王都へ
「アリアさんが、お世話になったようですね」
十歳位の銀髪の少女が、ぺこりと頭を下げる。
幼い見た目に反し、達観しているような雰囲気がある。
少女とユーリを交互に見比べ
「何か、似てる」
久遠は思った。
「ミルラ商会の副社長、フェブさんよ。私の馬車壊れちゃったから、迎えに来てくれたの」
「副社長って……この子が!?」
「まあ、珍しくないでしょう。能力があれば、それだけの役職につけるということで」
ユーリの言葉に
「そりゃ、そうかもしれないけど……」
さすがに久遠は戸惑う。
「アリアさんが、足の具合はどうです?」
「まだ、ちょっと痛むけど歩けるわ。心配してくれるなんて、私、感激です」
目を輝かせるアリアに「そうですか」とユーリは華麗にスルー。
「これから王都に戻るつもりでしたし、どうぞご一緒に」
「勇者さん、ありがたく乗せていただきましょう」
♦︎♦︎♦︎
王都・クアルト
城内・謁見の間
「ご報告、申し上げます」
戦士ギルドの隊員と共に、グリフォンを倒した勇者が城に向かっている。
兵士からの報告を聞き、宰相の女性は端正な顔を少しだけ歪めた。
それとは対照的に、玉座の王は少しだけ口元を綻ばせる。
「……新たな勇者か。アヴリル、君はどう思う?」
「脅威になる可能性もあります」
「君は、心配症だな。分かった、面会を許可しよう」
アヴリルは、ため息をつくと
「軽率ではありませんか?」
「いいじゃないか。私だって、久々に元の世界の人間と話したい」
そして、王は表情を翳らせると
「五番と六番は、惜しかった。七番には、優しくしてやりたいのさ」
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「フェブさん、歌でも歌いませんか?」
「いいですね。わたし、いい歌知ってますよ」
「「ドナドナドナー、勇者さんをのせてー」」
急にハモりだしたユーリとフェブに
「僕は突っ込まないぞ!!」
「有名な歌なの?」
アリアは、首を傾げた。
街道沿いに馬車を走らせて数日。
「ここが、王都か」
まさに、ヴァルハラの中心と呼ばれるにふさわしい。
行き交う人々を眺めていると、あまりの多さに目が回りそうだ。
「人酔いってやつかな……」
平気な方だと思ってたけど、と久遠は呟く。
「日暮れですから、面会は明日にした方がいいでしょう」
ユーリの言葉に
「賛成。フカフカのベッドで眠りたい」
「おすすめは、中央部の宿屋です。料金もお手頃ですよ」
「フェブさん、色々ありがとうございます」
久遠にお礼を言われ
「いいえ、その、クオンさん……」
フェブは何か言いたげだったが
「……気をつけてください」
「は、はい」
「うわあああん、ユーリさん。暇があったら、ぜひミルラ商会に遊びに来てください」
涙目のアリアの服の袖を引っ張り
「さあ、アリアさん帰りますよ」
アリアは踵を返す。
「クオンさん、ユーリさん、またお会いしましょう」