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駆除人  作者: 花黒子
『遥か彼方の声を聞きながら……』
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『遥か彼方の声を聞きながら……、2年目』16話「薬師カミーラの授業」


 アリスポートの人口が多くなり、町を歩く人々も変わってきた。

「本当に人の量が二倍くらいになってないか? 街道の馬車はほとんど止まっててしばらく商品が届かなくなっちまってるよ」

 グイルは文句を言いながらも、パレードに興奮しているようだ。

 アリスフェイ王国の街道は至る所で渋滞が起き、グレートプレーンズから道路公団の魔法使いが出張してきているらしい。竜たちによる空輸は大活躍だった。


 しばらく使ってなかった通信袋だが、真夜中に親父から連絡が来たことがあった。たまたま攻撃魔法の授業で座学の宿題が出ていてミストに教えてもらっていたから気づいた。


「どうかした?」

『価格が高くなったり、極端に安売りしている商品はないか?』

「いや、ないと思うけど……。グイル、知ってるか?」

「ああ、人が多くなったから塩が足りなくなるんじゃないかって、酒場通りで買い占め騒動があったくらい。でも、すぐ軍の訓練場だったテント街から補充されてましたよ」

『ありがとう。助かるよ。なんか、些細なことでも食事とか雑貨類とか変化があったら、教えてくれ』

「西から来た仮設住宅街の影響で、魚醤とかが流行ってますね」

「クーべニアのタオルが人気になってますよ。汗をよく吸い込むって」

 ミストとウインクも通信袋に話しかけていた。


『あ、本当! そりゃ、よかったなぁ。魚醤は美味しいよね。クーべニアなんてワインくらいしか特産がなかったのに、タオルが流行るのか』

「ただの布じゃなくてふわふわしていて、確かに使い心地はいいんですよ」

『へぇ~。知らなかったよ。教えてくれてありがとう』

「いえ……」

「それだけ?」

『それだけだ。せっかくだからカミーラにエルフの話でも聞いたらいいよ』

「あ、来てるのか。わかった」

『あんまり、勉強ばっかりしてないでちゃんと遊べよ。おやすみ~』

「おやすみ~」


 通信袋が切れた。


「今のってナオキ・コムロだよな?」

「そうだよ」

「前も会ったけど、緩いよね? 普通のおじさんっていうかさ」

「いや、普通のおじさんなんだよ」

「話してる相手に緊張させないんだよね」

「緊張しなくていいよ。俺の親父だぞ」

「「「いや……」」」

 ルームメイトの三人は納得いっていない表情をしていた。世界的な変人で精霊も倒しちゃうような会社の社長とは思えないそうだ。


「会っても、青い服着た変なおじさんだからな」

「見た目とやっていることのギャップがすごいよな」

「全然、偉そうにしないよね。去年の文化祭の後にちょっと話したけど『コウジと友達になってくれてありがとな』っていうくらいで……」

「そうなんだよね。メルモさんが『社長は奇人だ』って言ってたけど、ものすごい常識的というか……」

「だから普通なんだって。偉くないし、偉くなると面倒ごとが増えるから嫌なんだと思うよ」

「でも、いろんな国を助けてるでしょ? それこそルージニア連合の道路公団を作ったり、魔族の国を助けたり、火の国救ったりさ。歴史の授業で習うようなことをしているじゃない?」

「ん~、たぶん、別に偉くなりたいからそういうことをやってるわけじゃなくて仕事をしてるだけなんだよ」

「どういう仕事だ!?」

「清掃駆除業者だよ。俺もよく実態は知らないんだけど、アイルさんもベルサさんもいろんな称号を持っていても要らないって言ってたし」

「変なの」

「変だとは思う」


 結局、いつも変ということで収まる。



 翌日、卒業したゲンズブールさんがゴースト系の魔族たちを連れて学校へやってきた。


「やあ、今度魔族の国に学校を作ろうという計画があるからパレードを見るついでに視察さ。魔族の国に行って改めて思うけど、コウジの親父さん、頭おかしいな」

 出会い頭にゲンズブールさんが俺の親父のおかしさを語り始めた。

「普通、これだけ一気に人が集まればパニックになるだろ? しかも各国の要人ばかりだ。アリスフェイの貴族は元より王族だって対応しきれていないのに、成り立たせているなんてこういう時にコムロカンパニーの異常さが際立つよな」

