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駆除人  作者: 花黒子
『遥か彼方の声を聞きながら……』
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『遥か彼方の声を聞きながら……、2年目』52話「ある魔道具師の過去と鍛冶師たちの選択」


 試験勉強と駅伝の準備の合間に、ラジオでは、次々と作られる魔道具の紹介をしていた。

「蓄魔器の魔力を使えば糸も布もできるんだ」

「紡績機ってことですね!」


 回復術の学生たちとエルフの留学生たちは自動紡績機を作っていた。シーツや布団、包帯、ケガ人の周りは新しい布が足りていないということから作ったらしいが、すでに王都中の宿屋から売ってくれないかという注文が来ているとか。


 レビィとマフシュは、早々にマジコと組み、自動バーテンダーを作っていた。

「お酒は腐らないからね。在庫管理は楽だし、女性層にもウケるお酒を用意できると思うのよ。もちろん低学年の学生には出さないけれどね」

「調薬は口に苦しというけれど、甘い薬なら子供でも普通に飲めるんじゃないかと思って開発予定だった。でも、レビィにかかるとこうなっちゃった」

 薬もお酒も組み合わせ次第で、いろいろな飲み物を作れるらしい。


「索引の魔道具を作ろうとしていたんだけど、膨大過ぎてね。二人に相談したら、地理だけでもかなり有効なことがわかった。あとはジャンルを増やしていくだけだって気づいたの」

 マジコは自分の研究を進めていた。


「地理なんて何に使うんです?」

「アリスポートの西に村がいくつかあるでしょ。そこでは春先になると、国境沿いの花畑から、麻痺薬に使う花の花粉が飛んでくるらしいのよ。それでちょっと昼間仕事をしている最中に、ぼーっとしたりする人もいるらしいんだけど、この二人ったら解毒の飴を売ろうとしているのよ」

「それ、絶対売れるじゃないですか。甘いんでしょ?」

「そうなのよ。考えているレベルがちょっと違うのよね。甘いだけじゃないの。風土病の解決策も戦略的に考えているのよね。びっくりしちゃったよ」

「私たちの方が驚いているけどね。マジコに頼んだ物は次の日に試作品が出来上がっているの」

「アイテムの使い方もそうだけど、実現する能力が高いのよね。ゲンローや私たちみたいに何か一つの物に特化しているってわけじゃないのに、アイテムの使い方を知っているから、いろんな方法があるって教えてくれるから助かってるよ」

 正直、三人で組めば、いくつかの酒場と薬屋の売り上げが、おかしなことになりそうだ。


「異常だ!」

 グイルの言葉に、ラジオ局員は全員頷いた。


「コウジ、罠だけでも解禁してもらえないか?」

 ゲンローが頼みに来た。蓄魔器を使った武器の開発は禁止されている。ただ、他の学生たちがこれだけ蓄魔器を使った魔道具を開発しているのに、蓄魔器本体を作っている鍛冶師たちは何か腑に落ちていないのだろう。


「じゃあ、ちょっとアーリム先生にも聞いてみましょう」


 魔道具工房に行き、説明をするとアーリム先生は腕を組んで考え込んでしまった。


「わかった……。鍛冶師たちを呼んでくれる?」

「全員ですか?」

「刃物を作ったことがある学生たちは全員」


 いつもと違って真面目な雰囲気で言われて、俺とゲンローさんは訝しがりながらも作業中の鍛冶師たちも含めて全員で魔道具の工房へ呼んだ。


「集まったわね。それじゃあ、これから言うことは私にとっても火の国の歴史にも関わることだから、ほんとうに言いにくいことなんだけどね……」


 アーリム先生は自分が開発した武器によって火の国が戦争を仕掛けたこと、さらに広範囲の兵器を開発して大事な人を失ったこと、それでも自分が魔道具開発を辞めなかったこと、誰が救ってくれたのか、すべて語ってくれた。


