マクシミリアン隊長
「見苦しい所を見せてしまったな……」
バカにされたのが悔しかった、とセラは語る。
「あのさ、何で逃げないの? 勝てないなら、嫌な思いするだけだ」
表情を翳らせた久遠に
「君の言うことも確かだが、私自身の誇りを汚したくはなかった。田舎から出てきて、やっと戦士ギルドに入ることが出来た。それを、女だからという理由で貶されたままでは……」
「中坊の勇者さんより、セラさんの方がよっぽど男前ですね」
「……うるさいな」
中坊っていうな、と久遠はユーリに言った。
「だが、クオン殿は私を助けてくれた。改めてお礼を言いたい」
頭を下げるセラに
「や、やめろって」
「ひゅー、ひゅー、照れますね」
真顔で茶化すユーリに
「お前、おちょくってるだろ」
「いいえ、遊んでいるだけです」
「なんだとー」
二人のやり取りを見て、セラが自然と笑をこぼした。
「まったく、騒がしいな」
何があった、と鎧を着た筋肉質の男がギルドから出て来る。
「マクシミリアン隊長」
「お、おい、ヴィンセントが伸びてやがる」
マクシミリアンは動揺すると
「犯人は、どいつだ!?」
物凄い勢いで睨まれ
「勇者さんです」
ユーリが、久遠の肩を叩く。
「何だとぉおおおお!!??」
「い、いや、これには事情が」
「そうです。クオン殿は、私を助けるために」
久遠とセラは、必死に弁解。
「やるじゃねぇか、坊主。どうだ、戦士ギルドに入らねぇか?」
思いっきり、マクシミリアンに背中を叩かれた。
♦︎♦︎♦︎
「へーえ、勇者と従者か。そりゃ、何とかして名を上げねぇとな」
あのドラゴンってのは倒せる気がしない、とマクシミリアンは肩を竦める。
「隊長さん、私たちを討伐依頼に加えてはいただけないでしょうか」
ユーリが聞くと
「ああ、それなんだが……ヴィンセントの奴よっぽど頭の打ち所が悪かったらしくてな。医者から安静にするように言われてな。性格に問題はあるが、明後日の魔物討伐依頼には大事な戦力だった」
そこで、とマクシミリアンは机を叩く。
「お前ら、協力しろ。あいつを一撃で倒せる実力があれば十分だ」
がはははは、とマクシミリアンは豪快に笑う。
「……は、はあ」
「勇者さん、良かったですね」
「マクシミリアン隊長、倉庫の武器をクオンに渡してもいいでしょうか」
私を助けるために武器を壊してしまった、とセラ。
「おう、いいぜ。好きなの使え」
ひょっとしたら掘り出し物があるかもな、とマクシミリアンは語る。