『遥か彼方の声を聞きながら……、2年目』43話「作ったはいいが売り方が問題だ」
「いや、単純な疑問としてそんなことできるの?」
俺は世界大戦を止めるという親父に聞いてみた。
「一応、竜の駅はそれぞれの国に建てたから、魔力が流れている龍脈の取り合いにはならないと思う。魔道具の普及に関してはコウジたちがやってくれただろ? それで全世界的にも広がっているから、エディバラの魔道具師たちもメンテナンス含めてエンジニアを輩出しているところだ。各国がどういう魔道具に注力して、どう発展していくかが問題なんだ」
「ちょっと待ってくださいよ! じゃあ、コムロさんはずっと魔道具による産業革命が起こると想定して竜の駅を作っていたってことですか!?」
ゲンズブールさんが珍しく声を上げていた。
「まぁ、そういうことだね。俺は転生者だから、前の世界で産業革命が起こったのは歴史の本とかでも知っていた。似たような状況になれば、こちらの世界でも起こるだろうことは想定できただけだ。ただ、こちらの世界では魔法や魔力がメインのエネルギーだろ? はっきり言えばラジオなんてオーバーテクノロジーだし、ダンジョンなんてオーバーすぎる技術なんだ。しかも持ち運べるダンジョンまで作ってるんだろ? 突然に戦場に1万人の兵士を投入するってことも可能なわけだよね? それって戦争の形態が変わってしかるべしじゃないか?」
「先の南半球で起こった勇者の国の内戦は完全な情報戦だったわけ。私たちは魔物に対処するという名目で参加したわけだけど、最も働いたのはラジオで情報を瞬時に伝えていたコウジでしょ?」
アイルさんが俺を見て、地図上の南半球を指さしていた。
「そうなんですか!?」
「だから、もっと報酬を貰った方がいいって言ったんだ。避難させて勇者の国にいる国民を生かしたのはコウジだよ」
「いや、現場にいたコムロカンパニーの方々じゃないですか」
「俺たちは現場で見たものを言っているだけだよ。コウジは状況と速報性を考えて情報を出していただろ? 本当はそれって結構な技術がいることなんだよ。特にああいう緊急性のあることはね。ラジオで培ったたまものだ」
セスさんまで誉めてきた。
「だからって、今後どうすればいいのかなんて……」
「要は情報も戦争の一部になり得るってことだ。信用できない部隊が持ってきた情報を元に戦略を立てて罠にかかるなんてことは今までの歴史上でもあることだし、信じた精霊によって戦争を引き起こした勇者だっている。知らない、わからないことで狙われるってことでもあるんだよ」
「だから、各国は教育に力を入れ始めると思う。印刷技術の発展が重要になってくる。技術書や新しい販売方法の拡散にね。すでに魔法国エディバラでは開発されている。問題は安定した魔力量だったけど、蓄魔器によってそれも解決する」
ベルサさんが説明してくれた。
「そうなると結局、人の数、アイディア量が格差を作るわけだけど、紡績技術を魔道具にしてしまえば、一気に奴隷を解放する運動が起こると思うのね。裸の奴隷に服を着せて教育を施せば、国民になるから。民族衣装というのはその国のアイデンティティが歴史的な思いが詰まっているの」
「だから、差別をなくそうとしていたんですか!?」
メルモさんの説明に、ウインクが驚きながら納得していた。
「輸送の概念も変わる。今は空を飛ぶのに箒ばかりが広がっているけど、これは社長がその辺にあった箒で作った魔道具なんだ。でも、この技術をコンテナそのものに使えば、馬車の荷台から車輪がなくなるし、魔力量を上げられればフィーホースも要らなくなる」
「それ、ギルド化すると行商人が消えてしまうんじゃ……!?」
セスさんの予想には、グイルがドン引きしていた。
「でも、大量生産、大量消費の時代が来るとして僅かな格差にも不満が出てくるんじゃないですか?」
ゲンズブールさんが、汗を拭いながらメモを取り始めた。
