ドラゴンっぽい存在に心臓取られました
BLっぽい表現に注意
「あれぇ、鳴海くん。今月のお友達料は、まだかなぁ?」
「五万ぐらい、楽勝っしょ」
「お前の親父、社長だろ。あ、破産寸前だっけ」
三人組、男子生徒の嘲笑う声。
放課後の屋上。気弱そうな奴をターゲットに、かつあげ。
お友達料を払えないと、徹底的にボコられる理不尽さ。
「も、もう、無理だよ。父さんに、勝手に持ち出してるのバレたし……」
眼鏡の根暗少年、鳴海久遠はを這いながら顔を上げる。
「バレねえようにやれっての」
「あー、無理。こいつ鈍臭ぇし」
そう言って、リーダー格の少年が久遠の頭を踏みつける。
衝撃で、眼鏡にヒビがはいる。
「ううっ……」
「情けねぇ声出しやがって」
「眼鏡がないと明日ももえなーいってさ」
笑ながら右側のチャラい少年が、壊れた眼鏡を取り上げる。
「か、返せよ」
冴えない根暗眼鏡のブサイクな顔を見てやろうと思ったが、状況は予想の斜め上。
「ま、マジ……?」
美少女のような顔立ちの久遠に、三人組は呆然とする。
そして、リーダー格の少年は何かを思いついたように
「知り合いでさ、男でもいいって奴いるんだよなぁ」
払えねぇなら分かってるよな、と久遠の襟首を持ち上げる。
「なんで、僕ばっかり……」
『ーー落ちぶれたものだ』
呆れた声と共に、屋上のドアが吹き飛んだ。
「な、なんだ!?」
「お、おいあれ……」
怯えるチャラい少年の視線の先、爬虫類のような赤い鋭い目がこちらを向いている。
『……狭い。腕一本なら、伸ばせるか』
入れ替わるように伸ばされたのは、硬い鱗に覆われた腕。
爪は凶器のように光る。
「ドラゴンってやつじゃね」
「ゲームか漫画の中の話だろ」
襟元を掴む手が、震えている。
「え、何?」
眼鏡がないため見えないが、異常な状態というのは空気でわかる。
「に、逃げようぜ」
「ばっか、入り口はあそこしか……」
部下の少年たちが見ている前で、リーダーの少年は鋭い爪に引き裂かれる。
『まどろっこしい所に居るから、間違ったじゃねぇか』
飛び散った鮮血が、久遠の頬を伝う。
「ぼ、僕のせい? 何もしてないのに……」
「ひぃいい」
「こ、こっち来るなよ」
助けて母ちゃん、と情けなく命乞いをしている声が聞こえる。
『大人しく、心臓をだせ』
左胸を鋭い爪で突かれ、扉の向こうの巨大な存在に心臓を持っていかれる。
痛みを超えて、もう何も感じない。
自分がどうなっているのかよく分からない状態で
(あ、多分これ即死コースだ)
薄れゆく意識の中、久遠はそう思っていた。