『遥か彼方の声を聞きながら……、2年目』28話「消えた種族と元風の勇者」
その日から、俺とウタさんは遺跡に潜り、マッピングをしながらズレた空間を探索し続けた。
「潜れば潜るほど、証拠が出てくるね」
「現代の精霊使いは彼らの子孫ということなんですか?」
「たぶんね。それが伝えられているのかどうか……」
「でも、古代のエルフはちゃんと特性を理解していたってことですよね?」
「そう。森と共に生き、木を巧みに使い、植物と向き合った種族よ」
「優れたところばかりと向き合い、精霊の力を高めてもよかったのに、木材の脆弱性も知っていたってことですよね? だからこそ、石の像まで作った。必ず残るように」
「環境的にも木材だと分解しやすいのもあるよね」
「ああ、そういうことか。確かに、冬にグリーンディアが食べてしまう場合もあるし、地面に埋まってたら微魔物に分解されてしまうってことか……。でも、それを全部ダンジョンに詰め込んだって、ほとんど図書館みたいなことなんですかね?」
「ん~、図書館というよりも解説文が多いから、博物館に近いんじゃない?」
「え~? それって今より文化的に進んでないですか?」
「だって、骨だって針金でつないでるのよ。ほら。しかも骨に番号まで振ってる」
「うわぁ、トキオリ爺ちゃんに時をさかのぼれる眼鏡を作ってもらえばよかったなぁ」
「呼んじゃう?」
「アペニールにいるからちょっと遠いんですよね。老体に旅をさせ過ぎてもこっちが怖いので」
「そんなことないよ。うちの爺様たちは喜んでるみたいだし……」
「すごいパワフルだよなぁ。あ! でも、学校の先輩に時魔法を使う人がいるんで、もしかしたら来てくれるかも。竜の乗合馬車の代金くらいなら払えるかな。ちょっと待って。俺は何人呼ぶんだ?」
すでに知り合いの学生を無理して数人呼んでいた。すでに前期にラジオショップで稼いだ額は超えている。
「もうちょっと働いておくんだったなぁ。いや、ちょっと待て。ウタさん、協力者の旅費くらい必要経費で出してもらえませんか?」
「え? うん、いいよ。今、エルフ雇ってない分があるはずだから。あ、もしくは山賊狩りでもする? ほら『月下霊蘭』の開花が迫ってきて、エルフ攫いをする野盗も出てきたみたいだから」
「遺跡のマッピングも全然終わってないんですよ」
「ん~、まぁ、来年までは時間があるからどうにかなるんじゃないかな?」
「ええ? でも、精霊使いにも協力してもらうつもりなんですよ」
「しょうがないじゃない! 人がいないのよ! だいたい、おかしいと思わない? 歴史的文化的な知的財産がこれだけあるっていうのに、人も金も出せないってエルフの国はどうなってるのよ! これを元に観光事業に着手すればいいじゃない? なに? セックスのことしか頭にないわけ? もうちょっと教育に力を入れてみてはどうなの?」
ウタさんが急にキレた。
「俺に言われても……。まぁ、責任をとりたくないんじゃないですか?」
「っ! ……んっとにもうっ! 頭が古いんじゃないのよ! 現実と向き合えてないのよ!」
遺跡を壊しそうだったので、ウタさんを引っ張って外に出た。
俺たちが言い争いながら出てくると、アリアナさんとベン爺さんは周囲を警戒していた。緊張感が漂い、俺もウタさんも黙って周囲を見回す。
「なにかあった?」
「ああ、おかえり。私たちを監視していたエルフが消えて、森がざわついている」
「何かが来ているみたいだ」
ビョウッ!