「その通り。隣の芝生が青く見えるのはどこの世界でも同じさ。ただ、僅かな違いじゃなくて大きく違う種族もいるだろ?」
「魔族への差別が広がるということですね?」
「魔族領が大きく儲ければ、そういう不満は広がっていくだろうね。だから魔王城で会議をしているんだよ。一番狙われる種族がいるからね」
「もしかしてパレードによる奴隷の解放というのは、そういう時代が来ることを見越してやっているんですか?」
ずっと喋らなかったゴズさんが聞いていた。
「いや、あれはミリアがやっていることだ。もちろん、応援しているし、これからの時代にも合っていると思う。民主主義というのはとても脆弱でね。奴隷を解放しようとしながら、奴隷商と取引をしないといけないこともあるわけだからね。思想もなかなか広がらない。でも、ここに来て国防や豊かな生活を目指すなら、大量生産された衣類と共に広がっていくんじゃないかとは思う。すぐには無理だろうけど、商人の力が強くなっていく時代だからね」
「そんななかコウジが蓄魔器を開発したってことなんですよね? コムロ家はどういう運命を担っているんですか?」
ミストは疑問が口から出ていた。
「蓄魔器を開発したのはラジオ局の皆じゃないのか。たまたま、その中に息子のコウジがいたってだけだ」
「私たちもこんなにうまくいくなんて思ってなかったんだよ。魔体術の魔力運用の技術や死霊術師の知識がなければ、急速な高品質の魔力補充は考えられなかったんじゃないか」
「確かにそうですけど……」
「しかも魔道具の知識だって、ほんの十数年前まではほとんど知られていない知識だったし、魔法陣なんかナオキが使ってなかったら、広まってもいないかもしれない。世界中から知識や学ぶ力を持つ者たちが集まるアリスフェイの総合学院で、開発されたのは偶然ではない。ただ、竜族とも仲のいいコウジに運が向いたんじゃないかな」
「神の思し召しという奴ですか?」
「いや、神様はそういうことはしない。むしろ理論から離れるように神父とかに神託を授けるんじゃないかな」
先日聞いた教会の鐘の音を思い出した。
「で、俺たちは結局、どう売ったらいい?」
「おそらく、生産体制はそんなに整っていないだろう? だから、なるべくたくさん作って、それを世界中の商人ギルドに見せて、都会とか田舎とか関係なく『売る体制』を整えることだ。それに伴って、メンテナンスができる人材の確保。たぶん魔道具学の授業を受けている学生でもできるんじゃないかな? あと、魔力補充のスピードを上げるために死霊術師たちに依頼が来ると思うから、連絡を取っていただきたい。冒険者ギルドへの講習や価格調整はこちらでやる。本当言うと、補充した魔石の色を指定できるといいんだけど、できないか?」
「初めにある魔石の粒か、割った魔石の種類にもよるかもしれない。龍脈から補充するときは赤って決まってるんじゃない?」
「そうかぁ。ありきたりな魔石だと冒険者ギルドが区別付かないんだよな」
「コウジ、銅板を変えてみたらいいんじゃないか?」
グイルが提案してきた。
「銅板?」
「ああ、蓄魔器の底に魔法陣を描いた銅板を差し込めるようにしようと思ってるんだ。そうすることで魔石灯になったり周囲の採取したものを冷やして保存できたりするんじゃないかと思って」
「銅板を変えて性質変化をさせるってことだろ?」
「そんな魔法陣あるのかな?」
「ああ、あるね。俺の頭の中にしかなかったけど……。魔法陣帳にも描いてなかったな。ああ、そうなるとテレビができちゃうんじゃないか。いや、ダンジョンとか時魔法で授業受けてるくらいだからオーバーローテクノロジーになるのか……?」
「お、こういうナオキのつぶやきは聞かなくていいぞ。後で、色は決めるから開発を続けてくれ」
ベルサさんが親父を机から引き離していた。
「たぶん、これからいろんな奴らが総合学院に入ってきて、技術を盗もうとしてくる。作る時は部品だけ作って、組み立てを短期間に一気に作った方がいいかもしれない」
