西の洞窟の遺跡2
「この辺りの木って、バオバブの木に似てるよね」
「バオバブ……悪魔が引き抜き、逆に植えたと言われる木ですね」
「そう、何だか不気味だ」
久遠は、肩を竦める。
洞窟の前には、調査をしていた兵士たちのテント。
「勇者様と従者の方ですか」
「はい、連絡をくださったクロードさんですね。状況の説明をお願いします」
ユーリに聞かれ
「自分は、昼食を作っていたのですが……調査に向かった、兵士たちが予定の時間になっても戻ってこないのです。これで、連絡をとろうと思ったのですが、反応もありません」
クロードが持っている機械を見て
「これって、トランシーバー」
久遠は目を丸くする。
「珍しいですか? ミルラ商会の新商品ですよ」
ユーリに説明する。
「いや、今の時代って言ったらスマホだろうけど……」
ヴァルハラでは、トランシーバーも十分オーバーテクノロジーだと思う。
(ミルラ商会の社長、侮れないな……)
外で待機しているクロードとの通信用に、トランシーバーを受けとる。
洞窟に入る前にランプを点灯。
「勇者さん、周囲には常に警戒を」
「わ、分かってるよ」
♦︎♦︎♦︎
「ユーリ、壁に絵が描いてある。そういえば、遺跡だっけ……」
ドラゴンと女の人。
そして、次の場面では剣を掲げた人物を前に、跪く人々の絵。
「……これは、英雄の誕生ですね」
かつて、地上に人々が増え始めた頃、ドラゴンたちは美しい人間の娘を伴侶とした。
ドラゴンと人間の間に生まれた子供は強い力を持ち、人々から英雄として崇められた。
「こ、この剣で刺されてるのは?」
素朴な絵だと思っていたが、以外と過激な壁画。
「いつの時代も、力のある人物というのは反感を買うものです」
最後壁画は、何も描かれていない空白。
それが不気味さを増している。
ランプの火が揺らいだ。
「……ううっ、この遺跡寒いな」
そして、眠りへと誘うような女性の歌声。
「勇者さん、周りを見てください」
ランプの灯りを地面に向ける。
凍り漬けされた兵士たち。
その表情は、まるで眠るように穏やか。
「スノーハーピーです。歌で眠ったら、彼らのように凍り漬けにだれますよ」
大剣を構えるユーリ。
遺跡に来る前に購入した眠気覚ましの薬草を咥え
「ハーピーより、素早い」
洞窟を飛び回るスノーハーピーに、久遠は弓で狙いを定める。
光の矢で落としたスノーハーピーを、ユーリが大剣で仕留めていく。
「お疲れ様です」
「この眠気覚ましの薬草、苦い」
顔を顰める久遠に
「苦いから、効くんですよ」
ユーリは苦笑。
「うーん、これは解凍するのに手間がかかるな」
マイペースな男の声。
「フェブ、外に行ってお湯を用意してくれ」
「かしこまりました」
「さあ、ダイゴロウくんとコジロウくんも兵士を運ぶの手伝ってくれ」
「「名前、違いますけど!!??」」
誰だよこの人、と久遠は突っ込んだ。




