1話、反逆者
ねぇ…知ってる…?
うちの町の7つの怪談…
一つ目の怪談…夜歩くといつの間にか森に入ってて、背の高いのっぺらぼうに追いかけられて殺されるって話…
「はぁ…はぁ…」私は走る…終わりの見えない森の中を…
ねぇ…知ってる…?
二つ目の怪談…運がよければ銀色の亡霊騎士が助けてくれるって…
ねぇ…知ってる…?
三つ目の怪談…雷雨の日に現れる 落ち武者の幽霊…
「はぁ…はぁ…」私はつまづき転んでしまう…
ねぇ…知ってる…?
4つ目の怪談…橋の上に燃え盛る魔女が現れるんだって
「オオオォオォォオォオオ…」後ろから声が迫ってくる…私は立ち上がると光の見えない森の中を走る…
ねぇ…知ってる…?
ほかにも怪談があるんだけど、最後の1つは誰も知らないんだって…最後の1つを知るとその人は…怖い怖い世界に入り込むんだって…
目が痛い…燃え上がるように熱い…目から炎がでるかのように…突然目の前が広がる…
私は安堵したが、すぐに絶望した…行き止まりだ…いや…墓場だった…沢山の少女の体で作られた一本の大木…
すぐ後ろから声が響く…私はそっと後ろを振り向いた身長が3メートルはあるかというスーツを着た男が立っていた…顔はなく・・・白いマスクのようなものをかぶっている・・・
男は唸り声をあげながらうねうねとした腕を動かし私の首元を締め上げた… 苦しい…呼吸ができない…
私は絞るような声をだす…
「助けて…おにい…ちゃ…ん…」ここで私の人生は終わってしまうのか…死にたくない…死にたくない…死にたくない…私が意識を失いかけた時頭の中で声が響いた…
「ほぅ…いい魔力だ…魔術師ではないが上質な魂…こんな脳筋にくれてやるのは惜しい…どれ、貴様は生きたいか小娘…」
頭の中に声が響く…誰とは考えなかった…私は残った力を振り絞り声をはりあげる…
「生きたい…生きたい…生きていたい!」
「かっか、気に入った小娘 ならば契約といこうか…我が名を叫べ、我が新たな王よ!」
名前…そんなのわかるわけない…そう言おうとしたが…頭の中に私が発しなければならない言葉が重い浮かぶ…
「来い…かつて…すべてを破滅させようとした王を殺した者よ…そして愛しき騎士に討たれた者よ…その名は…その名は…反逆者!!」
私が名前を叫ぶと辺りに燃え上がるような光が広がる。大男もうめき声をあげている…しかし、それでも私を離そうとはしない。
ダメだ・・・もう、意識が・・・その時大男の顔を何者かが蹴り上げた。
「オォォオォォォォオオォォォオオオオ・・・」大男は私を離すと防御する体制に入る。
そして、虚空へと投げ出される私の体をそっと誰かが受け止めた。
「ふむ…ふはははは…よいぞ、よい!数百年ぶりの肉体気に入った!そして、貴様が我が新たな王か…うむ、うむ、益々気に入った!余に命じるがいい我が王よ!貴様が望むのなら余はすべての敵を殺して見せよう!」男は叫ぶ!
男は燃え上がるような紅の長髪、服装はまるで昔の映画にでてきそうな黒い軍服に真っ白なマントと不思議な格好をしている。私は何が起きたのかわからずにその場に座り込む・・・・軍服姿の男ははて?という顔をして私の顔を見つめている。
「なんじゃ?余の顔に何かついておるか?それとも腰を抜かしたのか?」その時後ろから大男が迫ってくる…
「い、いやっ!!」私は悲鳴にも似た声をあげるが彼はくたびれた表情で大男を見る。
「なんじゃ・・・貴様は・・・折角我が王との談笑に花咲かせようと思ったのじゃが・・・ここでは興がそがれるな・・・」彼は手を出し下に降ろすと向かってくる大男は床に倒れる・・・いや、倒れたのではない無数の影が大男を縛り付けている。
「たお・・・せる・・・の?」私は彼に戸惑いながらも聞くと・・・
「わたけっ、倒せるわけなかろう。余は自慢ではないが暗殺専門なのじゃ。正面からはちときつい・・・それよりも逃げるぞ我が王よ」彼は私の体をひょいと抱きかかえるとその場を走り出す・・・
「オォォオオオォォォオオォオオオォォォオオオ」後ろから大男の叫び声が聞こえる
こうして、私は逃げ出した。反逆者という少年と・・・でも、これはただの始まりに過ぎなかった。