協力
結局、三人ともユーリに、しばかれました。
「マジ、すいません」
「反省してるッス」
「ラッシュのやつ、グルメなんだよ……」
頭領と呼ばれた少年のコートの帽子から「ガゥ」とラッシュは顔を出している。
「腹減った」
「寝坊した勇者さんが悪いのですが」
「ぐぬぬ……」
正論だったので、久遠は言い返せない。
「まあ、グリフォンを前にしたら胃の中のもの全部出したくなるでしょう」
「ううっ、急に食欲がなくなってきた」
その話を聞いて
「お前ら、戦士ギルドか」
「正確には、協力者です。私は従者のユーリ、こちらは勇者さんのクオン様です」
王都に行くため、討伐クエストに参加して名前を上げる、とユーリは説明。
「勇者と従者!?」
「あのドラゴンを倒せるって」
「会えるなんて感激ッス」
盗賊三人は、目を丸くする。
(この人たち、本当に盗賊?)
盗賊にしては、妙に品があるような、と久遠は思う。
「オレは、頭領のネロ。太ってる方がギルバートで、ひょろいのがレナード」
「どうも」
「よろしくッス」
ネロは久遠に視線を向け
「お前、いくつ?」
「十四だけど……」
「と、年上……詐欺だ」
女顔だしオレより背低いし、とネロはブツブツと呟いている。
「なあ、グリフォン討伐ってことはジンの塔に行くんだよな」
「はい、今日は手前で野営することになってますが」
ジンの塔までは距離がありますからね、とユーリ。
「ラッシュが世話になったようだし、オレたちにも協力させてもらえねぇか?」
「い、意外と良心的だな」
戸惑う久遠に
「今回のクエストは、我々を入れて七人です。参加人数が決まってますので……」
マクシミリアン隊長に相談しても報酬は期待できないかもしれません、とユーリは語る。
「知ってますか、あの塔、元は名のある暗殺一家の住居だったんッス」
「何でも、すごい遺産が残ってるとか」
「オレらは、それが手に入ればOK」
邪魔なグリフォンを片付けられれば一石二鳥、とネロは言った。
「なるほど、グリフォンが邪魔で手がつけれなかったというわけですね」
「……お前の従者、性格悪いな」
図星だけど、とため息をつくネロに
「みなまで言うな」
久遠は苦笑い。
♦︎♦︎♦︎
戦士ギルド野営地・クラーロ草原。
「おお、来たか坊主。武者震いが止まらず、修行してから出るって聞いてたぞ」
さすがだな、と豪快にマクシミリアンが笑う。
久遠はユーリに横目を向け
「適当なことを……」
「では、素直に言いましょうか」
「け、結構です」
久遠に付いて来た、三人組見て
「彼らは?」
セラはい訝しげな表情。
「勇者さんに改心させられた、盗賊みたいな? まあ、悪い人達ではありません」
グリフォン討伐に協力してくれるそうです、とユーリが説明。
「さすが、クオン殿。人望が厚いのだな……しかし、この辺りではあまり見かけないような」
「ガゥ、ガゥ」
「こら、ラッシュ……まったく」
人懐っこく甘えるラッシュを見て「可愛いな」とセラは目を細めた。
「隊長、大変です!!」
見張りに出ていた男が、慌ててテントを尋ねる。
「近くの街道で、行商人がグリフォンに襲われています!!」
「皆、ランプを持て」
決戦は意外と早いぞ、とマクシミリアンは告げた。