29話
「どう思う?」
「どう思うも何もおかしいだろ!!」
アイルが叫びながら、特大のワイルドベアの首をハネた。
特大。つまり、通常の4倍はあるワイルドベアだ。
通常2、3メートルあるワイルドベアが、12メートルほどある。
見上げるほどの高さである。
ワイルドベアだけではない。
トカゲの魔物・コドモドラゴンも通常よりも遥かに大きい。
コドモなどではなく、れっきとしたドラゴンサイズ。
フィールドボアに関しては山が動いているとさえ、思った。
俺たちが辿り着いた、名前もつけられていない孤島。
殆どの魔物が特大サイズで、緑の虎の魔物・グリーンタイガーをフィールドボアが捕食するような場所だった。
「捕食者と被食者のバランスが他の場所とは明らかに違うな」
魔物学者のベルサが言う。
「それにしてもデカすぎるだろ」
「うむ、調査の必要がある。魔素溜まりか、かなり豊富な餌があるのだろう。見ろよ、あの巨体で背中に苔が生している」
ベルサがヘイズタートルという、沼などに生息する亀の魔物を指差す。
通常でも大きい魔物だが、いま見ている個体は20メートルほどある。
確かに、ヘイズタートルの甲羅には苔が生し、小さな花が咲いている。
ということは、何年もあの巨体でこの島に生息しているということだ。
「つまり、あの巨体を維持する餌か、魔素溜まりがこの島のどこかにあるはずなんだ」
「このジャングルの植物のなかに餌があるのか?」
島は鬱蒼としたジャングルに覆われ、餌など探せばいくらでも見つかりそうである。
「ジャングルと言っても食べられる植物の実は限られている。あの巨体を支えるカロリー消費量と巨大な魔物の個体数を考えると…どう考えても、この島は禿山になってないとおかしいんだ」
ジャングルを20メートル進んだだけで、巨大な魔物が両手で収まらないほどいた。
実際、この島がどれくらいの大きさか、まだわからないが、確かに豊富な餌場がなければ、ここまで大きくならないだろう。
特大の魔物に合わせた、特大の実がなる植物でもあるのだろうか。
植物に関しては古い木が多いようだが、通常サイズだ。
「通常の魔素溜まりじゃないかもしれない」
ベルサが悩むように顎に手を当てて考える。
魔素もまた、魔物にとっては餌になりうる。
だからと言って、通常の魔素溜まりがあったとしても、巨大な魔物が現れるのは歴史上でも稀だ。
アイルはワイルドベアの死体を解体しながら、周囲を警戒している。
俺は襲ってくる巨大な魔物たちを魔法陣を描いて氷漬けにした。
すると、島の中心の方から、ドドドドドという細かい振動が響いてきた。
「なんだ、ありゃ!!?」
思わずアイルがつぶやいた。
探知スキルを埋め尽くすような魔物の群れがこちらに向かってやってくる。