『遥か彼方の声を聞きながら……、2年目』4話「エルフの問題」
翌日、俺は歴史書を教室へ運んでいた。レミリアさんに呼ばれ、「ちょっと運ぶのを手伝って」と言われたからだ。レミさんもいろんな場所の歴史書を持って、廊下を歩いていた。学生たちは一斉に脇に避けてくれる。
「あの、俺も一応、学生なんですけど」
「知ってるわ。そうじゃなかったら、私もこっちに来てないもの。エルフの英雄の像を壊したって?」
ウタさんが密告したらしい。
「ちょっと傷ついただけですよ」
「古代についてしっかり教えといてってウタに言われてしまったわ。でも、トキオリさんに聞いてるでしょ?」
「何をですか? 研究の話はほとんどしませんよ。うちの家族はあんまり仕事の話を家でしないんですよ」
「あ、そうなの? でも、竜の学校出てから、こっちに来てお父さんについてわかったことがあるんじゃない?」
「世界的に知られている変人であることはわかりました」
「息子からしたら、変人か。コウジ、年末の学生生活は忙しくなるの?」
「体育祭も終わってないのに年末は考えられないですけど、文化祭は去年できなかったんでちゃんとやりたいと思ってるんですけどね」
「そう。じゃ、やっぱり遡っていく方がいいのかなぁ……。ごめん、古代の歴史書要らなかったかも」
「ええ!? もうすぐそこが教室ですよ。ほら学生たちも集まってるし」
「あら、待たせちゃ悪いものね。じゃあ、とりあえず教室に運んで、出たとこ勝負で行きましょう」
レミさんは思い切りがいい。昔は考古学にあまり理解が薄い人たちが多かったから、発掘するにはいろんな許可が必要だし、実績もない時は大変だったとか。だからか、「なんでも思い切りやってみた方がいいわ」というのがレミさんの口癖だ。
教室では、世界各地からやってきた学生たちが集まり、レミさんの授業を待っていた。
「コウジ、なんかやった?」
「昨日のラジオでちょっと宣伝したんですよ。ウタさんが、お祖母ちゃんの授業を取ってあげてって言うから」
特待十生は、ほぼ来ているしルームメイトに在校生も派閥は関係なく来ている。
「でも、これはちょっと集めすぎよ。言っておくけど、そんなに立派な授業をするつもりはないからね」
そう言いながらもレミさんは教壇に立ち、学生たちの前に出ていった。
黒板には自分の名前を書いていく。
「レミリア・ホモス・レスコンティです。グレートプレーンズからやってきました。考古学が専門だけど、歴史にちょっとでも興味を持ってくれたらうれしいわ」
「先生! 歴史を知っているとモテますか?」
エルフの留学生が手を上げて周囲の笑いを誘っていた。
「どうかしら……。まぁ、今はエルフにとっては発情期だものね。それが一番興味あるか……、よし!」
レミさんは教壇に置いた歴史書を脇の棚に戻した。
「やっぱり、この授業は歴史を辿るのではなく、遡ることにします。今自分たちや周りの社会がどうしてこうなっているのかわからない人も多いと思います。だから、どうしてエルフが今モテなくなっているのかも見えてくると思うわ」
「本当に!?」
留学生たちが驚いていた。
「ええ。私より100年も年上の学生もいるでしょ?」
エルフたちは長寿だ。皆頷いている。
「なのに、モテないのは、この国にいる人々がどういう気持ちでいるのかわかっていないからです。もっというとハイエルフ統治下の偏見を未だに引きずり続けているからです」
レミさんは黒板に大きく「偏見」と書いた。
「世界は偏見に満ち溢れている。もしかしたら他の種族は知らない人もいるかもしれませんが、エルフは皆、薬やハーブの知識があると思ってませんか?」
「違うのか!?」
窓辺の席にいたアグリッパがマフシュを見ていた。マフシュは大きく溜息をついている。
「エルフの皆さん、よく周りの反応を見てください。これが偏見です。これはエルフの国の中でも外国に行ける者は限られていたということを知りません。もっと言うと、あなた方が身をもって知っている知識階級や里、つまり職業による格差があったことを知る人は外の世界にはほとんどいません」