アイルさんが注意してくれた。
「うちの運送会社を通してくれれば、倉庫に置いておけるよ」
セスさんの会社があってよかった。
「お願いします。お金は払いますので」
「う~ん、たぶん商人ギルドが払ってくれるはずだ。交渉としては下手に出るのが普通だと思うんだけど、蓄魔器に関しては売りたくないところには売らなくていい」
「でも、それだと戦争にならないですか?」
「コウジ、蓄魔器はただの商品というよりも戦略的な商品になる。武器が作られれば、国ごと乗っ取られる可能性だってある。売る相手は気を付けないといけないし、売らない相手にはもっと気を付けろって話。ですよね?」
グイルが解説してくれてようやく理解できた。
蓄魔器が要らないということはそれに代わる魔道具があるということだ。魔道具に頼らなくても国防は成り立つということでもある。大量の魔道具に対抗できる魔法使いを複数人、軍が抱えている国がどれだけあるのか。
「そういうことだ」
「じゃあ、世界樹にいるドワーフたちって、かなり強いのでは? いや、魔体術の先生たちもか。あれ? コムロカンパニーってどこの国の会社なんだ?」
「うちは多国籍企業だからね。起業したのはヴァージニア大陸のルージニア連合国ってことになっているけど、本部はコウジの実家だよ」
ベルサさんが教えてくれた。
「え!? そうなんですか!? でも、実家はどこの国に所属してるんです?」
「そうなるよな!」
アイルさんはそう言って、親父の方を見た。俺からすればアイデンティティの根幹にかかわることでもある。
「俺は転生したところがアリスフェイのクーべニアだったから、クーべニア出身ってことにしているよ。母さんはルージニア連合国のお茶屋だよな。コウジ、どっちでもいいんじゃないか。ちなみにあの家の所属は南半球だけど、グレートプレーンズ南部ジャングルの一部ってことになっている」
「じゃあ、俺はどこの出身って言えないってこと? 難民?」
「ほら見ろ! ナオキが適当なことをやってるからコウジが困るんじゃないか!」
「コウジ、今からでも遅くない。どこにでも所属していいぞ!」
アイルさんとベルサさんが面白がり始めた。これはマズいぞ。
「どこって言ったって、いや、困ったな」
「ないってことは関税がないから、いくらでも海賊や山賊の集合場所になるんじゃないか」
グイルが変なことを言う。
「ええ!? じゃあ俺は世界樹に所属します。竜の学校にも行ってたし、竜の島所属でもいい。だいたいうちの実家はあんまり人がいないけど大丈夫なの?」
「まぁ、普通の人は見つけられないから大丈夫ではある。劣化はするんだけどね」
親父がそういう魔法陣を張っているらしい。
「変な会話……」
ミストは驚きすぎて呆れている。
「あんまりナオキの会話を聞いているとおかしくなっちゃうからな。そろそろ帰した方がいいんじゃないか?」
「そうだな。わざわざ授業を休んできてもらってるんだからな。あれを見せてくれるか。あの持ち運び可能なダンジョンのテープってやつを」
「あ、はい」
ゴズさんがちゃんと持っていた。
「え!? これでできるの!?」
「入口の大きさを決められるのが凄い! この発想はなかったなぁ!」
セスさんとメルモさんはダンジョンのテープを見ていた。
「なるほどテープを貼って門を作れば、何でも運べるんだ。セス坊、運送業を考えた方がいいんじゃないか」
「いや、本当ですね。参ったな」
ベルサさんから言われて、セスさんが眉間にしわを寄せていた。
「何か問題はないのかい?」
「今のところは、それほど……。部屋を作るのが大変らしいです」
「空間の精霊に会ったんですけど、アイテム袋の整理ともうちょっと仕組みを考えてくれって言ってましたよ。空に祈る人も少なくなってきたからって」
「そっちの問題があるのか……」
「まぁ、亜空間なんてわけがわからないもんな。とりあえず、これに隠れてきたんだろ? 中に入ってくれたら俺が送っていくよ」
