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駆除人  作者: 花黒子
~水の精霊を窺う駆除業者~
162/502

162話

 俺は空飛ぶ箒から飛び降り、ボウの下に走った。

「ナオキさん!」

 リタが俺を見る。

「すまん!」

 分身に惑わされたなんて言い訳は聞きたくないだろう。それよりも、ボウの治療が先だ。

「ボウ、傷口を見せてみろ」

 ボウは歯を食いしばりながら、肘から先がない腕を見せた。血が噴き出している。魔力の紐で、肩の近くを思い切り縛り、血を止める。

動脈と静脈を繋げるんだったか。わからん。診察スキルはあっても、所詮、俺は医者じゃなくて駆除業者だ。とりあえず、血管をまとめてきれいな紐で縛り血を止め、皮膚を引っ張って被せ、回復薬をぶっかけた。


「フフフ……はぁ!」


 振り返ると、水の精霊がボウから奪った右腕を眺め、手を開いたり閉じたりしながら、軽やかに舞っていた。

そもそも四肢のバランスがおかしい身体の水の精霊に、無骨で大きなボウの右手が加わり、なんだかよくわからないフォルムになっている。無理に表現をすれば、カマキリに似たバレリーナが、右腕をパンパンに腫らしている。それが、霧の中で笑いながら踊っているのだ。


いつの間にか雨が止んでいた。

「コムロ氏、なんだいあれは?」

 突然、後ろから声をかけられた。なぜかジャングルの蔓で作ったようなハットをかぶった神様がボウとリタの横にいた。相変わらず、村人風の服にどこにでもいるような顔で、水の精霊を見ている。

「神様、遅いですよ」

「だって、コムロ氏廃墟にいないんだもん。探しちゃった」

 ボウとリタは神様を直視して、固まってしまっている。2人にはどう見えているのかわからない。というか、もしかして神様が時間魔法で2人の時間を止めたんじゃないか、ていうくらい動かない。

「遅刻の理由はあとで。水の精霊が人間の身体のパーツを全て手に入れたところです」

「人間と言っても右腕は魔物のもののようだけど、まぁ、関係ないか。それで、どうする?」

「どうするって言ったって、力では敵いませんでしたよ」

「当たり前じゃないか。前にも言ったろ? 精霊っていうのは力そのものだって」

 遅刻しておいて、神様の野郎! そんなことくらい土の精霊の時にわかっていましたよ!

