表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駆除人  作者: 花黒子
~大陸に辿り着いた駆除業者~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/506

48話


 フロウラという港町に着いたのは、島を出て、2日後の昼前だった。

 フロウラのあるヴァージニア大陸のルージニア連合国は複数の小さな国が集まってできた国で、大陸の南に位置している。

 そのルージニア連合国の南西にフロウラの町はあった。

 

 ボロボロの船から出てきた俺達は、港で注目された。

 そもそも、水竜に船を牽かせる者などいないようで、船の停泊料を回収するおっさんは、俺が目の前にいるのに、水竜ちゃんを見て呆然としている。

 

「んじゃね~!」

「じゃあ~!」

 水竜ちゃんに手を振って別れる。

 水面から飛び、軽くパフォーマンスをした水竜ちゃんは、大きな波を作りながら、去っていった。

 

「あの…いくらですか?」

「え!?ああ、銀貨2枚。あと名前を」

 おっさんは、羊皮紙とペンを渡してきた。

 俺は適当に名前を書いて、料金を支払った。

「この近くで、船の修復をしてくれるところってありますか?」

「ファインマンの造船所がそうだ。海沿いを歩けばすぐに見つかる」

「ありがとうございます」


「まだ、地面が揺れている気がする」

 ベルサが言う。

「うん、確かに」

「じゃ、一旦宿を取って落ち着こう。それから別行動で」



 フロウラの町は大通りはあるものの、裏道が曲がりくねっていて、建物も密集していた。

 建物は統一感がなく、異文化が交じり合っているようだ。

 ただ、どの建物の壁もカラフルに塗られていて、楽しい気分になる。

 

 教会と思しき、三角屋根の建物の前に人だかりができていた。

 集まっている人は皆、冒険者風の格好をして、「冒険者に冒険を!」などと叫んでいる。


「冒険するから、冒険者なんじゃないの?」

「ん?どういうこと?」

 俺の疑問に、ベルサが疑問で返す。

「『冒険をしたい!』ってことをあの人達は言ってるけど、冒険してないわけでしょ?あんなところでデモやってるんだから。だったら、冒険者じゃないんじゃない?」

「つまり、冒険もしてないくせに、そもそも冒険者を名乗るんじゃねぇっていうことかぁ」

 アイルが勝手に納得する。

「俺も駆除してるだけだから人のこと言えないんだけどね。でも、冒険者ギルドに登録さえすれば、冒険者になれるってプー太郎には天国だよなぁ…仕事やめようかな」

 改めて、俺はこの世界が好きになった。

 冒険者ですって言ってれば、特に何も言われないんだから。

「お花を売ったら、お花屋。魚を売ったら魚屋。冒険する職業は冒険家だ」

 ベルサが諭すように俺に言う。

「え!?冒険家と冒険者って違うの?」

「違うさ。冒険家は数多くの秘境や魔境で冒険した冒険者に贈られる称号だろ?冒険者は、魔物討伐も含めて、雑用みたいなことをしている奴らのことだ」

「じゃあ、大魔法を使える魔法使いも、ダンジョンで強い魔物を切り裂く剣士も、皆雑用係だってこと?」

 アイルに訊く。

「そうだなぁ…あれ?」

「冒険家は職業で冒険をしている人の称号で、冒険者は近くに住む人達の雑用係ってことか?」

「よくわからなくなってきた」

 ベルサが頭を抱えた。

「どっちにしろ、働かなきゃ飯は食えないってことだろ?」

 アイルが、元も子もないようなことを言ってバッサリ切った。

 さすが『剣王』の称号を持ってるだけのことはある。



「冒険家はパトロンがいる人たちのことです。冒険者は自らの意志で、未知の領域に踏み込む勇敢な人たちのことです。雑用に見えるかもしれませんが、ギルドでは未知の領域へ行くためのお手伝いをしているんです。少なくともこのギルドではそうなってます」

 冒険者ギルドのお姉さんが、「しょうもない質問してんじゃねー」という目でこちらを見ながら、教えてくれた。

 冒険者ギルドで、魔物の肉や毛皮、魔石等を換金した。

 竜の魔石は引き取ってくれなかった。

「こんなものを換金できるほど、このギルドにお金はありません」

とのこと。

「宿を取るなら、ここと、ここと、ここがおすすめです。よろしいですか?次の方!」

 できる女って違うな。

 冒険者ギルドには、あまり人がいなかったが、なぜだか、あのお姉さんには列ができていた。

 俺も、あのお姉さんに時々叱ってもらいたい。



 勧められた宿に向かい、3泊分の金を支払う。

 どうせ船の修理に時間はかかるのだから、もっと支払ってもいいのだが、二人が「飽きるかもしれない」というので、3泊分になった。


「ここから別行動ね」

「じゃ、私が造船所に行ってくるよ」

 ベルサが言う。

「あ、なら、お金をある程度渡しておく」

そう言って、俺はベルサに金貨20枚くらい渡した。

「私は、いらないぞ。この辺の魔物狩って、換金するから」

 アイルはレベルが上ったので、腕試しがしたいらしい。

「周辺探索行くなら、私も行きたい!造船所寄ったらすぐに行くからちょっと待ってて」

「わかった」

 などと会話して、出かける準備をしている二人を置いて、俺はそそくさと部屋を出た。

 宿の主人に娼館の場所を聞くと、「え!??」という顔をされた。

 二人も女を連れているのに、娼館に行くのかという疑問だろう。

 「姉弟」だというと、「ああ」と言って、教えてくれた。


 フロウラの娼館は、町の東側、飲み屋街の奥に固まっている。

 飲み屋街では昼間だというのに、冒険者風の男たちが酒を飲んでいた。


「なぜ冒険者の俺達が冒険できないのか?飲まなくちゃやってられん!」

「教会は、南の海に何を隠しているのか!俺達が行って確かめてくるぞぉ!その前に飲もう!」

「でも、10年前に行った奴らは帰ってこなかったぞ。恐ろしいかぎりだが、酒を飲めばこの震えは止まるのか?」

「海に出れば、帰ってこないこともあるだろう!忘れられない過去も飲めば忘れるさ!」

「我らは冒険者!未知の領域に踏み込む者なり!未知の酒を持ってこーい!」

「10年前に行った冒険者達への供養だ!飲もう!」

などの声が上がっていた。

 とりあえず、飲む理由が欲しいらしい。


 酔っ払いたちの脇をすり抜け、娼館街へと向かう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