「あの……、パレードってコムロカンパニーが主催なんですか?」

「え? コウジはパレードのことを知らないのか?」

「知らないです。町を練り歩くんですよね? 誰かが?」

「あ……、そういう認識かぁ……。まぁ、見ればわかるよ」

 なぜか皆、俺にパレードについて教えたがらない。シェムも、来ればわかるとしか教えてくれなかった。アイルさんが言ってたくらいだから、コムロカンパニーが絡んでいることは知っていたが、どういうイベントなのかさっぱりわからない。親父に聞いても教えてくれないだろう。


「とりあえず、カミーラ薬師の話を聞くのがいい。授業があるんだろ?」

 玄関ホールの掲示板には『エルフの国から来た世界的薬師・カミーラ特別講師の授業開講!』とデカデカと書かれていた。場所は植物園前の特別屋外ステージ。いつの間にか、そんなものまで作られていたのか。


 一般公開している授業のようで、学生だけでなく外部の人間や魔族たちも大勢集まっていた。


「一般公開なら、ラジオで放送した方がいいんじゃない?」

「確かに。録音もしておこうよ」

「よし」

 俺たちラジオ局は機材を持って、植物園前にマイクなどを仕込んでいった。


「コウジか? 何をやってるんだ?」

 背の低く、耳が長いカミーラさんが荷物を抱えて植物園の扉を開けた。どうやら植物園を控室にしていたらしい。

「お久しぶりです。ラジオの機材を取り付けてるんですよ。荷物、持ちましょうか?」

「ああ、持ってくれ。まだあるから。私の授業をラジオで広めるつもりか?」

 荷物はすべて気つけ薬のようだ。


「そうです」

「いい時代になったな」

「これはエルフに配るんですか?」

「ああ、エルフじゃなくても一つくらい持っていた方がいい。エルフが例の花、『月下霊蘭』で酩酊状態になっていたら助けてあげてくれとも言うつもりだ」

「なるほど……」

 カミーラさんはお付きの人も連れずにたった一人、壇上へ上がっていく。


「これ、拡声器みたいなものです。ラジオから声が聞こえてきますから」

 俺はマイクをカミーラさんに渡した。

「ありがとう。これに話しかければ王都中に聞こえるのか?」

「ええ。魔力の波に乗って王都に広がります」

「コウジ、もっと早く開発しておいてくれよ」

「俺が生まれる前からありましたよ。火の国以外で使ってなかっただけです」

「そうかい。随分集まってるね」

 植物園の前にはどんどん集まり、森の方まで人ごみで溢れていた。皆、茣蓙のような敷物を敷いたり、折り畳み式の椅子などを持ち込んでいる。レビィたち家庭科の授業を取っている学生たちはお茶を売り歩いている。


「エルフのカミーラと言えば、世界的に有名な薬師じゃないですか? そりゃそうですよ」

「こんなことになるつもりはなかったんだけどね。悪いんだけど背中叩いてくれるかい?」

 見れば、カミーラさんの足が震えていた。緊張しているのか。

 ポンッ。

 俺は軽くカミーラさんの背中を叩いた。


「お前は本当にナオキとミリアの子か? もっと強く張ってくれ」

「わかりました」

 

 パシッ!