 昼から話を聞き始めて、すでに夕方になっていた。


「武器や兵器に考えが及ぶのは人間として当然のことだけど、これだけは覚えておいて。自分が作った武器で人が死んだと知らされた時の人間は、自分の武器じゃないと思いたがる。そして現実を見て、命を捨てたくなる。だから、無理やりにでも興奮状態になって忘れよう忘れようと試みるんだけど、過去は変えられない。自分の作った武器の責任は、誰でもなく自分にある。それだけは胸を張っていいし、背負わなければならない」

 アーリム先生は、そこで工房に充満している空気を入れ替えるために窓を開けた。


「もちろん武器は魔物や人間を殺すために使う物だけれど、現代では何かを守るために使うことが多いんじゃないかしら。きっとそれは鍛冶師たちが自分の作った武器を信用できる人間に渡してきたから。量産できる武器は確かに使い勝手がいいかもしれない。でも、歴史を知り、今の社会と比べ、鍛冶師たちの残した意思を学んでほしい。人の心は移ろいやすい物だから。託す相手を選んで、作って。誰かを守る武器はどんどん作ったらいいと思う」

「わかりました」


 ゲンローたち鍛冶師たちは、アーリム先生の話を重く受け止めたようで、鍛冶場に帰る時、誰も一言も話さなかった。


「物を作る者にとって、アーリム先生の当事者としても言葉は重かった。自分たちの作る物への影響が強くなるのは確実だ。少しラジオは出られない」

「わかりました」


 文化とは過去の人たちが紡いできた願いなのかもしれない。

 俺たちは過去から何を受け取り、未来に何を残すのか。時代に問われているのだろう。

 誰に何を影響を受けたのか。作り手にとっては重要なことだ。


 俺はふと気づけば、ダンジョンへ足が向かっていた。

 ビジョンを共有してしまった人たちがいる。すでに答えを出してしまっている人たちが何を考えているのか見たくなった。

 

 初級者向けダンジョンから入り、隠し部屋からダンジョンマスターの部屋へ向かう。


「お、何かあったか?」

 マルケスさんは発酵させていた茶葉を乾かしていた。この先生はダンジョンで何をやっているのだろう。


「いや、天才たちの様子を見に来たんです。先ほど、アーリム先生が学生鍛冶師たちに過去を語ってくれて……」

「デザートダリアの話か」

「ええ、他にも火の国が起こした戦争とか」

「ああ。あの頃は、まだ魔族すら理解されていなかった時期の話だからなぁ」

「でも、もしかしたらエディバラがなくなっていたかもしれないと思うと……」

「研究に没頭するあまり人間性を失う者たちがいるのは確かだ。でも、大丈夫だ。コウジの先輩たちはちゃんと方向性を考えて作っているよ」


 その時、壁に四角く張られたダンジョンテープが青白く光り出し、中からダイトキとシェムが出てきた。二人とも水仕事をしてきたのか、足も腕も濡れている。


「あれ? コウジ、どうした?」

「アーリム先生が過去の話を教えてくれて」

「ああ。歴史の授業でも教わったな」

「私もアーリム先生から直接聞いたよ」

 俺も知識として知っていたけれど、本人に聞くと作り手としての心情も入っているので違って聞こえた。なにより自分が作った物についての想像が深まった。

「先輩たちは自分の作った物が人殺しや人攫いに使われたらどう思うかなって……」

 ストレートに聞いてみた。


「それを制限するために、私たちは汎用性の高いダンジョンコアを作っているんだよ」

「ダンジョンの使い方は、それこそ人それぞれでござる。自由度が高くなくてはいけない。その上で、人を殺させない仕組みを考えているのでござる」

「例えば、死ぬほどのダメージを負うと回復するとか、中でじっとしていることで自然治癒力を上げるとかね。今は、そもそもそんな気を起こさせないようなダンジョンを目指しているけれど……」

