家へ
オイスターソース共々更新が遅れてすいません。
しばらくして、二人の間で半ば脅迫的な和解が成立した。その結果、ティスの体調があまりに悪いのでひとまずカルの家に行くことになったのだが…
「何でこんな重いんだテメェは…」ブツクサ言いながらティスを背負うカル。
意外と良い奴かもしれないというティスの心の声は撤回された。にもかかわらずその背中の温もりが心地よく、安堵が押し寄せてきた。
冷たい夜の空気を吸い込み、そして―
「あ、コラ。寝てんじゃね〜よ。余計重くなるじゃね〜か」
最後に聞こえたのはそんな声だった。
それからカルがどうやって自分を運んだのかは知らない。気が付くと、頭上に大量の葡萄がなっているのが見えた。
緑溢れる葡萄園と、普通なら木の家があるところなのだが、奥には大きな塔があった。
「やっと起きたか。ったく。人の服にヨダレなんか垂らしやがって」
―カルの文句も気にならないぐらい、ティスはびっくりしていた。周りを見るとなんと、自分達は広大な丘の上にいたのだ。遠くに町らしきものが見えた。
頭を前に戻す。塔は、白い石造りの岩に扉をつけたようなもので、美しくは無いが葡萄園の風景になじんでいた。
その扉は、ギイイイィィッというけたたましい音を立てて開いた。
二人が中に入る。驚いたことに、なかは木造だった。一階は、半円状に部屋を区切る扉がついており、その中からおいしそうな匂いがするところから、その部屋はキッチンらしかった。
「すごい!ここがあんた(カル)の家なんだ?」言うと同時に、少女らしさを満面に顔を綻ばせるティスだった。
カルは興奮してきゃーきゃー言ってるティスをイスの上に下ろし自分は額に手を当てて隣のイスに座り込んだ。
「おい、ルヴィディッド!下に降りて来い!」
大声で呼ぶと、ガシャ〜ンという破壊てきな音に続いて、小さな男の子が転がり落ちてきた。カルの弟、ルヴィディッドである。
「あ、兄ちゃん。どうしてこんなに遅かったの?ハイアンさんが『夕食に間に合わないカルなんてオカシイ』ってすごく心配してたよ…」
ルヴィディッドはそこで顔を上げた。小さな口がぽかんと開いている。
「兄ちゃん…」
「何だ?ルヴィ」
「女の人…連れてくるなんて」
「しょうがないだろう!兄貴にしか治せないような怪我なんだから!」そして、言いながら八歳の義弟とティスの顔を見比べ、ため息をこらえた。
二人は実に似ていたのである。
ルヴィディッドという子は、本当にカルの弟だろうか。
ティスが六歳ぐらいに見えるその少年を見た時の、最初の感想だった。はっきりいって似ている点はどこにも見当たらず、ルヴィディッドはむしろ自分に似ていた。
赤毛、泣きぼくろはともかく、輪郭、目元、口元とその全てに漂う雰囲気は瓜二つだった。双方とも互いの顔をよく見た瞬間、(ルヴィディッドにいたっては二度目になる)Oの字型に口が開いてしまった。
そして、本来の年よりだいぶ幼く見える二人は、同時に言った。
「これ、誰?」
感想をお待ちしております!もらった日には多分一日中それを読み返していると思います(笑)