ネフィリムの記憶
夜空には、半分に欠けた月が浮かんでいる。
「すっかり、日がくれたな」
「では、ボクたちはギルドへの報告がありますので」
ギルドに報告に向かうユニアス、ヴィンセントと別れ久遠たちは宿へと向かった。
長旅の疲れもあり、ベッドに横になると久遠はすぐに眠ってしまった。
「ちょっと、邪魔よ」
「うがっ」
尻のデカイおばさんに、押し出された。
ぼんやりとモヤがかかり、現実味のない空間。
(夢、だよな)
人だかりは、丘の方へと続いている。
「おら、さっさと歩け」
黒フードで顔を隠した人物を、両隣の兵士が鞭を打つ。
「この悪魔め」
「魔物も、こいつが手引きしたに違いない」
怒声を浴びせ、石を投げる人々。
あの人物が、一体何をしたのかは分からない。
しかし、見ていてあまり気分のよいものではない。
「旦那様……やはり、気分のよいものではありませんね」
久遠が後ろを振り返ると、ウェーブのかかった金色の髪に涼しげな碧眼の瞳の女性。
この光景に、心を痛め目を伏せている。
「……すげぇ、美人」
自然と言葉が漏れた。
どことなく、ユーリに似ている。
丘の頂上には、処刑台。
大きな斧を持った神官。
黒いフードをとられた人物ーー
「ユーリ?」
その姿を見て、久遠は戦慄する。
「この者は、神の子ネフィリムを語り……ドラゴンの手先として」
罪状が読み上げられる。
魔物に人々を襲わせ、さも自分で退治しているかのように偽った。
不思議な力を持つ、それが証拠だ。
「そんなの違う……」
久遠の声は、人々の怒声にかき消される。
「よって、カルワリオの丘で処刑する」
人々の興奮は最高潮。
両隣の兵士にユーリと思わしき人物は、首を固定される。
微かに、唇が動いていた。
「……分からないけど」
おそらく、憎悪の言葉だろう。
この先の展開は、何となく予想出来る。
人々の列に逆らい歩く久遠の後ろに、金髪の女性が続く。
「こんなの見せるなんて趣味悪い」
「……旦那様から、言伝がございます」
早朝、噴水広場近くの露店でお待ちしています。
「というか、旦那様って?」
「モノリスにでも聞いてください」
そう告げると、女性は姿を消した。
それと同時に、久遠は目を覚ました。
「はぁ、それで露店巡りですか」
「……お前と同じ顔の男の首が、飛ぶのを見るとこだった」
ユーリは少し考え
「その頃でしたら、人格は勇者さんの方では?」
「前世の話なんて憶えてるわけないだろ。お前はどうなんだよ?」
久遠に聞かれ
「その辺りの記憶は、ぼんやりですね」
あまり憶え過ぎるのは脳に毒です、とユーリ。
「きゃー」
エリムの悲鳴。
「羽虫」
「捕まえた」
金髪碧眼の双子にオモチャにされているエリムを見て
「悪いけど、その妖精は僕たちの仲間なんだ」
久遠とユーリを見るなり、双子は顔を見合わせる。
「お兄様たち」
「こんにちわ」
「はい?」
久遠は首を傾げた。