先ほどまで笑っていたエルフの留学生たちは、真剣にレミさんの話を聞き始めていた。
「大森林の世界樹が燃えてから20年ほど経ちますか? エルフの国は大きく変わりましたね。まさに歴史が動いた。南のダークエルフのウェイストランドから来た学生もいると思います。あなたはウェイストランドから?」
目の前で聞いていたダークエルフの学生に聞いていた。
「そうです」
「この20年の間にウェイストランドでは何が変わりましたか?」
「作物の交易が出来るようになりました。ルージニア連合国や東の群島、小人族の国・シャングリラとも……。もちろん、アリスフェイ王国とも」
「それまでは?」
「エルフの国から搾取されていた」
「なぜ搾取されていたのか、どうして戦わなかったのか疑問に思う他の国の学生たちはいるかもしれませんが、何百年も戦っていました。でも、野菜の種も知識も宗教もエルフの国に奪われていたとしたら、どうです? ダークエルフがエルフを偏見の目で見ることは仕方のないことに思えませんか?」
「今はそこまでエルフを酷い民族だとは思っていません。ハイエルフは死にましたから。エルフもそれぞれ違うことがわかりましたし……」
ダークエルフの学生が答えた。
「そうですね。関わらないと知らないまま、迫害してきた種族だと思っている老人もいるんじゃありませんか?」
「うちの両親たちは絶対に関わらないと思います」
「エルフの学生たちはこの学校に来るまでダークエルフと関わったことはありますか?」
留学生たちは首を横に振っていた。誰も関わっていないのか。国は隣同士でも、関わる者は一部だ。
「わざわざ恨まれている種族には近づかないからでは? 罪悪感がある状態ではなかなか商売も成り立ちませんからね。そうして交流が少なくなると、また偏見が生まれてきます。ぜひ、エルフの皆さんはこの学校にいる間にダークエルフと話してみることを勧めます! さて、こういったエルフとダークエルフの間にある偏見は、彼らの間にだけ存在するのでしょうか?」
レミさんはゴズを見た。いや、多くの魔族の学生たちを見た。
「奇しくも去年、この学校の文化祭で起こった事件は、野生の魔族と長年魔族への偏見と闘ってきた校長による反乱とされています。真実はどうだったのか、外部の人間からすればわからないことは多い。検証しないといけないことも多いでしょう。ただ、わかっている偏見は、20年前まで魔族は魔物としか呼ばれていなかった。どれだけ賢い魔王が生まれても、魔物だったわけです。でも今は魔族として他の種族と同じように生活し学んでいますね。ここに歴史上の特異点がある。つまり、歴史を変えた奴らがいるんです!」
レミさんは黒板に『コムロカンパニー』と殴り書きのように書いた。
魔族の学生たちが自分たちの青いバンダナや青いネックレス、青い腕輪を掴んで聞いていた。
「かくいう私の娘婿も魔族で、偏見をぶち壊された者の一人です。グレートプレーンズ出身の者もいるでしょうし、火の国出身の学生もいるでしょう。彼ら、コムロカンパニーの偉業を知っている人たちは多いと思いますが、ただの清掃駆除会社にも関わらず、現代世界史においてこれほど名前が出てくる会社もないと思います。彼らは世界のあらゆる職業差別や種族差別と闘い、偏見という人と人の間にある壁を壊して回った。北半球と南半球にあった壁すら壊すような人たちです。歴史を学ぶ者として、この時代の流れは止めることはできないと予告しておきましょう」
レミさんは、世界地図を黒板に描いていった。
