虚数空間
ベッドの横には、可愛いクマのぬいぐるみ。
姿見の鏡に、硝子細工の小物。
「こ、ここは……」
「ちょっと貴方、いつまでそこで寝ているつもりですの」
暇ならゲーム攻略に付き合いなさいな、と久遠は叩き起こされた。
セミロングの黒髪、花柄の装飾のヘアバンド。
年頃は十四、五歳位の高飛車そうな少女。
なんかよく分からない力で、久遠は初めて女子の部屋に招待された。
そして、なぜかギャルゲー攻略を手伝うことになった。
「私、有栖川瑛琉ですわ」
「僕は、鳴海久遠」
「じゃあ、久遠。さっそく、手伝ってくださいませ」
「……いきなり呼び捨て」
眉を寄せた久遠に
「何か文句ありますの? 私、先輩ですのよ」
先輩は偉いのですわ、と瑛琉。
「え、ひょっとして最初の勇者」
「まあ、それはそうとしまして、問題はこれですわ」
瑛琉は久遠の話を聞かず、ゲームパッケージを突きつける。
タイトルは「あの関ヶ原で、待っている」ようするに、戦国ギャルゲー。
「あ、これ戦国武将が全員女の子のやつだ」
そして、プレイヤーは完全オリジナルの男性武将。
上手く相手を攻略できれば、関ヶ原で恋愛イベントが発生するという。
ようするに誰特……いや、マニアしか買わない。
「攻略武将は、石田三成」
金髪ツインテールのツンデレ系。
「どうしても、恋愛イベントに発展しないのよ。選択肢、色々試すから久遠は、隣でメモとってよ」
「あのー、瑛琉」
「瑛琉先輩と呼びなさい」
「……瑛琉先輩。このゲーム、制作会社が石田三成のは仕様だってバグを認めなかったんだ」
発狂したファンが、会社の前で講義したこともあり、ニュースで取り上げられた。
「こんなにかわいいのに!?」
「かわいい子に、残酷なゲームも多いんだよ」
「パッチは?」
「もう、永久にでないよ……」
突きつけられた、残酷な真実。
「ありえませんわ」
最悪なネタバレを食らった気分です、と瑛琉。
「これ、四年前のゲームなんだけど……え?」
瑛琉の部屋の暦。
それは、四年前のものだった。
「虚数空間は、時間の流れが遅いのですわ」
「ここは、光輝の書の向こう側……」
何でこんな場所に、と久遠は考える。
「ミカとユーリ、エネーロさんは来てないのに」
「エネーロ、元気でして?」
さすがに、ギフトのことは気になるのか、瑛琉が聞いた。
「瑛琉先輩に、会えなくて寂しがってたよ」
「……ふーん」
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