遺跡を中心に風が渦を巻いて空高く木の葉が舞い上がる。風の妖精のいたずらか。
「森っていうか風が何かを報せてる?」
「あ、やべぇ。この遺跡の発掘ってどこまで知らせてるんです?」
「エルフなら皆知ってるんじゃない? 風が教えてるでしょ」
「だとしたら、偉い人を呼んじゃったかもしれないです」
「誰呼んだの?」
「セスさんに、親父の魔法陣帳をちょっと貸してくれますかって聞いたら、何が必要なんだって言うんで、この遺跡を一時的に封印するって話をしたんですよ。そしたら、『うん、わかった。諸々準備して持って行かせる』って。セスさんは海運業者というか派遣業のプロだから、適材適所が徹底しているんですよ。だから……」
「だから誰が来るのよ」
「たぶん、元風の勇者が……」
吹き荒れていた風がピタリと止んだ。どこから現れるかわからず、その場にいる四人とも周囲を警戒していた。
「え? 誰か来るの?」
振り返ると元風の勇者ことブロウさんが遺跡の入り口に立ってにこやかに笑っていた。気配なし。いつ空から下りてきたのかすらわからなかった。
「ブロウさん! 噂をしてたんです」
「やあ、コウジ。久しぶり」
南半球で農地開発なども手掛けていたブロウさんは、世界一フットワークの軽い種苗屋だ。世界中どこにでも植物の種を届けるため、セスさんの会社とも付き合いが長い。俺が南半球で傭兵のバイトや世界樹でバイトをしている時の依頼主というかお得意さんだった。
「竜の学校を卒業したと思ったら、人間の学校に通って光の精霊をぶっ飛ばしたって? 相変わらず破天荒な人生を送ってるね」
「成り行き上そうなっただけです」
「そんな成り行きはないはずなんだけどなぁ。ウタちゃん、久しぶり。アリアナさんとベン爺さんもお久しぶりです。持ってきましたよ。洞窟スライムの粘液と封魔の杭、それから瞬間成長剤ね」
鞄から結構な大荷物を取り出して、届けてくれた。
「これでよかった?」
「ええ。完璧です。よく揃いましたね」
「ああ、南半球にコムロカンパニーが勢揃いしているから、何でもお見通しみたいだったよ」
「そうなんですか?」
「うん。どうせろくなものを食べてないんじゃないかって、ほらチョクロのスープとバレイモ、それからウェイストランドで採れた夏野菜ね。肉は森で獲れってさ」
カチカチに凍ったチョクロのスープを見せてきた。
「ああ、よかった。アイスボックスに入れていればしばらく保つね」
「肉ばかりで胃が疲れてたんだ」
アリアナさんたちが喜んでいた。
「南極海で獲れた魚もありますよ」
「向こうは冬だからな。脂がのってるよ」
「今日は鍋にしようか」
「その前に遺跡を閉じちゃおう。大事な石碑の情報は取れたし、どっちにしろ解読も必要だからね」
「「「了解です」」」
ウタさんが現場監督なので、全員従う。
「ブロウさんも手伝ってもらえますか?」
「いいよ。その代わり、後でエルフ攫いを捕まえる仕事手伝ってね。ダークエルフの村まで広がってるみたいだから」
「野盗に国境関係ないんですか。コウジ、人手が足りないよ!」
「一応、傭兵は頼んであります。来るかどうかはわからないけど……」
ひとまず、俺たちはウタさんの指示のもと、遺跡を砂と洞窟スライムの粘液を混ぜたもので覆い封魔の杭を打って封印。さらに棘のある蔓に成長剤をかけて遺跡をしばり、魔物を寄せ付けないようにするだけだ。
「手際が良すぎない? ベン爺さん、この2人ってこんなに仕事が出来るんですか?」
「子どもの頃からずっと2人で遊んでるからなぁ。息は合ってるよ」
「いや、コウジがいてくれて本当によかったわ」
アリアナさんも会う度に感謝してくれる。別に俺は何もしていないが、ウタさんには友達が少ないらしい。俺も学校に行くまではほぼウタさんしか友達がいなかった。