「親父が!?」
「悪いか? これでも俺も空間魔法のスキルはカンストしているんだぜ」
「社長、スキルを使うことにしたんですか?」
「ああ。ここから先はなんでも使いこなさなければ時代に置いていかれるからな」
「別に置いてかれてもいいじゃないか」
ベルサさんはそう言って笑っていた。
「いいけど、若者の夢は応援したいだろ?」
「コウジ。ナオキがいなくなることも考えて生きて行けよ。ふらっと5年くらい消えたりするから」
「え? 親父が消えるの?」
「爺ちゃんと婆ちゃんを迎えに行ってたんだよ。まぁ、いいや、ダンジョンのテープをちょっと使って見せてくれ」
ゴズが壁にテープを貼り、俺たちと一緒に中に入った。
「本当にいいんですか?」
「ああ、そんなに時間はかからない」
「ちょっと待て。せっかくだからお土産を持っていけ。フハ」
そう言って、ボウ大統領はカム実やアラクネの糸、グリフォンの固い羽根、トレントの燃え尽きない枝などを持たせてくれた。
「それじゃ、またな」
「またね。蓄魔器の発表は年末の文化祭でしょ?」
「そうです」
「それまでが勝負どころだ。よろしく頼む」
親父がシールを剥がしていくとダンジョンの門が閉まった。
「また、数時間は暇ね」
「授業は置いていかれているかな?」
「時魔法で過去の授業を見れるから大丈夫」
「この枝使っていいんでしょ?」
「お前たち、ダンジョンに慣れてるなぁ」
焚火でもしようかと思った時、門が開いた。
ものの数分だった。移動は一瞬だったのかもしれない。親父が空間魔法を使ったのか。
門が開くとそこにはシェムが待ち構えていた。どうやらシェムの部屋のようだ。幻覚ではなく本物。このスピードで移動できるなら、いずれ空に祈りを捧げる商人が現れるんじゃないかと思う。
「聞いて! 今、ナオキ・コムロを見た気がしたのよ。それであなたたちを連れて来たって言って消えたわ」
「ああ、うん。空間魔法を使ったんだと思う」
「シェムさん、ここはアリスポートの総合学院で、私たちが消えて三日経ってるってことで合ってる?」
ミストが確認を取っていた。
「ええっと、そうね。合ってると思うわ」
「今って朝ですか?」
「そう。まだ夜が明けてないけど、東の空が白み始めてるでしょ?」
「よかったぁ! 夜食の残りを全部貰おう。難しい話をしたら腹減ってきた」
「ありがとうございます。助かりました」
「魔族領に行って、ナオキ・コムロと話を付けてきたの?」
「親父というよりもコムロカンパニーとですね」
とりあえず、食堂に行くと、厨房では朝食の仕込みが始まっていた。
「すみません。夜食の余り物はありませんか?」
「あるよ。サンドイッチ全部持って行きな。ラジオ局員たちが帰ってきたんだね? 誰に誘拐されてたんだい?」
料理長のエリザベスさんが聞いてきた。
「特待十生に誘拐されて、魔族領まで行ってきました」
「悪い大人たちに蓄魔器の権利を奪われたんじゃないだろうね?」
「いや販売するときの注意点を説明されて、難しくはなりました。国って大変なんだなということがわかりましたよ」
「そうだよ。この前だって衛兵が来てあんたたちを探してたんだから」
「ああ、そうか。軍の人たちにも説明しないといけないのか。アグリッパさんを見ませんでした?」
「たぶん、前庭にいると思うよ。早朝に掃除をしながらオルトロスと特訓しているはずだから。アグリッパの坊ちゃんにもサンドイッチ持って行ってあげて。はい、これ唐揚げね」
朝飯を持って、前庭に行くとアグリッパが箒を持って掃除をしていた。
「隠れて努力するタイプか」
ゴズがアグリッパに声をかけていた。
「なんだ? ぞろぞろと……。あ、ラジオ局員たち、帰ってきたのか?」
「ただいま戻りました。アグリッパさん、これ朝飯です」
「お、悪いな。食堂から貰って来たのか?」
「そうです。仕込み中なのに、唐揚げまでもらってしまって」
