仲間
異形、怪奇、魔物
僕の目の前に信じられないカタチをした異形の者たちが視界いっぱいに並んでいた。
トンネルを抜けた先は月も星もない闇だった。
ただうすぼんやりと色とりどりの炎の光が闇の町の骨格をうつしだしていた。
ところどころ崩れかかった廃ビルのような場所に怜士がすたすたと入っていく。
10m先も見えない闇である僕は怜士に置いて行かれないようについっていった。
僕は息が止まるかと思った。
ビルの中は異形、怪奇、魔物で埋め尽くされていた。
怜士が異形と笑顔であいさつを交わす。
僕と目が合う。
次の瞬間、異形の目と思われるものが見開かれた。
そして、今の状況である。
ミノタウルスと呼ばれるような者や人型の者、誰しもが想像するような悪魔と思しき者までいる。
まるで百鬼夜行の中にでも放り込まれた気分だった。
いや、百鬼夜行と表現するには少し語弊があるかもしれない。
異形の者は、妖怪だとかモノノ怪だとか言うようなものではなく悪魔と呼ばれるような者たちだったからである。
「おーい黒花ー!」
異形の奥から人影が大衆をかき分けてくる。
クロカ?
その人影は僕を見て息を呑んだ。
「ー凌?なんでここに居るの?」
戸惑った声が鼓膜を突き抜ける。
「怜士さんが…」
数秒の静寂と怜士の困った雰囲気が姉さんの怒りの様子を易々と想像させた。
「怜士、何してんの?」
姉さんの声だけが響く。怒気をはらんでいるのは一目瞭然。
「すまん」
冷や汗の浮き出た笑顔で弁解をする。
「怜士‼︎」
決して大声ではなかったものの語尾と語調からして相当怒っているのだろう。
「は、話せばわかるから。な?」
怜士は自己弁護するような口調ではなく何かを説得させようとしているような口調だった。
黒花は怜士を一瞥しまた奥に行ってしまった。
怜士もその後を追うようにして奥に消えた。
「あの、待ってk」
不意に背中から口を押さえられた。
背中に目を向けるとそこには金髪の少女がニッコリと笑って立っていた。
「初めまして」
少女はさらに笑顔をふくらませ流暢な日本語で僕に挨拶をした。
「ええと、初めまして。あの、姉さんと話しをs」
またしても口を塞がれてしまった。
にしても、いつまでこの体勢なんだ…
この体勢とは彼女が僕に抱きつきながら腕を目の前に回した状態で片手て口を塞がれている体勢である。
恋愛に対しては思春期それ相応のもと言ってもまだ中学生であるためそれほど過激なものではないがこの体勢は僕だけでなくすべての男子が喜ばずにはいられないものだろう。
しかも相手は金髪の美がつくほどの少女である僕がこの体勢から逃れたいのは誰だって想像がつくはずだ。
彼女は綺麗な顔を華やかな笑顔で飾りながら僕に言った。
「ワタシは、あなたと同じニンゲンよ。これからよろしくね。凌。」
「なんで僕の名前を知ってんの?」
「さっき黒花がいってたじゃない。」
そうだった…
そこで、少女が僕の体をパッと放した。
僕は彼女から距離をとる。
「そんな怖がらないでよ。」
彼女は困ったように僕を見た。
「ワタシだってあなたと同じ悪魔持ちの人間だって言ってるでしょ」
むすっとした口調で僕と同じであることを言っていた。
僕は彼女の言葉が信じられなかった。
「悪魔・・・持ち・・?」
僕は何も知らなかった。
僕が異常だと云う事に・・・