食べてよね。」鞄からクッキーを出して呆然と見送るヒナに渡してマコの家に向かった。
<ピンポーン>
チャイムを鳴らすと、マコが出てきた。
「おう。美琴が家に来るなんてひさしぶりだな。」
「あっ、マコ、元気?」
「へへー。ずる休みだよ。」
「そーなんだ。良かった。もう大丈夫なんだ?」
「ヒナは、どうしてる?」
「今、寄ってきた所なんだよ。」
「そっか、まあ上がってくれよな。」
「うん、いいかな?」
「どうぞ、どうぞ。」
「じゃあ、お邪魔します。」マコの部屋に入ってプリントとクッキーを渡す。
「やりぃ。すまないな。」
「どういたしまして。味は保障するよ。」
「ヒナは、どうしてた?」
「うん、元気だったよ。」あたしは、さっきのヒナを思い出してくすっと笑った。
「お。なんだ?そんな笑顔見るの久しぶりだな。いい事あったのか?」
「え?別に・・・にひひ。」
「おしえろ。美琴!」あたしは両手を振りながら、
「えー、何も無いよ。」
「そうか、ところで、美琴。アレから何がかあったのか?」
「えっ!な、何かって?」
ーマコ、覚えているのかな?魔獣鬼の事?-
「お前と、虎牙兄さんとの事に決まってんじゃん。」
ーほっ、なんだ。そっちの事か。-
「なにもないよ。別に・・・」そう言って少し落ち込んだ。
「そーか?それにしては・・・。告ったのか?」
「え?そんなの無理だよ。あたしそんな勇気ないもん・・・」
「でも、誰かから告白されたとか?」
「えーないない。あたしヒナみたいにラブレターとか、貰った事ないし・・・って、あっ!!」
「みーこーとー。ちょっと詳しく訊こうか。」
ーひえええっ。やっちゃったー。ヒナ許してぇー。- ・・・-・・・
「なる程、そーいう事か。」
「はい。」
ーううっ。ごめん、ヒナ。マコには勝てなかったよ。-あたしは、マコの前で正座してうなだれる。
「まあ、良く判った。美琴の手前黙っておいて上げる。」
ーぱああぁ、マコありがとう。-
「でも・・・」
ーぎくぅ。-
「で、でも?」
「これは、パフェ3杯分ね。」
「そ、そんなー。お許しください。お代官様ー。」
「へへへ、美琴。」
「あはは、マコ。」
ーえ?-マコが突然あたしに抱きつく。
「美琴。おまえが元気になって、本当に良かった。心配したんだぞ。」
「う、うん。うん!ありがとう、マコ。」
ーマコの言葉が気持ちいい。マコの心配が心に響く。-
「うん、マコ。あたし吹っ切れたんだ。もう大丈夫だから。心配かけてごめん。」マコはあたしを強く抱きしめながら、
「幼馴染にあまり心配掛けんなよ。美琴はそれでなくても、危なっかしいんだから。おまえが落ち込む姿なんて、見たくないんだからな。あたしもヒナも、さ。」
「うん、うん。ありがとうマコ。」
ーあたし、マコにまでこんなに心配掛けてたんだ。ごめんねマコ。何時も心配ばっかり掛けて。大好きだよ。-あたしは、マコを抱き返した。
ーそうだ、あたしは強くならなくっちゃ。こんなに心配掛けて、守ってもらって。それに甘えてばかりいて・・・そう。強く、強く!-
「じゃあマコ。明日は学校来てね。」
「あいよ。美琴。」あたしとマコはハイタッチして別れた。
ー本当の友達っていいな。ヒナもマコもあたしの大切な人なんだ。何があっても・・・壊したくない。ずっとずっと。-あたしはそう思いながら夕日に染まる空を見上げた。
己滅技<バーサクモード>
決戦を控えたつかの間の平和。美琴は、マコ・ヒナ二人の幼馴染と共に過ごす穏やかな日々を失いたくなかった。だが、闇はもうそこまで来ている・・・・




