聖槍の破片
「それって、どういう意味だっ!!」
久遠が大声を出して飛び起きる。
教会の魔法治療室だったこともあり、一斉に視線が向けられた。
「……あ、すいません」
「勇者さん、大丈夫ですか?」
さっきまで呼吸していませんでした、とユーリ。
「ちょっと、体が動かしにくいって……それ、死んでるだろ」
「儀式の後、ミカさんが運んで来てくださったんです」
「……あの子、結構力持ちだな」
「あの胸、ひょっとしたら筋肉かもしれません」
「夢とか希望が詰まってるんだ」
そんなロマンのないこと言うなよ、と久遠。
「痛っ……」
金属の破片で、左手を少し切った。
「勇者さん、それは?」
「光輝の書の向こう側から持って来た、何かの金属」
「まさか、虚数空間の方に?」
「そうだ、それで「うわあああん、クオンくん良かった」
駆け寄って来たミカに、声が遮られた。
「ドラゴンの鱗が消えたら、急に倒れて……」
「ごめん、心配させたね」
ミカの胸元から、白い竜の鱗のペンダントが消えている。
「もしかして、あのペンダントの影響かな」
「勇者は、モノリス……通行証を持っていますから、考えられますね」
「ミカ、ペンダントは後で埋め合わせするよ」
「そんな、いいんですよ。あら、クオンくん、怪我をしてますね」
ミカが、回復の魔法を使う。
「儀式、上手くいったんだな」
「はい、こうピカーンとズババババって」
瑛琉の性格を考えると、この教会に女性が多い理由が分かる気がする。
♦︎♦︎♦︎
「……これは」
虚数空間から持ち帰った、錆びた金属の破片をエネーロに見せる。
「瑛琉先輩から、もらったんだけど」
「これは、聖槍ジークフリートの破片です」
「何というか、ドラゴンを一撃で仕留めそうな名前ですね」
久遠が言うと
「さすがクオン様、その通りです。我が主は、徹底的に文献やら情報を集めました」
そして、聖槍ジークフリートに辿り着いた。
「ドラゴンの心臓を貫いた時、砕け散ったと思っていましたが」
「エイル様が、破片を持っていた」
錆びていますが使えるのでしょうか、とユーリ。
「この槍には、特殊な金属ミスリルが必要になります。腕の良い職人に鍛えてもらい、聖槍ジークフリートを作って頂きました」
ジンの塔近くでミスリルを採取した、とエネーロ。
「今は、どうなっているか分かりませんが」
「勇者さん、復元するならアリアさんに相談してみては?」
「そうだな……ドラゴンが退治されてない影響で、向こうの世界に歪みが出てるみたいだし」
「それは、我が主から?」
「うん、案内してもらった先の空間が削られてた」
エネーロは眉を寄せ
「……気になりますね」
「それと、ヤマト王はドラゴン倒してないって」
「分かりました。こちらでも、情報を集めてみます」
「よろしくお願いします」




