世界は繰り返す
「もう、ここ飽きた。外行きたい」
ソファーの上に横になり、駄々をこねる子供。
「お前の存在は、ここを出てしまえば崩れる程度に脆い」
今は我慢の時だ、とヤマト。
「今回の件が上手くいけば、みんなが覚えていられるだろう」
その言葉に、子供は目を輝せると
「うん、みんなが覚えてられるのはいいことだね」
「なら、もう少し我慢しなさい」
そう言って、子供の頭を撫でる。
(よく考えたら、普通の子供ってことはないよね)
口元を抑え、笑を堪えていたセツナが復活。
(……あれが、歪みの原因でしょうか)
エネーロの言葉に
(ドラゴンには、見えないけど)
虚数空間まで、歪ませるにはドラゴン並みの質量が必要。
「それで、予測は出来そうか?」
「うーん」
ヤマトの開いた地図。
すでに、兵を派遣した場所にはバツ印が書き込まれている。
「この辺り……かな」
マル印を書いた場所を見て
「カルワリオの丘か」
ネツアクには学習されているな、とヤマトは肩を竦めた。
「……」
天井に視線を向けた子供に
(ヤバイ……)
(セツナ様、ここは引き返した方が)
セツナとエネーロは、通気口を後退。
「ドラゴンを拘束する鎖だが……」
「ヤマト、上に誰か居る」
その言葉と同時
「ぐおっ」
「ぐっ」
通気口を移動していたセツナとエネーロは、二人の前に転送される。
「今のは?」
「魔法の類いかと」
空間移動とかチートだよ、とセツナ。
ヤマトはため息をつくと
「誰かと思えば、ミルラ商会の社長と神官長か」
珍妙な組み合わせだ、と続ける。
「ヤマト、これ食べていい?」
子供の影が、別の生き物のように動いている。
「……どういう、ことです」
エネーロは子供の顔を見るなり
「だいぶ幼くなっていますが、その子供、クオン様の面影があります」
セツナは頬を掻くと
「世界を救うとか、おっさんの仕事じゃないんだけどさ。ヤマト王、君のやってることはヤバイ気がするんだよね」
「黙って、見過ごしていればよかったものを」
「ヴァルハラは好きだから、俺もちょっと頑張ろうって思ってね」
「……」
セツナの言葉に、ヤマトはため息をつく。
「このまま、虚数空間が歪み続ければ無だけしか残りません」
貴方はヴァルハラを破壊するつもりですか、とエネーロは問う。
「……ヴァルハラは、もう何度も壊れている。これ、ダアトその証拠だ」
「みんなが、繰り返しを記憶できないだけ」
ヤマトはそれを壊すんだよ、とダアトと呼ばれた子供。
「このループには、そろそろ飽きた。次の段階に進んでもいい頃だ」
ヤマトは、冷めた視線を二人に向け
「食っていい」
「やったー」
蠢いていた影が、セツナとエネーロを食らう。
ミルラ商会、裏手にある馬小屋。
「あら、ソラマメ帰って来てたのね」
フェブは、ソラマメを眺めながら
「セツナ様、大丈夫かしら。なんだか、胸騒ぎがします」




