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駆除人  作者: 花黒子
~海へと繰り出す駆除業者~
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38話

 作業部屋に戻ると、ベルサは俺達が出て行った時の姿勢で固まったように本を読んでいる。

 呼吸してないんじゃないか、と思って近づいてみたら、鼻をスピースピー鳴らしていたので、生きてはいるようだ。


 アイルを迎えに行ってみると、ボロボロにされて砂漠に倒れていた。

「俺のツナギなんだけど!」

 俺のツナギはところどころ破け、すっかり血まみれで砂まみれになっていた。

「すまない。私はもう…ダ、メ…だ……」

 アイルは、ガクッと効果音が鳴ったかのように、意識を失った。

 傷薬をぶっかけても、眠ったままだったので、きっと疲労困憊だったのだろう。

 

 アイルを担いで、作業部屋に戻ると、ベルサとマルケスさんが魔物について語り合っていた。

「やはり、ダンジョン産の魔物は実体がないんですか?」

「うん、ないだろうね。うちはもう、森もあるし、巨大な魔物の肉も行き渡ってるから、ほとんど実体を持ってるね。勝手に繁殖もしてて、困ってる場所もあるんだ。あ、おかえり」


 マルケスさんがこちらを見て、声をかけた。


「ただいまです。あのぅ、マルケスさん、一晩泊めてもらえないですか?」

「ああ、それは構わないよ。いくらでもいてくれていい。ベルサちゃんとも話がしたいし」

 マルケスさんは快く、承諾してくれた。

「あ、そうだ。ナオキくん、害獣駆除を頼めるかな?」

「ええ、大丈夫ですよ」


 簡単に引き受けてしまったことを後悔したのは、駆除する場所に着いた時だった。


 極寒。

 一面、銀世界。

 地面から舞い上がった雪が、風に吹かれて俺の顔面にたたきつけられる。

 マルケスさんは初め食料の貯蔵庫を作っていたはずが、広くなってしまったと言っていた。


「さすがにハーフパンツとTシャツでは行けない」と言われ、ワイルドベアの毛皮を着込んでみたが、隙間が多く、冷たい空気が入り込んでくる。

 このままでは死ぬ。

 一旦、作業部屋に戻って、寝ているアイルからツナギを脱がし、クリーナップ後、破れた箇所を縫い合わせ、耐寒の魔法陣を縫っていく。


 アイルは日頃、テルが作ったいい匂いの石鹸を使っているせいで、妙にツナギからいい匂いがして、なんだか腹が立った。アイルのくせに!

 裁縫スキルを取っていないので、やたらと時間がかかったが、マルケスさんはお茶を飲みながら、ベルサと話をして、待っていてくれた。

 

「待たせてしまって、すみません。ようやく準備が調いました」

「いやいや、急だったんでね。それで、駆除してもらいたいのはスノウフォックスという魔物でね。ちょっと繁殖しすぎちゃったんだ。糞がいい肥料になるから、放っておいたんだけど、冬眠中のホワイトグレズリーを掘り返して襲ったりしているみたいなんだ。本来は、スノウラビットなんかを捕食するんだけど、スノウラビットの数も減っちゃってね」

「わかりました。やってみます」

「んじゃ、作業部屋で晩飯作って待ってるから、風邪引かないように無理しないでね。ダンジョンで風邪が流行ると大変なんだ」

「了解です!」


 去っていくマルケスさんを見送って、とりあえず、拠点となるかまくらを作ることに。

 雪山を作り、踏んで固めて、穴を掘る。

 中にIHの魔法陣を描き、暖める場所を作った。

 この階層は、極地をイメージして作られたらしく、ブリザードも度々発生するという。


「ちょっと凝りすぎたかな」


 3ヶ月に一度、上層階にある溶岩地帯とのエアーダクトを開け、夏にするのだとか。

 その際、小さな白い花が一斉に咲き乱れ、キレイなのだとか。

 ただ、その白い花は眠り薬に使われる花だったことが、後にわかったらしく、「危うく死ぬところだった」とも言っていた。

 

「さてと…」

 一面の雪で、魔物がいるとは到底思えないのだが、探知スキルでは多くの魔物が雪の中に隠れていることがわかる。


 基本的に、魔物の身体が白いので、非常に見つけにくい。

 何を食べるのかわからないが、とりあえず、アイテム袋から、ワイルドベアの肉やフィールドボアの肉を取り出し、麻痺薬や毒薬に漬け込んでいく。

 漬け込んでみたものの、すぐに凍ってしまった。


 かまくらの外に木の板を敷き、その上にIHの魔法陣を描いて、温めながら漬け込んだが、薬効が飛んでいったのか、あまり匂いがしなくなった。

 周囲で仕掛けてみたが、すぐに肉が凍って、スノウフォックスが食べるのかどうか、わからない。


 続いて、落とし穴を掘ってみた。

 が、すぐに雪で隠れてしまって、どこにあるのかわからなくなる上に、雪が崩れてきてしまって、効果がないことがわかった。


 トラバサミ的なものを作ろうかとも考えたが、違う魔物もかかってしまう可能性が高いので、止めた。


「やっぱり、虱潰しか」

 見つけ次第、魔法陣を描いて、殺していくしかなさそうだ。

 そう思っていると、雪原の向こうから、白い波が押し寄せてくるのが見えた。

「ブリザードか!」

 急いで、かまくらに戻ると、中にスノウフォックスが2匹、入り込んでいた。

 ナイフでさっくり殺し、ブリザードが去るのを待つ。


 スノウフォックスは俺に噛み付いて、抵抗していたようだったが、ツナギを着ていたため、特に痛くもなく、腕力に任せて押さえつけて、首を一突きだった。

 死んだのを確認して、アイテム袋に入れる。

 あとで、アイルに解体してもらおう。


「罠はこれで行こう」



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― 新着の感想 ―
[一言] 「危うく死ぬところだった」とも言っていた。 マルケスさん、不死の身体持っているのだから冗談だったのですかね
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