戦士ギルド
「ドラゴンが現れてから、人々が魔物の脅威に晒されているのも事実です」
戦士ギルドの需要も高まっています、とユーリは語る。
「うーん、地道に迷子のペットさがしたり畑を獣から守ったりするしかないのか」
久遠は、深いため息をついた。
この世界のどこかに潜むドラゴン。
探すためには、どうしても王の協力が必要になる。
「ひょっとしたら、伝説の畑の番人として王都の兵士の目にとまるかもしれませんね」
「伝説の畑の番人って……案山子かよ」
勇者である必要ないような、と久遠は肩を竦める。
「けっ、女に討伐任務なんて務まるのか?」
「貴様、私を愚弄するか」
言い争う声。
亜麻色の髪の女性と長身の男。
互いに剣を抜き、一触即発の状態。
「うわー、タイミングの悪い……」
「力の差は圧倒的、女性の方は確実に負けますね」
ユーリは、淡々と分析。
「別に、僕には関係ない」
久遠は、無視して通りすぎようと思った。
しかし、不良から逃げていた自分とは違い
「くっ」
「どうした、打ち返してみろよ」
圧倒的不利な状況でも、彼女の意思は折れていない。
「関係ないいてのに……」
少しだけ、羨ましくもありもどかしい。
「勇者さん、あの男の首と胴を切り離しますか?」
大剣を抜こうとしたユーリに
「そういうのはダメだって……僕が、弓を引いても確実に致命傷だし」
悩んでいる間に、女性の持っていた剣が宙を舞う。
「……殺すがいい」
「さーて、どうし「うわあああああああっ」
背後から走ってきた久遠に、男はおもいっきり弓で殴られた。
「がはっ」
気を失った男は、血文字で美少女と書き残していた。
「弓が壊れた……」
「勇者さん、弓で人を殴るものではありません」
買い直しですね、とユーリはため息をつく。
「あのヴィンセント卿を一撃で……君は、すごいな」
人は見た目だけでは判断出来ないものだ、と女性は呆然としている。
「立てますか?」
ユーリが手を差し出すと
「ああ、すまない。私は、セラ」
そちらは旅の方だろうか、と尋ねられる。
「その、男女の二人旅と言うことは……」
頬を染め、セラは勘違い妄想。
「勇者さんは、男です」
「え、男!? それに勇者って伝説の?」
セラは、大きく目を見開いた。
「……僕は、久遠。いちおう、勇者やってます」
「私は、従者のユーリです」
「そうだったのか……ドラゴンが現れる時、異界より勇者が現れる」
伝説は本当だったのだな、とセラは深く頷いた。