「よし、いってくる!」

「お願いします!」


 カミーラさんの背中は一歩踏み出すごとに大きくなっていくように見えた。足の震えはなく、壇上に上がる頃には世界的な薬師へと変貌していた。

 自然と、周囲から拍手が起こった。

 特にエルフの留学生やマフシュなどの在校生、街中から来た一般エルフたちが壇上の近くに座っていた。


「ありがとう。別にまだすごいことは話してないよ。まぁ、今年はエルフにとって特別な年だからね。他の皆も、年の初めからエルフたちが浮足立っているのを見ていると思う。あ、こっちにもお茶をくれるかい?」

 カミーラさんはお茶の売り子に要求していた。

 丸椅子に座ったカミーラさんはお茶を飲んでマイクを片手に話し始めた。


「さて、皆に気つけ薬を配る前に、エルフという種について、それから『月下霊蘭』について少し話をさせてもらおうか。一応、そういう授業をすることになっているから、興味がない者は聞かなくてもいい。でも、興味があろうがなかろうが、少なからず生活に影響はあることだと思って話半分には聞いておいてほしい」

 カミーラさんがそう言っても、誰も立ち去ろうとする者はいない。


「そもそもエルフは精霊と人間の混血だとか、植物と人間の混血だとか、いろんな説がある。ただ、長寿であることは確かだ。この長寿というのが厄介な代物でさ。権力を手にした者が長い間ずっと権力の座に居座り続けることになった。これがエルフの歴史の中でもエルフの国が没落する原因でね。数百年経たないと制度も変えられなくなってしまった。ここ千年はハイエルフが統治していたせいで、反乱も起こったが停滞し続けた。それが、ようやく崩れたところだから、混乱するのも当然だ」

 カミーラさんはお茶を飲み、口を湿らせた。


「他種族には言い訳のように聞こえるかもしれないが、エルフの政治体制は能力ではなく血筋や里の家系が色濃く残ってしまっている。男が優位な時代が続きすぎて、家父長制を未だに続けている里がほとんどなんだ。そこに自由恋愛の物語がグレートプレーンズなど外国から入ってきて、若者たちの支持が一斉に変わった。今ここにいるエルフたちはむしろ新しい思想や制度をエルフの国に取り入れようという若者に理解ある者たちなのだ」

 座っているエルフたちの多くが頷いている。


「自分たちは理解ある大人で自由で素敵な恋愛をするという妄想に取りつかれたエルフたちを、元々外国に住んでいたエルフは恥ずかしい思いをしながら見ていた者も多いことだろう。恋物語と現実は違う。王子が娼婦と恋に落ちることは滅多にないし、勇者と田舎のエルフが結婚するなんてのは御伽話だ。そもそも会う機会が少ない。どうか現実を見て、必要以上に警戒せずにいろんな種族と話をしてみてほしい。きっと気の合う者たちがいるはずだから」

 マフシュやダークエルフなどは静かに頷いている。

 そこでカミーラさんは荷物の中から『月下霊蘭』の小さな鉢植えを取り出した。


「皆も聞いたことがあると思うが、これが『月下霊蘭』だ。エルフが発情期になると言われ、誰彼構わず惚れてしまう香りを発する奇妙な花。もちろん、エルフだって恋愛をすれば発情するので、別にこの花の香りを嗅ぐ必要はない。そもそもこんなに大きな蘭は人工的に作られたものだ。ではなぜこんな花が開発されたのか? わかる者はいるか?」

 マフシュが手をあげた。カミーラは、マフシュを指さした。

「子どもが生まれなかったから」

「その通り。子どもが生まれにくい状況が続いたからだ。停滞期が続くと、出生率がものすごく下がる。不思議なことに歴史を見るとこれはどこの種族でも同じなのだが、戦争や争いがない期間が続くと生きようとする力まで落ちてしまうからなのか、子どもを作らなくなってしまう。だからこそ、本来であれば経済的、もしくは文化的な競争があった方がいい……。つまり歴史を読むと金持ちや芸術家がたくさん子作りをするべきなんだ。だから跡目争いをする恋物語が流行る。家系と恋愛を絡め、家族が決めた愛ではなく真実の愛を探すような話だ。ここにいるエルフたちの中には金貸しの里や舞踏の里の者もいるんじゃないか」

