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駆除人  作者: 花黒子
~海へと繰り出す駆除業者~
32/501

32話

 

「なるほどね。魔物に利他の精神なんかないからな」

 起き抜けにベルサから説明を受けたアイルが納得している。


「え? アイル、わかってんの?」

「ナオキはわからないのか? ああ、そうか。ナオキは教会に行かなくても自分で傷を治せるからな」

 アイル曰く、傷薬がないときは教会の僧侶に戦闘で受けた傷を治してもらう時があって、くどくどと説教をされるらしい。


 その中で利己的じゃなく、利他の精神で、冒険者同士助け合え、と言われるのだとか。

 利己的な冒険者はすぐに魔物にやられる、とどこの教会に行っても冒険者は肩身の狭い思いをしながら、聞くしかないのだという。


「いまはなんとなくでいい。とにかくこの島でダンジョンを探してみよう」

 パンにハチミツを塗っていたベルサが言う。

 食事の用意は持ち回りにした。

 ハーブティーは俺しか淹れられないらしい。

 お湯入れるだけだ、と説明したが、アイルは茶葉を大量に入れ、ベルサは貧乏性なのか、恐る恐る入れていたので、時間がかかりすぎる。

 

 朝飯を済ませ、ダンジョンを探すことに。

 冒険者カードの裏を何気なく見ていたアイルは、巨大な魔物を倒したことでレベルが上ったと喜び、しばらく島に滞在することを承諾した。


 船に使う木は、近場の木を切り倒し、風魔法の魔法陣を描いて乾燥させる。

 通常、一ヶ月や二ヶ月くらい乾燥には必要だが、この方法なら、一週間もかからない。

 一気にやってもいいのだが、木が割れる、とベルサが渋い顔をした。

「私は一ヶ月でも二ヶ月でも、この島を探索したほうがいいと思うけどね」

 ベルサはすっかり、この島の魅力に取り憑かれているようだ。


 全員の服に、耐衝撃や耐魔法などの魔法陣を描いて、ジャングル奥深くへと出発する。

 すぐに珍種の植物や虫を見つけたベルサに付き合いながら、アイテム袋に入れられるものはアイテム袋に入れていく。


 魔物や魔獣はアイルが担当すると言って、俺の探知スキルに引っかかった魔物を殲滅していった。

 島のほとんどの魔物は通常のサイズよりも大きく、経験値の実入りもいいらしい。

 アイルは体術や剣術のスキルを伸ばし、人外の動きをしている。


「空中を蹴ることが出来ると、便利だぞ」

 俺とベルサにも体術スキルを取るよう言ってくる。

「俺たちは人のままでいたい」

「そうかそうか」

 そう言って、アイルはにやにやと笑っていた。


 バトルジャンキーは放っておいて、昨夜、マスマスカルがフィールドボアの死体を運んでいった洞窟まで向かう。

 

「ここが、ダンジョンか」

 地面に空いた穴を見ながらベルサが言う。

 俺は一応持ってきたオデコに装着したライトを点けたが、ついに電池が切れたのか明滅した。


 思えば、前の世界から持ってこれたのはツナギとこのライトくらいだった。

 大事な時にしか使ってこなかったつもりだったが、ついに電池が切れたか。

 などと感慨にふけってみたが、電気魔法の魔法陣を描けば復活するし、光魔法の魔法陣を使えば、もっと明かりも強くなる。


 そもそも、探知スキルがあるので、俺自身は必要としていなかった。

 二人のために、ライトの裏に光魔法の魔法陣を描き、定着させるのも、魔道具スキルがあるので、一瞬だ。

 太い光線のような明かりをオデコから照射して、ダンジョンの穴に飛び込んでいく。

 

 落下している最中に、コウモリの魔物であるショブスリが襲ってきたが、空中を移動できるようになったアイルの敵ではなかったようだ。

 ショブスリは倒れると、その身を一瞬輝かせて、ガラス球が砕けて散るように霧散し、魔石とコウモリの羽を落とした。


「ダンジョンで間違いなさそうね。ダンジョンでは討伐部位のことをドロップアイテムと言うのだ」

 ベルサが説明しながら、魔石と討伐部位を回収した。


 ドロップアイテムをアイテム袋にしまい、ダンジョンを探索する。

 探知スキルで下の階層や、周囲を探ると、魔物の数が尋常ではない。

 いちいち倒してられないので、混乱の鈴を使おうとしたが、ベルサとアイルに止められた。

 マスマスカルくらいならいいが、強い魔物が進化すると厄介なので、面倒でも倒していった方がいいという。


 確かに、どんな魔物が出るかわからない。

 二人の言葉に従い、混乱の鈴をしまい、せっかくなので新兵器を試すことにした。


「新兵器だと?」

 アイルが訝しげにこちらを見てくる。


 俺がアイテム袋から取り出したのは、マスマスカルやバグローチを駆除した時に使った液体を散布するポンプ。

 今回は容器を大きくし、背負えるようにした。

 さらにノズルを持ちやすくし、広範囲に渡って散布できるように調節も可能だ。全て、工作技術と魔道具制作スキルの恩恵である。

 

 近づいてくる手頃なポイズンマスカルを実験台に、液体を発射。

 ポイズンマスカルは始め何をかけられたのかわからない様子だったが、すぐに絶叫し気絶した。


「島サイズの大きなマスマスカルも、これこのように」

 深夜のテレビショッピングのように、ナレーション付きでポンプの優位性を二人にアピールしたところ、

「何をしたんだ!?」

「何を!? ポイズンマスカルに毒は効かないというのに!」

 すごい勢いで、問いつめられた。


 液体はジャングルで見つけた、唐辛子の仲間を水につけて、濃縮したもの。

 カミーラの薬学の本に載っていた植物だったので、昨夜、試しに作ってみたのだ。

 毒に耐性があろうが、辛いものは痛いのだ。

 気絶したポイズンマスカルにナイフで止めを刺し、ドロップアイテムと魔石を回収。実験は成功。


「よし! 次」

「「次もあるのか!?」」


 ポンプの中身を変える俺に二人がツッコミをいれる。

 

「あるに決まってるじゃないか。せっかくのダンジョンだぞ。実験には最適のようだしね」


 俺は呆然とする二人を置いて、次の獲物を探るのだった。


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[一言] 魔物にとっては火炎放射器と変らんがなw
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