「これ以上は言えないのでござる。コウジ、文化祭を楽しみにしていてくれ。しかし蓄魔器の安定性はすごいな」

 何を作っているのかは教えてくれなかった。


「そうですか」

「魔力が安定するだけで、ここまで変わるなんて思わなかったわ」

「作る物の幅が一気に広がったのでござるよ。今までは時間制限のある仕組みしか作れなかったが、蓄魔器でダンジョンコアの制約が崩されるようなことはなくなった」


 ガチャ。


 ドアを開けてソニアさんが上級者向けダンジョンから戻ってきた。


「おっ! コウジ! 久しぶりに来たの? せっかくだからちょっと手伝っていきなさい」

「え~?」

 そう言いながらもソニアさんの頼みは断れない。


「この特待生二人は、文化祭に掛かり切りでね。試験も何もあったもんじゃないのよ。貴族の学生たちはすっかり駅伝の訓練で初級者向けダンジョンを占領しているし、困ったもんだよ」

「でも、マルケスさんが……」

「ダンジョンマスターとしての仕事と言って、お茶作りに余念がないだろ? でも、お茶のお陰でかなり島の産業も変わっていろんな国とも交易できるようになったからね。仕方ないと言えば仕方ないんだよ。サボっているように見えて、仕事はしている」

「じゃあ、誰が学校のダンジョンを……?」

「私とコウジだよ。さぁ、行こう。リュージは全然動かないんだ。あれだけ食べてるのに、ほとんど寝てるんだから、竜ってのは本当に費用対効果が悪い魔族だよ」


 俺は半ば連行されるようにソニアさんにダンジョンの工事現場に連れていかれ、偽物の岩山や雪を作った。さらに空もペンキで青く塗るという毎度のことながら意味があるのかわからない作業までやった。


「どうしてダンジョンマスターは空を描きたがるんですか?」

 孤島のダンジョンにも偽物の青い空があったと記憶している。

「穴倉生活に嫌気がさすんじゃないか。せめて嘘でも青空が見たい時があるのさ。おっ、いい雲描くね」

「褒められても……」

「そういや、もう文化祭の時期から王都の宿が予約でいっぱいだって聞いたかい?」

「え? もう? その人たちは年明けをアリスポートで過ごすってことですか?」

「そうだよ。私たちも仕方がないから、今年は島へは帰らないつもりさ」

「ええ?」

「いや、コムロカンパニーも勇者一行も皆、アリスポートに来るよ」

「ええ!? なんで?」

「駅伝の協力をお願いしただろ?」

「あ、そうか。でも、勇者連合国はどうするんです? 夏休みの時には大変なことになってましたけど……」

「それが世界樹協定を結んだらしいよ。新聞読んでないかい?」

「南半球の新聞まで読んでませんよ。そもそも届かないし」

「まあ、そうだね。私も読んだだけだけどね。勇者たちが世界樹からの水について、協定を結んで各国へパイプを作ることが決まった。たぶん、できてる頃だろうね。食糧支援も含めて、セーラたち勇者一行が各国の暴徒を鎮圧した。とはいえ他の勇者たちにカリスマ性はなくなった。逃げてきたエルフも含めて戸籍作りと連合国の大統領選をするらしいよ」

「あ、じゃあ、連合国として再建されて、封建制じゃなくて民主主義になるってことですか?」

「そう。よくわかるね?」

「これでも勉強はしているので。そうですか」

「元々勇者たちの国にいた大衆は、そのままセーラが大統領になるもんだと思っていたみたいだけど、『冒険者ですし、元主人の言いつけを守り、国には極力関わりません』と書いてあったね」

「親父の言いつけですか?」

「まぁ、コムロカンパニーはああ見えて国に関わらないようにしているらしいよ」

「そんなバカな……」

 魔族領にはものすごく関わっているし、ルージニア連合国でも中央政府と取引していたはずだ。


「私もそう思うけど、本人たちはなるべく自由がいいらしい。でも、実際彼らの動きを見ていると、人や環境には関わっているけれど基本的な判断は地元の人たちに委ねているのよね」