「後、出来ることといったら、神様が与えた『モノ』を奪うくらいですから、頼みますよ」

 負け惜しみを言いつつ、計画通り進める。ボウの腕が奪われるのは、最悪の場合だった。その最悪が起こってしまったからには、守るべきものもなく、やることは一つだ。

「ああ、わかったよ」

 口撃開始だ。


 俺は踊っている水の精霊の方に進み、声を張り上げた。

「はしゃいでるところ、すみません!」

 水の精霊はバレリーナのようにくるっと回って振り返り、俺を見て口を大きく開いて笑った。口の中に歯はなく、黒い穴がぽっかり空いていた。

「なにかしら? また戦う?」

 水の精霊は、ボウの太い指を顎に当てて、首を傾げた。異様な光景だ。

「いえ、それはもう勘弁してください。それよりも、水の精霊様は人間になるおつもりですか?」

「そうよ。人は愛によって生まれ、愛によって育まれるものでしょ。私もそう。歴代の勇者たちが愛した者たちで出来た美しい人間になるの。愛は美しいでしょう?」

「では水の精霊はお辞めになるのですね?」

「そういうことになるわね」

 言質取った! あれ? 依頼達成しちゃったかな。

「ということです。神様」

 俺が振り向いて神様に告げる。 神様は草原に突き出した石の上で、ちょこんと体育座りしていた。

「あら、神じゃない? あなたがどうしてここに?」

 水の精霊がようやく神様に気づいたようだ。

「いや、仕事でね。ところで、なんだいそれは?」

 神様が水の精霊に聞いた。

「何ってなんのことです?」

「わからないなら、まぁ、いいや。精霊は辞めるのね?」

「ええ。限りある生命の中で輝く人間になることにしましたわ」

 神様は目を閉じて、黙って下を向いた。

 大丈夫か、この流れ。また、水の精霊が悪魔になったりしないだろうな。

「わかった。あとは頼むよ、コムロ氏」

「え!? 俺?」

 急に振られても困るんだけどな。でも、やるしかないか。


「あなたは誰ですか?」


 俺は水の精霊だった者の前に立って、問いかけた。

「誰って、水の精霊よ」

「精霊はお辞めになったんでしょ?」

「そうね。だとしたら人間かしら」

 水の精霊だった者は笑みを浮かべている。

「人の身体を寄せ集めたにすぎないあなたが、人間? その顔は誰のものですか? 初代水の勇者、マルケスが愛したソニアの顔ですよね?」

「そ、そうね」

 水の精霊だったものから笑みが消えた。

「その眼球は女王アリアナのものですよね? その片足はレミさんのものだ。決してあなたのものではない」

「しかし、私に捧げられたものです」

「なるほど、確かに冠水と引き換えにあなたが報酬として得た所有物かもしれませんね。ただ、あなた自身の身体ではない。誰かの身体を寄せ集めたって人間は出来ません」

「でも、愛が……」

「その愛はあなたへの愛ではありません。実際、ベンジャミンさんは女王アリアナを今でも愛していますが、あなたへの愛はたぶんないでしょう。あなたは歴代の勇者たちの愛の一部を得たと思ってるかもしれませんが、誰からも何も得ていない」

「だったら、私は何を……?」

 水の精霊だった者の目が大きく開いた。

「何も。歴代の勇者たちが愛した人の一部を奪って冠水を止めていただけです。ただの勘違いです」

「勘違いって……! では、私は人間になれないんですか?」

「ええ、なれません。そもそも、中身もなく、そんなチグハグな身体でどうやって人間になろうとしていたんですか?」

「そんな……! 神よ! 私は人間になれないんですか?」

 水の精霊だった者が神様を見た。神様はただ、首を横に振った。

「もう一度、聞きます。あなたは誰ですか?」

「誰って……、はっ! 人間の身体の多くは水で出来ていると聞いたことがあります。私の身体もまた水で出来ている」

 苦し紛れとはこのことか。

「そうですか。では、多くの魔物も人間ですね。水袋も水瓶も人間だ。名前はありますか?」

「名前? それは……」

「そうです。もしあなたが人間であるとするなら、かなり新しい人類の種になるかと思います。名前はありますか?」

「……」

「何をもって、あなたはあなたの種を定義するのです?」

「……」

「言葉を失ってしまいましたか? やはり人間ではないようですね」

 水の精霊だった者の周囲に水の玉が無数に浮かび上がった。やけになって攻撃してくる気かな。復活のミサンガはまだ残っているので、あと3発くらいなら大丈夫か。

「あなたはもう精霊ではない。かと言って人間でもなく、ましてや魔物でもない。さらに名前もない。その腕は誰のものですか? そこにいる魔族のものですよね? その目は? その顔は? 全てあなたのものではない」

 浮かび上がった水の玉が大きくなり、水の精霊だった者の周りを勢い良く回り始める。触れただけで、肉ごと持っていかれそうだ。俺の額に汗が流れる。欲望も消しておかないと悪魔になりそうだ。

「あなたが集めたその身体のパーツに意味はありません。あなたはあなたを言い表す全てを失った。人間になりたいという欲望も勘違いしたまま達成されて目的も消えた。後に何が残りますか? あなたには何もない。その水の玉で俺を攻撃しますか? あなたはそれで何になるのです? 何ものにもなれないでしょう」

 水の精霊だった者は顔を歪め、目から大粒の涙が地面にこぼれ落ちた。残念ながら、俺は仕事中、誰かが泣こうが業務は止めない。死んだネズミの内臓が飛び出て女性従業員が泣いたところで、駆除業者が止まるはずもない。業務は業務。きっちりこなす。