「また、その話? 私も先に竜の学校に行けばよかったのかなぁ……」
若い考古学者は面倒なつながりは持ちたくないらしい。
「アリスフェイの総合学院に行ってた頃は、少し友達出来たんじゃないんですか?」
「群れるのが嫌いだったというか……、グループがたくさんあるでしょ?」
確かに貴族連合や魔道結社などが今でもある。
「ああいうグループより普通の学生と話している方が面白かったな。うちの家族って考古学ばっかりやってるんだって気づけたし、普通の生活を知れて、なるべく普通でいようって決めてたかもしれない」
「でも、体育祭で優勝したりしてたでしょ?」
アリアナさんがウタさんに聞いていた。
「してたかな? してたかも。私が学校にいた頃は、グループ活動が盛んだったから、どこのグループにも属してなかった普通の学生たちからすれば邪魔だったのよ」
「特待十生とかに入れられたりしなかったんですか?」
「グループへの誘いは全部断ってた。でも、試験の情報とかは皆に回してたよ」
「試験の内容を事前に知ってたんですか?」
「試験の意味がよくわかってなかったのよ。というか、授業も何を言ってるのかわからないのもあった。魔法とかは教師よりも魔族の方がうまいし、聞いてられなかったって言うのもある。あとは、軍の訓練とかに参加させられたり、新しく出来た盗賊ギルドを潰したりしているうちに、私には合わないのかなって思っているうちに校長の嘘を見破っちゃって、興味もなくしちゃったのよね」
ウタさんは嘘をつく人が苦手だ。つまらない嘘に付き合ってられるほど、人生は長くないと思っているらしい。
「昔の人の嘘って意図があって残してるから理解できるんだけど、生きている人の嘘ってどうしても無理があるようにしか見えなくて、いちいち考えてられないよ」
そう言いながら作業は進む。
「コウジは?」
ブロウさんが封魔の杭を打ちながら聞いてきた。
「嘘ですか? つきますよ。貴族連合の嘘とかを本当にするとか結構面白かったですし、見栄っ張りの嘘を大きくした方が面白くないですか?」
「どういうこと?」
「この間は、どれくらい自分は食べられるのかっていう話で『握り飯なら100個くらいなら食べられますよ』とか大げさに言っておいて、いざ大食い対決したら全然食べられない放送を流しました」
「何が面白いんだ?」
ブロウさんはあまりラジオは聞かないらしい。
「ラジオなのをいいことに『おかわりください!』とか言って食べてる風にして、演技対決になって、後ろから『こいつら、全然食べてない』ってツッコんでもらったんですよ。たったそれだけなのに、深夜だからかスタッフがゲラゲラ笑ってツッコめなくなるまでやってましたね。結局、おにぎり2つ食べただけの放送でしたけど、すごい汗をかきましたよ」
「その放送聞いた。ラジオ局中に握り飯があるって言ってなかった?」
「本当は二つしか用意してなかったんです。だって夕飯もちゃんと食べてますからね」
「あれはちょっと面白かったけど、ツッコミのミストちゃんのお陰でしょ」
「そうそう。あれは俺もグイルもなるべく言葉を使わずに腹がいっぱいだっていう表情をしてたから、現場が面白かったんですよ。でもそのお陰で次の日に学食のおにぎりがたくさん売れたりしてたんで、意図はあってたんですけどね」
「あ、そうなんだ。変なことやってるね」
「だから楽しい嘘はいいんじゃないですか。よし、終わった!」
「早い! 話している間に終わるのか!」
しっかり棘蔓も成長して、完全に遺跡が埋まっている状態になった。
「じゃあ、夕飯の鍋を作り始めるか。つみれがいいだろ?」
ベン爺さんが作ってくれるらしい。
「いいんですか?」
「お、コウジも他人の料理を食べるようになったか。前まで、自分の飯くらい自分で用意しますって言ってたのに」