「知らなかった。もう一回、歴史の本を読んでみます」

「うん、コウジにはそれも期待されていると思うよ」

「国に関わるってことですか?」

「そう。親は関わっていないけれど、子は違うでしょ」

「ああ、なるほど……」


 関わるとしても戦闘力で関わることはなく、商業的に関わる可能性はある。しばらく考えて、俺は蓄魔器に関しての販売戦略について思いついた。


「じゃあ、とりあえず、ラジオの放送が始まるので作業から離れます」

「ああ、忙しい中、悪いね。どう考えてもコウジが一番忙しいはずなんだけど」

「いや、俺の作業はほぼ終わっているので。でも、先輩たちに会えてよかったです」


 俺はラジオ局に向かい、学内だけでなく町の人たちからも王都の人の多さについて広く手紙を募集することにした。


「手紙じゃなくて葉書がいいよ。厚手の紙で、ちょっとしたメッセージを送れるんだ」

「そんなのが出たのか?」

「ああ、配達人界隈では、もうすでに流行ってるみたいだ」

 ラジオショップにいたグイルが教えてくれた。

「じゃあ、ちょっとたくさん買っておこう。学生たちと職員さんたちに配って、街中にも置いてもらったらいいんじゃないか?」

「いいな。それ。ラジオだと送りやすいし、識字率も高くなるはずだ」



 放送では学内でも使える葉書について、鳥の使役についてなどを話し、すでに正月付近の学内利用についても職員の方がわざわざラジオ局まで来て、教えてくれた。


「特に今年は駅伝をやるので、選手たちも利用します。皆、文化祭が終わって試験のことしか頭にないと思うけれど、掃除もお願いね」

 事務局長は赤面して汗を拭いながら、学生たちに注意してくれた。


 文化祭も一週間後に迫る中、俺はラジオ局員たちに蓄魔器の販売についてある提案をすることにした。


「蓄魔器による武器開発は各国のルール内で行われると思うんだ。俺たちがどれだけ止めてもね。それから文化祭以降はどうしても偽物が出回るんじゃないかと思う。おそらく避けられないことだし、俺たちにどうにかできることでもない」

「だから、駅伝をして蓄魔器の量に制限をかけるんでしょ?」

「そういうことなんだけど、販売権ごと売れないかと思って……」

「え? どういうことだ?」

「販売権って一つだと思っているけれど、たくさん用意したらいいんじゃないか。そもそも駅伝で配るのは購入権であって蓄魔器そのものは作り続けないといけないだろ?」

「ん? つまりすべての蓄魔器はそれぞれの国の国有事業にしてくれっていうことか?」

「そういうことだね。もちろん、いずれは国を通さなくてもいいけれど、初めはどれだけ安く売ってもいいから国を通した方が、魔力利権として守られるんじゃないかと思うんだよ」

「それって利ザヤは国に持って行かれて、ラジオ局にはそんなに入らないんじゃない?」

 ウインクも理解したらしい。


「そういうこと。俺たちと言うか魔道具師は、故障やメンテナンスで稼げるようにすればいい」

「やっぱりラジオ局には利益が入ってこないんじゃない?」

「その通りだ。でも、今の俺たちが利益を上げて大金を手にしたとして、使いきれると思うか?」

「でも……、ん~……」

「それよりも全世界の魔道具師に貸しを作って、いろんな魔道具を扱える商会を作った方が結果的にはいいんじゃないか、という案なんだけど」

「うん。俺はそれでいいと思う。いずれ魔族領に売ることも含めて、今は大金よりも信用を得た方が圧倒的にいいと思っていたんだ」

 グイルは大きく頷いて賛同してくれた。


「私は半分反対。おそらく販売権を売ると、奪い合いが始まって争いの種になりかねないんじゃないかという懸念がひとつ。それを国が取り締まるにしても、役人や貴族の汚職はどの国でもあるからね。結果的に一般庶民に害が及ばないかしら?」