「ここはアリスフェイ王国。あらゆる人種を受け入れる国の王都で、世界で初めて人類が認めた勇者セーラを輩出した学校。世界中からあらゆる種族が来ます。その社会の中で未だに獣人は奴隷だったとか、魔族を見た目で判断するような視線を向けるエルフがいるかもしれません。その人たちのせいであなた方は他の種族から逆に偏見の目で見られているのです。留学生で他に知り合いがいないのはわかりますが、エルフ同士で固まり、他の種族と関われなくなっているのは魔族や獣人を種族ではなく一人の人間として見れなくなっているからではありませんか? ぜひ自分の偏見の壁を壊してみてください。他の地域でコムロカンパニーの仕事について聞くのもいいでしょう。ちなみに、ここにいるコムロカンパニー社長の息子は、父親の仕事を何も知りません。誰か教えてあげてください」
なぜか最後にレミさんは俺に振ってきた。
「だって、家で仕事の話なんかしないじゃないですか……。いや変人だって言うことは知ってますよ」
「ちょっとコウジ、お前どうして俺たち魔族が青いアクセサリーを身につけているのか知らないのか?」
ゴズが聞いてきた。
「ボウさんがコムロカンパニーの臨時職員だったことは知ってますよ」
「ちょっと待ってくれ。俺、火の国出身なんだけど、災害対策マニュアルを作ったことを知らないのか?」
別の学生が聞いてきた。
「それは初耳です」
「私はルージニア連合国・フロウラ出身なんだけど、道路公団を作ったことくらいは知ってるよね?」
「なんですか、それは?」
学生たちからの視線が痛い。
「こんな風に自分の国では当たり前のことでも、他国の人やナオキ・コムロの息子でもこの程度しか知らないんです。せっかくこんなに世界中の人たちが一堂に会す学校もないのだから、お互いを知りましょう。そしてどんな歴史を持っているのか知ることで見えてくることもあると思います。それはこの先どんな人生を送るにしてもきっと面白い経験になるでしょう。歴史学者からのアドバイスだと思って聞いてみてください。それでは、また次回」
レミさんは教壇から下りて、歴史書を俺に持たせた。
「はぁ、どうにかうまくいったわね」
「俺を犠牲にしましたね?」
「成り行き上、そうなっただけよ。諦めて少しは勉強しなさい」
「知ったところで、別にコムロカンパニーに入るわけでもないのに……」
そう言いながらレミさんの後ろをついて行っていたら、廊下で革パンのエルフに声をかけられた。
「おい」
「ああ、風呂で会った……」
「お前、本当にコムロカンパニーのことを何も知らないのか? 燃えた世界樹のことも、風の勇者のことも?」
「枯れてたから盛大に燃えたって話は知ってるよ。風の勇者ってブロウさんのこと?」
「どうしてそうなったとかは知らないってことか?」
「そうだね。あんまり突っ込んで聞いたことなかったな」
「レミリア先生、これが普通の学生なんですか?」
「そうよ。人間って案外自分の国のこと以外興味ないの。もっと言えば、自分の国のこともよく知らない者もいるわ」
「そうだったのか……。じゃあ、もっとエルフをアピールしないとダメじゃないですか?」
「そうね。どんどんエルフの文化を教えてあげていった方が面白いと思うわ」
「ようやく自分の役割がわかりました! ありがとうございます!」
革パンのエルフはそう言うと、窓から飛び出して風のように消えていった。
「器用ね。彼、友だち?」
「いや風呂仲間ですかね」
その後、俺はなぜかルームメイトたちに怒られた。ナオキ・コムロの息子がコムロカンパニーの偉業を知らないなんておかしいという。
「でも、皆だって全部は知らないだろ?」
「知らないけど……!」
「今まで、知ろうとは思わなかったの」
「言いたければ本人が話すと思って。正直、そんなに歴史が変わるようなことをしたのかな?」
「したわ! 死者の国がなくなるところだったのよ!」
「そうか」
「ゼファソンのモデルたちはほとんど奴隷の娘とか捨て子が多いの知らないの?」
「知らないよ。ちょっと待ってくれ。俺にぶつけてもしょうがないよ。知らない人は知らないんだから。せっかくだから番組にしようよ。地方の種族によっても話が変わってくるかもしれないしさ。俺は親父たちが何をしたのか教えてもらえるし」