「涙と一緒に『言葉』もこぼれ落ちましたか?」

「……」

 水の精霊だった者は口を開いたが、言葉もなく泣いている。周囲を回っていた水の玉は落ち、身体のパーツが歪み始めた。

「精霊でもなく、人間でもなく、魔物でもない。中身もなく、名もなく、意味もなく、何もない……泣いた涙の分だけ『言葉』もなくなる」

 水の精霊だった者は涙を我慢しようとしゃくりあげながら、泣いた。しゃくりあげる度に、身体のパーツが地面に落ちる。

 以前、神様が「精霊ってのはさ、要は『力』なわけよ。土の力、風の力、光の力そのものなわけ。それに僕が『言葉』を与えただけなのね」と言っていた。

力で勝てない俺は水の精霊から『言葉』を奪うことにしたのだ。水の精霊に何も言わせず、『言葉』を捨てさせる。この世界では『言葉』によって水の力が精霊にもなるのだ。俺はその『言葉』の力を信じただけ。

止んでいた雨が再びしとしと降り始めた。

「泣いたあなたにつられて、空も泣く。こぼれ落ちた涙の分だけ『言葉』もこぼれ落ちる」

 水の精霊だった者は空を見上げた。


パシャン。

 水の精霊だった者は見上げたままの姿勢で、水と化し、流れていってしまった。

 探知スキルでも、灰色の点は見えなくなった。


「キレイに消えたね」

 体育座りをしていた神様が立ち上がって、俺に近づいてきた。

「悪魔化することもなくて良かった」

 そう言って神様は俺の肩を叩いた。

「いやぁ、本当大変ですよ」

「さて、報酬はどうする?」

「とりあえず、その前に原状復帰ですよ。水の精霊が現れる前の環境に戻してください」

 俺は水の精霊だった者が消えた場所を見ながら言った。水の精霊が奪った身体のパーツは全て黒く変色し、形が崩れていた。これでは、もう回復薬でもどうにもならない。

「身体のパーツは元には戻せないよ。それは『再生医療』って言葉がすでに付いている。僕が起こせるのは奇跡だけだ」

え~! 神様のくせに使えねぇ!