「都会に染まってしまいました」
「別にいいのよ。私たちだってひ孫ぐらいに思ってるんだから」
「ありがとうございます」
「それじゃ、エルフ攫いを捕まえに行ってきまーす」
「衛兵につきだせばいいんですか?」
「うん、一応冒険者ギルドでもいいはず」
ブロウさんとウタさんと一緒にダークエルフの国・ウェイストランドとの国境線へと向かった。
警備の隊長さんと話し、見回りをしない範囲を聞いた。
「一応、罠は仕掛けてあるから、もし野盗がかかったらわかるようにはなってるんだが、ウェイストランドとの交易も激しくなってるから見逃しているかもしれん。空を飛ばれたら無理だしな。でも、出国するときはバレると思う。幌馬車の中もチェックはしているんだ」
アイテム袋でも人間までは入れられない。もし入れられるとしたら、ダンジョンだけだ。そう考えて、シェムのやろうとしてるダンジョンを思い出した。いくらでも密入国が可能になるということだ。人攫いの手にダンジョンが渡ってはいけない。
「どこに野盗がいると思う?」
ブロウさんは俺たちに聞いた。
「風が止まっている場所」
風が吹いている場所なら妖精がバラしてしまうだろう。
「道なき道を行くと思う?」
「いや、道がある場所を行くよ。紛れられる」
「もしくは地下ですか。大きな蝉の魔物もいるし、学校に地下道を掘って『月下霊蘭』を育てていたエルフもいましたから。アルラウネを使役していたエルフもいました」
「なるほど道はいくらでもありそうだね」
さっぱり見つけられる気がしなかった。
「人を攫うならどうやって攫う?」
「道ごと隠す。あ、コウジ、そこら辺の鳥を捕まえて」
言われた通りに、近くの枝に止まっていた小さな鳥の魔物を捕まえてウタさんに渡した。
「目を付けて飛ばせば……」
ウタさんは自分の感覚器官を魔力で再現できる。つまりウタさんと鬼ごっこをすると必ず負ける。
バサッ……。
鳥の魔物が空高く飛んだ。
「あった。魔力が途切れてる。ブロウさん、この道に沿って風魔法を使ってみてください。たぶん、揺れない枝葉があるはずなので、そこが出入り口になってます」
「本当?」
ブホッ。
ブロウさんの風魔法はおそらく現役の風の勇者よりもうまい。強さがあるというよりも精度が高い。
「すげぇ。本当だ」
揺れない木を見つければ、後は地面に書いてあるまじないを消して、隠れた道を突き進んでいくだけ。人攫いのアジトは巨木の洞を使っていて、中から虫除けなのかお香の匂いが漂っている。
扉が厳重に閉まっているが、ブロウさんは力任せに蝶番ごと外していた。涼しい顔で野蛮なことをする一番相手にしたくないタイプだ。
「なんだ!? お前ら!?」
人攫いの野盗が元勇者に敵うはずもない。野盗のエルフたちが杖に魔力を込める前に、ブロウさんが足払いをしていた。
「適当に縛っていってくれるか?」
「わかりました」
魔法を放とうとしている野盗から魔力を盗んで、そのままひも状に性質変化させ、野盗をぐるぐる巻きにしていった。エルフというのは自分たちの魔力が高いことを拠り所にしているため、皆魔法を使いたがる。そこが敗因だろう。
「まったく同胞を攫うというのはどういうつもりなんだ?」
「あがが……」
自分で魔力を込めれば込めるほど、魔力で作ったひもは頑丈になって、どんどんしまっていく。自縄自縛というやつだ。
そのまま魔力切れで気絶していた。
「二人とも、どういう魔法なんだ?」
「目を魔物に付けただけです」
「魔力を盗んで流れを作っただけです」
「い、いや、そうはならんだろう。両方、オリジナルだろ? つくづく末恐ろしいな」
野盗をひとまとめにして、奴隷にされていたエルフたちを解放。全員、衛兵の詰め所まで連れて行った。