「お前は、本当にラジオを作ってよかったなぁ」
グイルは感心していた。
コンコン。
「ちょっといい?」
マフシュが意味のないノックの後、ラジオ局に入ってきた。
「俺もいいか?」
アグリッパも窓から入ってきた。
「私はエルフに関わることだけど?」
「俺もだ。同じリストか?」
2人ともラジオ局のテーブルに自分たちの持ってきた紙を広げた。
「違うようだな」
「そうね」
「なんですか? お二人とも」
「エルフが作った優秀な男女のランキング表よ。そっちは?」
「呼んだら来るエルフの娼婦の出勤票だ。留学生の名前もある。貴族の子息たち向けのデート代行とは書いてあるが、こういうものが貴族連合を中心に出回ってる」
「なんなのそれ?」
ウインクの言うとおりだった。
「ラジオで何をしろって言うんですか? 娼婦の宣伝でもしろって言うんですか?」
ミストが、ものすごい冷めた目でアグリッパを見ていた。
「注意喚起だ。もう代金を払ってる奴がいるかもしれないけどな。そっちはなんだよ」
「名前の横に書いてある通り、貴族の名声、強さ、能力なんかが書いてあるわ。要するにエルフたちだって誰とでもいいわけじゃなくて、ちゃんと利益がある人と結ばれたいと思ってるってことよ」
「なんすか、それ?」
今度はグイルが呆れていた。
「俺たちにとってはどうでもいいんですけど、エルフの発情期だからこういうことが起こってるってことですよね?」
「そういうこと。でも、ちなみにラジオ局の3人はリストに入っているわよ」
俺もウインクもミストも、リストに名前を書かれていた。
「俺だけ凡人ってことですか!?」
「こんなリストに名前を書かれたくないわ!」
「デート代行ってなに!? 呼べば来るって何で選ぶんです? あと、名前の横に書いてあるバストのサイズはなに!? 男っておっぱいしか見てないんですか!?」
3人とも何かしらの理由で怒っていた。
「でも、これエルフの中でも一部ですよね?」
「当たり前でしょ? 一部じゃなかったら元から王都に住んでいたエルフたちが暴れるわよ」
マフシュもキレている。
「いや、それが王都にエルフが増えてきてるんだ。留学生以外にもな。エルフ絡みの事件も増えているのは事実だ。クーべニアじゃ、冒険者ギルドの療養所をエルフの奴隷屋が乗っ取った事件もあるくらいで、うちの爺様も親父もピリピリしている」
アグリッパはアグニスタ家という軍人一家で、王都の秩序を守っている。
「でも、俺たちが注意喚起しても、こんなのやる学生はいるでしょ?」
「こんな娼婦が学校にいたら困るよ。皆、勉強どころじゃなくなるわ」
「恋路の邪魔をしても野暮だしなぁ」
「まず、こんなランキングとか付けてる奴らと付き合いたいですか?」
かなり疑問がある。
「貴族は、こういう上とか下とかあるのに弱いんだよ。上位に行くとわかりやすくモテるしなぁ」
「まともな出会いってないんですかね? いや、出会いは何でもいいのか。例え優秀だとしても、気が合わないような人と長い間一緒にいたいですかね?」
「あ、エルフの発情期は今年だけだから、今年さえ乗り切ればいいと思ってるのよ」
「じゃ、今年付き合っても捨てられる人が多いってことですか?」
「そうよ。だから今の60歳くらいのエルフを見てみなさいよ。婚外子がたくさんいるから」
「確かに、その年代でエルフの血を引く裁縫屋って多いわ」
ウインクが教えてくれた。実績もあるということは、止めるのは難しいのか。
「とりあえず、貴族連合には家系の汚名を着せることになると注意喚起をしましょう。それからエルフの娼婦に関しては、仕事は外で然るべき場所でやりましょうと注意を促しましょう」
職業に貴賤はないが、学生は学業が本分だ。学校は学ぶ場所だろう。
「それで、止まる?」
「恋は盲目って言うしなぁ」
「この学校、学生結婚は多いよ。年代もバラバラだし、上級生になると特にね」
マフシュはすでに付き合っている人がいるのか。
ドンドン、ガチャ。
「おい、あのエルフどもをどうにかしてくれ! 」
