家付き妖精の力
二階・執務室。
「あの、小瓶の中の紙ヨ」
本棚の上の小瓶に、エリムが視線を向ける。
「……ちょっと高いな」
「勇者さんの足の長さでは無理ですね」
「い、いちいちムカつくなー」
ユーリが本棚の小瓶を取っている間に
「お前、業者の人間に助け求めなかったのか?」
久遠に聞かれ
「一生懸命ピカピカ光ったら、幽霊扱いヨ……」
こんな可愛い子に失礼ネ、とエリム。
「そりゃ、逃げるよ。不気味だし」
「お待たせしました」
ユーリから小瓶を受け取り
「で、どうするんだ?」
「中の紙を破って捨てテ」
エリムに言われた通り、久遠は小瓶の中の紙を破る。
「あ」
意味ありげな声を出したユーリに
「なんだよ」
「いえ、何でもありません」
「これで、自由ネ。ウフフ……」
ぴょん、ぴょん、とエリムが久遠の頭の上で跳ねる。
「それより、地下のドラゴンて、見ることできないかな」
「勇者様って、あまり頭良くないのネ」
エリムはグイグイと久遠の髪を引っ張ると
「あの青いのに見つかったら、ヤバイにきまってるワ」
ユーリも頷くと
「私も同感です。気になる気持ちは分かりますが、ここは早々に屋敷を出るべきです」
「姿でも消せない限り無理か」
「……姿を消す方法ネ」
執務室の机の上に置かれた、琥珀色の液体。
「ハチミツですか?」
「この家の主は、よく仕事の合間に食べてたワ」
運良く密封されてる瓶が残ってる、とエリム。
「あと、ハーブがあればいいんだけド」
「ハーブか」
確か、アリアからもらった小箱。
小さい魔物を相手にする時は、知らぬ間に切り傷が出来ていることも多い。
回復用のハーブ薬が入っていたはずだ。
「加工されてるけど」
「うん、これで十分ヨ。ハチミツとハーブを使えば、姿隠しの妖精術が使えるワ」
久遠とユーリは目を丸くすると
「小さいのに、ハイスペックだな」
「家付き妖精、侮り難しです」
「家付き妖精は、ご主人様が寝てる時に働くのヨ」
エリムは、ハチミツとハーブを使い床に妖精文字を書く。
「この上に、のっテ」
「……小さいですね」
ユーリが言うと
「い、一生懸命書いたのヨ」
妖精にとっては、十分な大きさ。
妖精文字の上に乗り、久遠は古ぼけた鏡の前に立つ。
「うわっ、鏡に姿が映ってない」
「十五分が、限界ヨ」
「確かに、こんな便利な術は長続きしないでしょう」
「エリム、地下への入り口に案内してくれ」
「分かったワ」