「あんまり迷惑かけるなよ」
「そうですよね。あの、こんな早朝に迷惑かと思うんですけど、お爺さんと話をさせてもらえませんか? 蓄魔器の件でいろいろと決まったことがあるんですよ」
「ええ? いいけど……」
「お願いします。ミストたちは手分けして、先生たちに報告を頼む」
「わかった。ウインクはアーリム先生に言ってきて。グイルと私で校長に報告しに行こう」
「了解」
それぞれの方へと向かっていく。残されたゴズは「よく役割がわかっているなぁ」と言いながら、塔の魔女と特待十生たちには報告しに行ってくれた。
俺はアグリッパとオルトロスのポチと一緒に学校を出て、街外れへと向かう。
「魔族領に行ったって聞いてたんだけど、帰ってくるのが早くないか?」
「ええ。親父が空間魔法で送ってくれたんですよ」
「ナオキ・コムロが!?」
「アイルさんにも会いましたよ」
「元気だったか?」
「ええ、元気でした。相変わらず親父に呆れてましたけどね」
「コムロカンパニーも大変なんだな」
「大変そうですよ。蓄魔器についていろいろと釘を刺されましたから」
アグリッパの実家に行くと、普通に門を開けてくれた。朝の訓練中で父親と爺さんが、汗を流しているところだった。
「おう。どうした? 友達連れて来たのか?」
「ん? コムロのところの倅じゃないか? 何か話があるんだな。悪い報告なら朝飯を食べながらにしよう」
食堂に連れていかれて、蓄魔器に関して報告。各国の魔道具の状況や産業革命がどれくらいの影響を及ぼすのか聞かれたが、応えられるだけ答えた。
「それで、戦争が止まると思ってるのか!?」
「俺が作らなくても、アリスポートは知恵が集まる町ですから、蓄魔器はいずれできますよ」
「では、エディバラから印刷機の魔道具を輸入しないといけないな。ただでさえ、空飛ぶ箒の運用にも手間取っているというのに、まったくお前たちコムロ家と来たら本当に厄介な家系だなぁ」
家族の悪口を言われているはずなのに、申し訳なさが勝つ。
「戦争の形態が変わってしまいますよ! お父さん」
「変わっている最中だ。学校にも魔道具の武器を作っている学生たちはいるのだろう?」
「います。塔に住んでいる魔女たちが研究しています」
「だったら、軍と連携を取らないといけないな。防衛のためだ。他国に攻め入った時点で軍法会議で裁く。魔道具での侵略など、火の国以来だな。アーリムってドワーフに監視を付けておけよ」
「わかりました」
アグリッパの爺さんが父親に指示を出している。
「アグリッパ、魔道具に対応できる学生は何人いる?」
「いや、普通に皆、対応はできるんじゃないかな。防御魔法を使える学生は多いし、魔物のブレスなんかにも皆対応しているよ。ただ、防御魔法をコウジが崩したって聞いてるけどね」
またお前かという視線を向けられたが、事実なので仕方がない。
「今の防御魔法は同時攻撃に弱いので魔力のハサミで切ればいいんです」
「簡単に言うなぁ。どうせしばらく部品しか作れないんだろ? ちょっと軍の演習に付き合え。こっちも学生に負けている場合じゃないんだ。魔道具の攻撃を防がなければどうにもならん」
俺は放課後、ラジオ局が始まる前に軍の演習に加わることになった。
その間に、俺は各国の商人ギルドに説明し、蓄魔器の説明と交渉もしないといけない。
「死なないですか?」
「演習だぞ。死ぬわけがないだろう!」
「いや、過労で」
「ああ、それはちょっとわからん」
「学生なので、文化祭を最優先にしたいんですけど……」
「国より文化祭を取るのか?」
「俺は多国籍企業の社長の息子なので、文化がアイデンティティになっています。できれば政治的な同盟などを考えた方がいいと思うんですけど」
「それはわかるが誰かが試さないと脅威が伝わらないこともある。戦争を止めるなら、その分だけ忙しくなると思え」
「わかりました」
寝る時間を全力で確保しなければならない。