盗賊と会いました
戦士ギルドの横にある寄宿舎で部屋を借り、久遠はベッドに横になった。
ヴァルハラに来てから野宿が続いたこともあり、そのまま深い眠りについた。
「勇者さん、起きて下さい。遅刻ですよ」
ユーリの声を聞いて、久遠は布団から顔を出す。
時計の針は、早朝の四時。
「六時に起きて支度しても、学校には間に合うって」
「何言ってるんですか、グリフォン討伐当日ですよ」
「そうだった!!」
ベッドから飛び起き、久遠は支度を整える。
急いで出て行こうとすると、食堂のおばちゃんが「男の子なのに痩せすぎ」と言って強引に弁当を持たせてくれた。
「セラさんと、隊長さん達は先に出発しています。今日は、ジンの塔前で野営をする予定ですので、近道を通って追いつきましょう」
ユーリの言葉に
「近道?」
そんなものあるのか、と久遠が返す。
「はい、山道で盗賊が出る危険性が高いですが十分追いつけますよ」
「いつの間に……」
「勇者さんが休んでいる間に、色々と聞き込みを」
情報は大切ですからね、とユーリ。
「お前、ちゃんと休んでる?」
「……」
妙な間を置いて「ええ、はい」と返事が返ってきた。
ユーリが町の人に教えてもらった近道を進み
「ああ、さすがに疲れたかも……」
気のせいか鞄が重い、と久遠は石の上に腰を下ろす。
「この辺りまでくれば、十分かと」
久遠の鞄から、ふわふわの白い尻尾のようなものが出ている。
「勇者さん、何か鞄から出てますよ」
「え、ひょっとして弁当……」
慌てて鞄を開けると
「ガゥ」
犬っぽい生き物が、美味しそうに弁当のカツサンドを食べていた。
「カツサンドですか、胃に持たれそうです」
「問題はそこじゃない。弁当が、昼の楽しみが」
「ガゥ、ガゥ」
「これは、狼の子ですね白いのは珍しい……勇者さん、私の後ろに」
岩陰から、人の気配。
「まさか、盗賊……三人かな」
ユーリの後ろに下がりながら、久遠は魔法弓を構える。
「お頭、相手は細身の男と女の子です」
「いや、あれってどっちかっていうと男なんじゃ」
着てるの男物ッス、とひょろい盗賊。
「まあ、どっちでもいい」
岩の上に、赤いバンダナを巻いた少年。
「持ってるもの全部「ガゥ、ガゥ」
白い狼の子が、何かを訴えるように吠える。
「ラッシュ、今までどこに……え、カツサンドもらった?」
パタパタと尻尾を振って、主の元へと駆け寄っていく。
盗賊の少年は頬を掻くと
「ふっ、今日の所は見逃してやる」
「さすが、頭領」
「太っ腹ッス」
小太りの男と、ひょろい男が涙ぐんでいる。
「……勇者さん、あれは殴ってもいいでしょうか?」
「さすがに、イラっとするな。ペットの世話も、マトモにしないとか」
目が笑っていないユーリと久遠を見て
「と、取り敢えず、落ち着け」
盗賊達は、後退りする。