魔法
「セラさんも、討伐クエストに参加するんですよね?」
対象の魔物を聞いていませんでした、とユーリが聞く。
「相手は、グリフォンだ」
「ゲームとかに出て来る、デカイ鳥のことか」
久遠の言葉に
「げーむとやらはよく分からないが、巨大な鳥だ。何より凶暴、旅人や商人を襲っている」
どうやら住処はこの町から東にあるジンの塔だろう、とセラは言った。
「ちょっと、緊張して来た」
「勇者さん、ドラゴンはグリフォンよりも巨大です」
「そりゃ、分かってるけどさ」
セラが倉庫の鍵を開け、久遠とユーリも続いて入る。
「すげぇ、武器の量……」
「この剣、なかなかの代物ですよ」
「盗賊を捕らえた時に、アジトから運び込まれた代物もある。クオン殿の武器は、弓だったな」
好きなものを使うといい、とセラが言った。
「ユーリ、頼む」
「はいはい、勇者さんには繊細な仕事は無理ですね」
「いちいち一言多いんだよ」
久遠は肩を竦める。
「ユーリ殿は、かなり不思議な方だな」
もっともなセラの質問に
「それは、会った時から僕も思ってた」
「やはり、勇者の従者というからには特別な訓練を詰んでいるのだろう」
「……あまり、そうには見えないけど」
「おや、これはレアものですよ」
ユーリの手には、機械の回路のようなものが浮かんだ弓の弦。
「それは、矢が全く飛ばなくてな。はっきり言って、使い物にならない」
セラの説明に
「これは、魔法が原動力です」
「魔法は、教会関係者にしか許されていない奇跡だ」
我々のような普通の人間には無理だ、とセラは語る。
教会が神として崇めている光輝の書。
認められたものだけが、魔法を授かる。
その話を聞いて、久遠は、なんでもありの物体を思い出す。
「また、モノリスか……」
「はい、モノリスです。許可が下りれば、勇者さんは魔法が使えます」
実際に見て体で覚えた方が早い、とユーリは提案。
「確か、森の方にハーピーが飛んで行くのを見ました。私が実践しますので、よく見てください」
「ユーリ殿は、魔法を使えるのだな。やはり、特別な訓練を……」
感心したようにセラが言うと
「ギフトですから」
相変わらずの無表情で、ユーリは返した。
魔法弓を起動、ユーリが光の矢をハーピーに向けて放つ。
歌声で人を惑わすハーピーに、光の矢が直撃。地面へと落とす。
「はっ」
セラが槍で仕留める。
「一撃で……すごい威力だな」
「勇者さん、ちゃんと見てましたか?」
「見てたよ。変わった気はしないけど……」
気のせいかもしれないが「まあ、よかろう」偉そうな声を聞いた。
学校の屋上で聞いた、ドラゴンと似ていたかも、と久遠は思った。
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