「あ! 酷い! 酷いこと思ったでしょ! まぁ良いけど。彼の腕を治したいなら、北の極地に近いところにいる奴らに頼むことだね」

 リドルさんも北にそういう人たちがいるって言ってたな。でも、「奴ら」って、あんまり神様はその人たちのこと好きじゃないのか。

「ほら、どうでもいいこと考えてないで、早くしないと雨が強くなるよ。この雨は川を氾濫させるんだから」

「はいはい。じゃ、報酬についてはあとで」

 俺はボウとリタがいる方に向かった。2人は意識を取り戻したように、周囲を見回している。

「わかった。通信袋で連絡して」

 神様はそう言って立ち去ろうとした。

「北の方に280年分の南部を冠水させる量の水があるので、持って帰ってくださいね!」

 俺が声を掛けると、神様は後ろを向いたまま、手を上げて煙のように消えた。


「今の誰だ?」

「神様」

 ボウの質問に俺は短く答えた。

「さ、川が氾濫するぞ。モラレスの住民たちを避難所に、洞窟の民たちは南の洞窟に送り届けないと」

「水の精霊様は?」

 俺から空飛ぶ箒を受け取ったリタが聞いてきた。

「消えちまった。交渉がうまくいったんだ」

「どんな交渉したんですか?」

「おまじないみたいなもんさ。ほら早く箒に乗って、2人は南の洞窟で休んどけ。俺は逃げ遅れた人がいたら助けないといけないからさ」

 俺は手を叩いて、2人を促した。俺も箒に乗って浮かぶと、東側から川の水が溢れて流れてくるところだった。

「俺たちも行くよ」

「いいよ。片腕なくなったばかりなんだから、安静にしてろ」

 ボウの申し出を断り、俺は北に向かって飛んだ。

 通信袋に魔力を込めて、うちの社員を呼び出す。

「全員無事か?」

『ああ、全員無事だ。こちらは少し前に水の精霊の分身は消えた。ナオキ、やったのか?』

 アイルの声がした。

「ああ、水の精霊は消えた。ボウは右腕、失っちまったけどな」

『そうか……。こちらは逃げ遅れた人と吟遊詩人たちを北部の町に案内しようと思ってるんだけど、良いかな?』

「もう南部の南側では川が氾濫し始めている。間に合わなそうだったら避難所の方に案内しちゃってくれ。俺もすぐ合流する」

『了解』

 俺はモラレスの祭り会場へと急いだ。


 思った以上に雨は強く、会場周辺は水浸しだった。

 280年分の南部を冠水させる量の水の影響もあるかもしれない。壊れた馬車と祭り会場は膝下くらいまで水没している。

 ただ、すでに馬車から水が噴き出してはいない。神様の仕事ぶりは相変わらず、適当だ。

 ベン爺さんたち洞窟の民と吟遊詩人たちが、それぞれ用意した船に乗り込んでいるところだった。うちの社員たちもいて指示を出している。

「我らは北部の町に行き、水の精霊様を待つと言っているだろう!」

 吟遊詩人たちと揉めているようだ。

「お疲れ様です。残念ですが、水の精霊様はこの国を去りました。吟遊詩人の方たちもうちの社員の指示に従って下さい」

「去ったってどういうことだ?」

 吟遊詩人のハンスが俺に聞いた。

「そのままの意味です。この国にはもう水の精霊様はいません。吟遊詩人ギルドをこれからどうするかは知りませんが、とにかく川が南部では氾濫し始めてますので避難所の方に急いで下さい。人数を確認して誰も逃げ遅れないように。水の精霊様も、吟遊詩人の方々に死なれたくないでしょうから」

 吟遊詩人たちは俺の言葉に戸惑いつつも従ってくれた。

「洞窟の民の方たちは、このまま南の洞窟へ」

「急に馬車から水が噴き出なくなったんだが、これはもう良いんだな?」

「ええ、然るべき方に頼んだので、もう噴き出ることはありません」

「……わかった! さぁ! 皆、川の流れが強くなる前に行くぞ!」

 ベン爺さんとラウタロたちは頷いて、水魔法を巧みに使い、出発した。女王もベン爺さんに掴まって乗り込んでいたが、大丈夫か? 王家については、面倒なので、なるべく関わらないでおこう。

 その場にいる吟遊詩人たちが用意された船に乗り込み、俺たちコムロカンパニーの面々が持ち上げ、空飛ぶ箒で避難所へ向かう。そっちの方が早かった。吟遊詩人たちは攻撃のために水魔法を使うことは出来ても、船を動かすための水魔法は、どうすればいいのか迷っていた。迷う時間がもったいない。

 

 避難所ではサッサさんと冒険者ギルドのギルド長であるチーノが中心になり、町の人たちが全員いるか、確認していた。

「すみません。サッサさん、吟遊詩人の方たちもこの避難所に置かせてくれますか?」

「ああ、大丈夫だよ。雨期と言っても、雨足が弱まる日もあるから、その日に北部の町に送るから。ところで、姉様見なかった?」

「ベン爺さんと南の洞窟に向かいました」

「あぁ」

 サッサさんは広い額に手を当てて、ため息を吐いた。

「逃げ遅れている人はいませんか?」

「今確認しているところだが、ほとんどいるようだ。ひとまず、コムロカンパニーさんは住居の方で飯でも食べててくれ。こっからが勝負かもしれないから」

「わかりました。よし、食える時に食っておこう」

 俺たちが住居の方に行くと、チオーネとアプが炊き出しをしていた。

避難してきた町の人たちは川を渡ったため、疲れているようだった。俺が「大丈夫ですか? 回復薬要ります?」と聞くと、「大丈夫だ」と断り、逆に配っていたライフジャケットのお陰で誰も川には流されなかったとお礼を言われた。

 豚汁のようなスープを食べ終え、少し休んでいると、サッサさんが少年を連れてやってきた。少年の母親と幼い妹が祭り会場にボウが現れたときの混乱で、行方知れずになっているという。