 食事会には踊りが上手いエルフたちが多かった。


「君たちは『月下霊蘭』を作った者が考えたライフデザインの通りに人生を歩んでいる。エルフという種のことを考えるならば間違っていない。幸せな人生なら全く問題はない。ただ、ここにバイアス……、偏りや圧力が生まれるとそのデザインは大きく歪んでしまう。つまり子を成し育てるという目的以外のことが入り込んでしまったら……? なんだと思う?」

 カミーラさんは、学生たちに考えさせるように見回した。


「山賊か!?」

「人攫いだろ!?」

「いや、人買いだってそうじゃないか!?」

 エルフたちが声を上げる。


「君はどう思う?」

 カミーラさんはラジオの近くにいたウインクを指さして聞いた。

「私? えーっと、モテるかどうかじゃないですか?」

 ウインクがそう言うとカミーラさんは笑っていた。


「やっぱり他種族と話した方がいい! ちゃんと別の視点ができるから。モテるかどうかかぁ……、それもまた一つの真実かもしれない。でも、一応、ここ数年私が調べたことを報告させてほしい。今年『月下霊蘭』が花咲くことはわかっていたから、歴史学者や考古学者たちと一緒に文献から遺跡までいろいろと調べてみたんだ」


 そう言えば、考古学者のウタさんが調べていた。カミーラさんの調査の一環だったのか。


「エルフの国にはいくつか国宝がある。風の精霊である龍の槍なんかがそうだけど、本来は『月下霊蘭』も国の宝花だった。花の精霊を信仰する里で作られ、それこそ人口が減った里に植えて子宝を願う花だったようでね。それがいつの間にか国中に咲き始めた」

 エルフたちから「やはり山賊か?」「盗賊の隠れ里?」などの声が上がる。

「数が力だった時代は、『月下霊蘭』によって里のパワーバランスも変わったらしいから、誰かが盗んだのかもしれないし、ただの嫉妬やモテたくて盗んだのかもしれない。とにかく各里がそうして人口を増やし、力をつけ、60年に一度の抗争まで起こった。森の精霊たちが闊歩し、呪い呪われ、毒の沼までできて解毒薬を作った者たちは英雄とまで謳われた時代があったんだよ。『月下霊蘭』はすでに必要がないくらい、大森林にはエルフが溢れた。そんな時代の中、ようやく千年前、魔法の技術が高いハイエルフが出てきて抗争は突如終わりを迎える。ハイエルフたちは反乱を恐れ、『月下霊蘭』を根絶やしにしていったと歴史書には記録されている」

「でも、今あるじゃないですか!?」

 ダークエルフの学生が声をあげた。


「歴史の嘘だよ。根絶やしにできなかった。外国に持ち出した者たちもいるし、そもそも『月下霊蘭』は条件を満たさないと育たない花で、無理やり育てようとすると巨大化したり魔物化してしまうんだ」

「この森の地下にあったものは巨大化してました」

 俺は思わず口にした。

「そうだろうな。学校みたいないろんな思いが詰まったような場所だと、巨大化してしまうだろう。その分、香りは薄くなる。先ほども言ったが、花の精霊を信仰する里で作られた花だからね。『月下霊蘭』はシンメモリーズを集めるんだよ」


 シンメモリーズは、恨みや後悔の念が魔力と交じり合った魔物の卵で、白く透明な玉だ。俺も世界樹と、バルザックさんがいる墓くらいでしか見たことがない。


「さて、そろそろ気づいたエルフもいると思うが、『月下霊蘭』が花咲けば祖先の魂もやってくる。世界樹を目指してやってくる祖先たちからすれば、依り代になるんだね。実際に、『月下霊蘭』が咲いたときに身に宿した子が、英雄の生まれ変わりだったという話はいくつも見つかった。もちろん、悪用しようとする者たちはいる。今、山賊や人攫いになって使命を果たそうとしているエルフたちは、ハイエルフの復活を企んでいるのさ。この中に死者の国出身の者がいると聞いたのだけれど?」