ドーゴエもやってきた。
「訓練の邪魔をしているのに笑ってやがる。ゲンローに言って拘束具を作ってもらえないか?」
「お、皆、集まっているな……。実は……」
ゴズも来た。
「エルフの留学生たちが困っているようなんだ。一時間いくらか聞かれるらしいんだが、何か知っている者はいないか?」
皆、エルフ絡みの問題を持ち込んでくる。
「皆さん、ここはラジオ局で、問題を持ち込む場所じゃないんです。一応、学校での問題は放送しますけど、事務局か教員室に行って解決してもらえませんか?」
とりあえず先輩達を追い出した。
「コウジ、どうするのよ?」
「知らん」
「なんか企画を考えればいいじゃない?」
「もう体育祭があるだろ? 頑張ってる姿見て、素敵だな、付き合いたいなって思えばいいじゃないか? これ以上何をしろって言うんだよ」
「飲み会的な何かじゃない?」
「素敵なサムシングが待っているようなさ」
「そんな都合のいい企画なんか……、ないこともないのか」
火の国のラジオで、リスナーたちが集まる企画を聞いたことがある。気に入った人に告白して付き合い、結婚までする人たちもいた。それを学生でやっていいのかどうか。
「そもそも学校にいる時点で、出会いだらけだろ? 魔道結社とか貴族連合なんて派閥まで作ってるんだしさ。でも、それが全部学業に向いているってだけで、パートナー探しに向ければいいんでしょ? 友達同士で誘って食堂で飯でも食べればいいじゃない?」
「いや、それじゃあ、その人となりは見えてこないんじゃない? 結局、お金のあるなしとか、家柄とか頭の良さくらいで」
「それじゃ、ダメなの?」
「付き合うとなったら、頼りになる方がいいんじゃない? コウジだってめちゃくちゃ足手まといの彼女は嫌でしょ」
「別に彼女とダンジョン探索しないだろ? いや、ダンジョン探索させればいいのか。そしたら頼りがいがあるかどうかはわかるよ」
「それは、コウジがモテるだけでしょ。コウジは好きな人ができたりしたことないの?」
「だいたい皆好きだよ」
「そうじゃなくて恋愛対象として?」
「恋愛って言われてもなぁ」
「あの娘のことを考えすぎて夜眠れない! みたいなことはなかった?」
「ないね! だいたい寝れる」
「会ったらドキドキする人とかは?」
「死にかけの老人は大丈夫かって心配になってドキドキするけど」
「そうじゃなくて、興奮してくるとか」
「性の対象ってこと? サキュバスとかアルラウネとかはめちゃくちゃエロイなって会う度思ってるよ」
「なんか違うんだよなぁ」
「好きなタイプは?」
「できるドワーフ。嫌いなタイプはすかしたエルフ」
「嫌いなタイプまで聞いてないけど。じゃあ、魔道具学のアーリム先生はタイプなんだ」
「あー、天才は苦手」
「なんだ、こいつ。すげぇ面倒くさいよ」
「とりあえず、さっき言ってた企画をラジオで呼びかけて適当に手紙が来た人からランダムで会わせていけばいいんじゃないの?」
「そうしよう」
学生たちには、食事会とダンジョン探索でどうにか彼氏彼女を作ってもらうことにした。
「ちなみにウインクはどういう人がタイプなの?」
「ストイック太郎みたいな人。私に食事を合わせてくれるとなおいい。できれば料理人」
「ミストは?」
「死んでなければ何でもいいかな。あ、骨が丈夫そうな人は興奮するかも」
「俺の好きなタイプはおっとりした熟女。包容力があって、経済力もあると嬉しい」
グイルが勝手に喋っていた。
その夜、両親にどうして結婚したのか通信袋で聞いてみた。
『タイミングだ。そういうタイミングが来てた』
『あと勢いね。勢いは大事。変に好きなタイプとか決めない方がいいわよ。この流れはこういうことだなってわかるから』
「それ、そんなにはっきりわかるもんなの?」
『『わかる』』
ちなみにトキオリ爺ちゃんとシャルロッテ婆ちゃんに聞いたら、『選択肢が他になかった』と言っていた。時代が違うのかもしれない。