 ミストは賛否半々だ。

「それこそ、国による統制が必要だと思うんだ。それに普通の人の暮らしに害が及ぶなら、問題は役人や貴族の意識にあることが露呈するんじゃないかな。利権を正しく使えていないことがわかった方が、国民の支持は得られるような気がするんだけど……」

「ああ、そうか。汚職発見装置として機能するってことね。もしかして、その場所にロケしに行くつもり?」

 ミストはどんどん発展させていく。


「領主のお取り潰しになりかねないってこと? そんなことできるの?」

 ウインクは驚きすぎて瞬きを忘れている。

「むしろそんなことの責任は俺たちには負えないから、やっぱり国に販売権を売った方がいいんじゃない? その販売権の分割量を決めて、こちらは製造していくと無駄が出ないんじゃないかな」

「ああ、それなら私も賛成する。ウインクは?」

「国にちゃんと関わっていくんだね。すごいと思う。そんなことまで想像できてなかったからびっくりしちゃった。でも、もし貴族がお取り潰しになったとして、私たちは恨まれない?」

「それはないんじゃない? 販売したのは国だし、汚職をしたのは自分たちでしょ。恨むなら自分たちの浅はかさだよ」

「これは蓄魔器販売の防衛だな」

「よく考えるね、そんなこと!」

「さっきシェムさんとダイトキさんと話していてさ。やろうと思えばいくらでも人攫いも人殺しもできるダンジョンを作れるだろ? だから、ダンジョンコアで制限できるダンジョンを作っているんだって聞いてさ。ある程度、影響を考えて制約や制限を作っていかないと、残る文化になっていかないんじゃないかな」

「本当にそうだと思うわ」

「文化の根底に制作者の思いが流れてないとな」

「わかった。あと何を駅伝で見ればいいのかもわかったよ」


 蓄魔器販売に関して概ね固まった。

 それから一週間、ミストとグイルはマジコと一緒に野営で必要なアイテムの使い方と魔物との戦闘の避け方をじっくり学んでいた。もちろん、他の選手たちも一緒だったが、ミストの死霊術とグイルのアイテムへの知識にマジコは舌を巻いていた。


「魔道具だけじゃないわ。アイテムへの理解度も含めて、知識の量が二人とも異常だわ」

「俺はミストほど知識はないよ」

「私はグイルほど使いこなせない。というか、グイルはすでにエンジニアとして生計を立てられるでしょ?」

「見様見真似だよ。でも、マジコさんのお陰で、ほぼ確実な技術になってきた」

「駅伝では全員敵になるんだから嫌になるよ」

 

 学校の外では、続々と世界中から駅伝の選手やサポーター、蓄魔器販売に手を出そうとする魔道具師たちが集まっていた。幸いにもパレードがあったため、王都の人たちは慣れ始めていた。


 そしてコムロカンパニーの面々が到着し始め、王都の外にも即席の宿ができ始めていた。


「文化祭は晴れるよ」


 蓄魔器の魔力を補充しに竜の駅に行くと、ちょうど乗合馬車が下りてきて、オタリーさんたち北極基地の選手とサポーターが出てきたところだった。

 晴れると言ったのは予知スキルを持つオタリーさんなので、おそらく当日は快晴だろう。


「オタリーさん!」

「夏以来だね。今回はサポーターとして来た。ついでに文化祭も見るつもりだ。随分時代を進めたようだね」

「俺だけじゃないですよ」

「そのようだ」


 小春日和の光を浴びて、竜の乗合馬車が続々と降りてくる。剣呑な雰囲気の傭兵や一筋縄ではいかなそうな冒険者たちも国の威信をかけて集まってくる。



「面白そうだな」

「禁句ですよ」

 

 アイルさんとメルモさんが選手たちに紛れていたが、どう考えても冬とは思えない薄着の二人に近づく人はいなかった。知り合いだと思われないようにしよう。


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