「変なものを食わされるんだ」
奴隷にされかけたエルフが衛兵の隊長に証言していた。
「なんだ? 変なものって」
「拳よりちょっと小さいくらいの実だ。食べた直後は落ち着くんだが、夜眠れなくなるくらい力が湧いてくる。『月下霊蘭』が咲いたらと思うと恐ろしい」
「男女ともに同じものか?」
「ええ。そもそも私たちの里は古い魔術の研究をしているだけで、非力だったのに、こんなに筋肉が付いてしまった」
女エルフも太くなった腕を見せていた。
「奴隷として売られるために攫われたわけではないのか?」
「わからない。本人たちもわかっているのかどうか……」
人攫いたちは未だ魔力切れを起こしていた。
「ブロウ、知ってるか?」
衛兵の隊長とブロウさんは、エルフの森から世界樹がなくなった頃からの付き合いだという。
「いや、俺も知らないですね。親父に聞いてみますか? まだアジトに残ってるでしょう」
「頼むわ。たぶん、組織的な犯行だから、まだ人攫いはいると思う。起きたら聞き出しておく」
「了解です」
ブロウさんは報酬を受け取って、3人で山分け。
「もう少し付き合ってくれるか?」
「いいですよ」
「夕飯までは全然大丈夫です」
「じゃ、ちょっと飛ばすか」
アジトに行き、紫色の実を回収。そのままブロウさんが持っている槍で空を飛び、一気に国境を超えて東へと向かう。ブロウさんの父親、レヴンさんの種苗屋がある。
「おっ、なんだ? 二代目だらけじゃないか」
レヴンさんは気のいい白髪のダークエルフで、だいたい笑っている。
「ウタちゃん、どうだ? 遺跡の発掘は進んでるのか」
「聞いてくださいよ、レヴンさん。マジでエルフが酷すぎるんですよ」
「今に始まったことじゃない。コウジ、うちのラジオを直してくれよ。聞こえなくなっちまったよ。結局誰が体育祭の優勝だったんだ?」
どうやら学校のラジオも聞いているらしい。
「ラジオ局が優勝しましたよ」
「なんだ、やっぱりそうか」
「親父、これなんの実かわかりますか?」
ブロウさんとレヴンさんは、あまり一緒に暮らしていなかったらしく不思議な関係だ。ブロウさんは今でもレヴンさんに敬語を使っている。そもそもレヴンさんはダークエルフでブロウさんはハイエルフとエルフの混血。肌の色が違う。
「なんだ? 新種か? ギャバっぽいけどな」
「人攫いたちが攫ってきたエルフに食べさせてたみたいなんですけど、夜になると力が湧いてくるみたいなんですよ。『月下霊蘭』の開花に合わせて、変なものを食べさせてるみたいで……」
「ん~、なんだぁ? 薬学関係はカミーラに仕切られてるからな。植物の生育関係から変なのが出て来てるな」
「筋肉も短期間で発達するみたいなんですけど」
「ホルモンバランスを崩すのか。ドーピングだな。ちょっと成分調べるか」
レヴンさんは眼鏡をかけて奥の部屋に行った。俺たちはラジオを直し、アンテナを思い切り伸ばした。よく魔力の波を拾えるように傘もつけておく。
修繕工事が終わった頃に、ちょうどよくレヴンさんが出てきた。
「ダメだ。こりゃ。一種の興奮剤で間違いない。症状は言ってた通りだと思う。果実としては不自然で何度も品種改良してると思う。国立の植物学研究所に行った方がいい。稼げる研究を掲げてる弊害だ。衛兵の隊長にこれを渡しておいてくれ。それから薬師のカミーラにも」
レヴンさんが手紙をブロウさんに渡していた。
「研究者ぐるみで人攫ってるってことですか?」
「人攫って自分たちが作った実の効果を試してるんだろう。『月下霊蘭』が咲く前に潰しておいた方がいいぞ。時間ないから頑張れ」
ヒュウウウッ。
ブロウさんの周辺に突風が吹き、持っている槍が緑色に光り始めていた。
「久しぶりに風龍が怒ってる。引退したはずなのに……」