 ミストが手をあげた。


「質問があるんだけど、いいかな?」

「はい。私に答えられることなら……」

「ハイエルフが復活する可能性はどれくらいある?」

「ありません。少なくとも今は無理だと思います」

「どうして?」

「呼び出す人たちが多ければ多いほど魂は分散しますから、ハイエルフにはならないと思いますよ。それにまだ強く恨んでいる人も多いと思いますし、無理に復活させようとすると魂が引き裂かれてしまうんじゃないかと予想します」

「よかった。それを聞いて安心した。聞いての通りだ! 未だ使命を胸に秘めていたエルフたちよ。ラジオの声が届いているか!? その使命には意味はない! 己の人生を楽しめ!」

 カミーラさんは高らかにコップを掲げて、お茶を飲み干した。


「授業に戻ろう。エルフだから、種族の特性だから、里の掟だからと、学ぶことを諦めてはいけない。別に誰かに宣言する必要はない。その胸に秘めた意志こそ、自分にとって最も価値があるのだから。自分が踏んだその道が、後世に語り継がれる道となるかもしれない。かつて私はエルフの国の大罪人だった。今では薬学の里の長だ。誰かのライフデザインから外れても気にすることなんてないんだよ。それが親だとしても、あなた方は親の人生を歩んでいるわけではないのだから。例え、花の香りに絆されても、対処法はいくらでもあるものさ。さぁ、気つけ薬を配るよ! エルフじゃなくてもこれを持っておいてほしい。もし騙されているエルフを見つけたら、鼻に突っ込んであげて!」


 カミーラさんの授業は大盛況のうちに終わった。

 それから、ほとんどの学生は気つけ薬の棒を首から下げることになる。


「はぁ、全然まとまらなかったわ!」

 授業後、カミーラさんは笑って俺にお茶のおかわりを要求していた。

「でも、エルフと『月下霊蘭』の関係も、対処法もわかりましたよ。どういうバイアスがあるのかもなんとなく……」

「それならよかった。甘いものない?」

「疲れたんですか?」

「いや、子どもたちが苦い薬を飲めないのよ。甘いお菓子に入れて食べさせようとしているんだけど、なかなかなくてね。それを探すためにって里を出たから、持って帰らないと怒られる」

「聞いておきます」

「助かるよ」



 翌日から学校の授業が二日間、臨時休校となった。

 特待十生は王都の警備に駆り出された。どこの店も大盛況で、空の酒樽が店の外にまで出ていた。ただ空き瓶やゴミなどは、ほとんど見られない。通りの各所にゴミ袋があって、そこに入れていた。

「パレードは清掃駆除業者の仕切りなんだから、そりゃそうだろ」

 アグリッパはそう言っていた。街に出ている学生たちもゴミがあれば拾ってゴミ袋に入れている。


 さらに冒険者ギルドに呼ばれ、セスさんの会社の人たちを手伝うよう緊急指令を出された。通りに客席を作り、バルーンを飛ばし、色付きの街灯を組み立てた。作業量は異常だが、女性作業員たちは手慣れていた。


「シェム! シェムじゃないか!? 学校で一番だったって!?」

「聞いたよ! ダンジョン作ってるらしいね!」

 街中で作業をしていたら、シェムが女性作業員に絡まれていた。

「知り合い?」

「うん。親代わりみたいな人たち」

 どうやらシェムにもゴーレムじゃない親がいたらしい。

 ちなみにダイトキはオエイさんに掴まり、チラシ配りをしている。


「パレードはもう明日かい?」

 気づけばいつの間にかパレードが迫っていた。

「そろそろ看板が来る頃だね」

 女性作業員たちは日が沈む空を見上げていた。


 作業も終わり、総合学院の自室へ戻ると、テーブルで3人が夕飯を食べていた。食堂は混み過ぎているから、調理場の料理人たちが持ってきてくれていたらしい。


「ワイバーンの肉が足りなくなるかもしれないって」

「わかった。後で獲りに行くよ」

「それから、ベッド使われているよ」

「え?」

 

 振り返ると、俺のベッドに母さんが寝ていた。


「母さんだ。どういうこと?」


 ルームメイトに聞いてもわかるはずもなかった。


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