 俺たちは、すぐさま空飛ぶ箒に乗り、祭り会場周辺を見回る。

 すでに川が氾濫し、草原に葉脈のような枝分かれした川が出来上がっていた。

 俺は探知スキルで、祭り会場から離れた場所を探す。

『発見しました!』

 祭り会場のすぐ側を探していたメルモから連絡が入った。

 少年の母親と幼い妹は、ボウが作った中がスカスカのカラバッサに掴まって、枝分かれした川を漂っていたという。母親は祭り会場の混乱で、足をくじき、誰かの肘にぶつかり頭を打って気絶していたらしく、何度も説明しながら謝っていた。

 避難所に送り届けた時、中年の衛兵が声をかけてきた。

「お疲れさん。やったみたいだな」

 そういや、この人戻った時、馬車の周辺にいなかったな。何やってたんだろう。

「お疲れ様です。ええ、交渉はうまくいきましたよ」

「こっちは馬車の水が止まったんで、火事場のバカがいないか、モラレスの町を巡回してから避難所に来たんだ」

 確かに、祭りの時でもモラレスの町には少ないながらも何軒か家が建っていた。

「ほら、あいつらだ。貴族の私兵が火事場泥棒だっていうんだから笑っちまうよ」

 中年の衛兵は住居の隅の方にいる縄で縛られている男たちを指した。

「お疲れさん。モラレスの町人全員の生存を確認した」

 チーノがこちらに近づいてきて、言った。

「あとは、吟遊詩人のファンと、コムロカンパニーの人のファンと、回復薬のファンが何人か紛れてるが、後日、北部に返す。星詠みの民がいれば船でも行けるし、コムロカンパニーがいれば、空飛んでも行けるだろ? 雨が弱い日に送れば良い」

「今日のところは終わりだな」

 チーノと中年の衛兵が笑いあっている。2人ともこれから飲むつもりらしい。俺も誘われたが、水の精霊との戦闘でツナギは泥だらけだし、復活のミサンガを使いすぎたせいか疲労もあるし、クソ眠いので断った。それは、うちの社員たちも同じだ。

 避難所の住居は許容量を超えていたので、俺たちは南の洞窟に行くことにした。

「依頼は達成したから、南の洞窟に行って寝よう」

「「「「はーい」」」」

 全員、疲労困憊。フラフラしながら、空飛ぶ箒で南の洞窟へ。


 南部の崖近辺はすっかり冠水していた。

 ベン爺さんとラウタロに酒を勧められたが、断って部屋を用意してもらう。

 寝具はあるので、スペースさえ貰えればいい。ペドロに案内されて、俺たちコムロカンパニーには洞窟の奥の部屋を与えられた。奥の部屋ではボウとリタも疲れて眠っている。俺たちは2人の隣に魔物の毛皮を敷くと、そのまま全員、泥のように眠った。


 眠りながら、何か大きな岩と岩がぶつかるような音を聞いた気がした。もしかしたら、地面も揺れたかもしれない。まぁ、よくあることだ。

 ただ妙な浮遊感もある。魔力切れでも起こしたのだろうか。いや、そんな感じではない。逆に眠ったことによる急激な回復だろうか。

「あああああ!!! 起きて下さーい!!」

 セスの叫び声がこだました。


 俺たちは落下していた。

 上を見ると、遥か上に洞窟の灯りが仄かに見える。

 周囲には未だ眠っている社員たちと、起きて叫んでいるセスがいる。アイテム袋から箒を取り出す暇はない。

 状況を理解すると、俺は急いで下方向にゴムの性質を持った魔力を全力で放つ。

 数秒後、地面に着いてゴムの魔力にぶち当たり、全員バウンドして、地面に落下。

 とりあえず、探知スキルで見ると死人は出なかったようだ。


「あれぇ~? コムロ氏じゃないか。相変わらず、アバンギャルドな登場するね」

 顔を上げると、邪神がこちらを見ていた。隣にはゴーレム姿の土の精霊、改め土の悪魔がいた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 話を投げずにちゃんと纏めてくれているところ。 [気になる点] どういう理屈で言葉を奪えたのかよく分からない。。
[一言] あれは交渉なんて上等なものじゃないだろうに
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