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駆除人  作者: 花黒子
~水の精霊を窺う駆除業者~
159/503

159話

 吟遊詩人たちが収穫祭の会場に着いて以降、続々と人が集まってきた。すでにモラレスの町の人口を超えているように思う。

「収穫祭って、こんなに人が来るもんなんですか?」

 近くにいた中年の衛兵に聞いてみた。ちょっとした町の祭りのはずだが。

「それぞれの吟遊詩人たちのファンが来てるんだ。ただ、例年とはちょっと違うなぁ……」

 洞窟の民たちの方に軍人と思われるムキムキした人たちが集まっている。ラウタロやベン爺さんの噂を聞きつけて来た人たちのようだ。

 さらに、アイルとセスの周囲にも女性たちが集まっている。いや、女性たちだけではない。仕立てのいい服を着た貴族っぽい中年男性や、その奥方と思われる女性たちも遠巻きに2人の方を窺っている。

「あの2人、何かやったのか?」

 隣であくびをしているベルサに聞いた。

「ああ、アイルとセスはコロシアムに出てたからでしょ」

 アイルとセスが北部の町のコロシアムに出たのは結構前だが、根強いファンがいたようだ。

「今年は人が多いな」

 チーノが難しい顔をして、こちらに近づいてきた。

「まぁ、予定通りに進行すればいいさ」

 中年の衛兵はチーノに返した。

「社長、回復薬の在庫はあるか?」

 チーノが俺に聞いてきた。

「ありますけど、どうしました?」

「遠くの村から回復薬を買い付けに来てる人たちが、社長たちを探してるんだ。南部開発機構が売ってる回復薬は王家のお墨付きがあって、価格も安く、効果も抜群だからな。噂は国中に広がっているさ」

 もう洞窟の民たちは行商しなくても、買いに来てくれるかもしれないな。

「そういう人たちも来てるのか。いやはや、今年は大盛況だな。カラバッサのパイは足りるのか?」

 中年の衛兵がチーノに聞いた。収穫祭で来場者にカラバッサのパイを振る舞うことになっていたらしい。

「最悪、モラレスの人たちの分はなしだな」

「誰のための収穫祭なんだか」

「「はぁ……」」

 チーノと中年の衛兵は腰に手を当て、ため息を吐いていた。

「で、誰に回復薬を渡せば良いんですかね?」

「ああ、今、祭りの本部のテントに急遽南部開発機構の回復薬を売るスペースを作っているはずだ。行ってみてくれ」

「わかりました」

 本部のテント近くでは吟遊詩人たちがファンの相手をしていて、なかなか本部のテントに辿り着けなかった。品評会に野菜を出す農家たちも列を作っていて、農家を案内している衛兵たちは吟遊詩人たちを睨んでいる。

「ああ! 社長! 助かった。こっちこっち!」

 俺を見て、回復薬を売っているサッサさんが手を上げて呼んだ。すでに売り場は確保しているようだ。それより、この人、王弟なのに、こんなことしてて良いのか。

回復薬の売店では行商に出ていた洞窟の民たちのほか、チオーネとアプも手伝っている。俺は「すいませ~ん!」と言いながら、人をかき分け、テントに入った。

「回復薬、足りてますか?」

 テントの隅では、洞窟の民たちが鍋の用意をして慌てている。

「社長! いや、この調子だと足りなくなるね。とりあえず、材料があるだけ作っちまおうかと思って」

「まさかこんなに人が来るとは思わなかったよ」

 洞窟の民たちからすれば、嬉しい悲鳴だ。

「うちからも出しますよ」

 俺がアイテム袋から回復薬を取り出して見せると、洞窟の民たちから「勘弁してくれ」と止められた。

「社長の回復薬は不純物が少なすぎて価格を上げなくちゃならないからさ。それより、鍋を温める、あの魔法陣を描いてくれや」

 洞窟の民が謝りながら、地面を指差した。確かに、売っている回復薬と俺の回復薬では純度が違う。質を俺の回復薬に合わせると、時間もかかる。

「ただ、一本置いといてくれるか。それを目標に作るから」

 俺は地面に魔法陣を描いて、回復薬を一本洞窟の民に渡した。俺も手伝おうかと思ったが、出来上がりの質を考えると止めておいたほうがいい、と思い直し、余っていた薬草だけ提供することに。

「すみませーん! 只今、品切れ中です! 作っておりますので、しばしお待ちを!」

 売り場の方ではサッサさんが大声を上げて、来た客に謝っている。これも南部開発機構の仕事か。チオーネとアプが金を数えている。

「社長、売れすぎです。はぁ。あ、そうだ。洞窟の民の中に星詠みの民がいましたよね?」

 サッサさんが俺に近づいて聞いた。

「ええ、いましたけど」

「会場の西側に水撒いてくれるよう言ってもらえます? ほら、砂埃が舞ってるんです」

 サッサさんが指した方を見ると、砂が舞って空に黄色い煙のようになっているのが見える。

「ありゃ、『残り風』だ」

 俺から薬草を受け取った洞窟の民が口を挟んだ。

「なんですか? その『残り風』って」

「沼の渡り鳥の魔物が、最後に乗る季節風のことさ。魔物にもズボラなやつがいてさ。皆と一緒に北へ飛ぶことが出来なかったやつがいるのよ。そんな渡り鳥が北へ向かう最後のチャンスが『残り風』だ。あの風が、残ってる渡り鳥の魔物を北へ連れて行くんだ」

「なるほど。じゃ、西側では結構強い風が吹いてるんですね」

 テントの中にいるからか、あまり感じない。

「行ってみりゃわかる。こっちは人が多いから、風よけになってあまり吹いてこないだけさ」

 俺は社員たちに向け、「星詠みの民を見なかったか」と聞いた。

『こちらメルモです。ベン爺さんが近くにいますけど』

「会場の西側に砂埃が舞っているから、星詠みの民たちに地面を濡らしてくれるよう頼んでくれる?」

『わかりました。……あんまり胸ばっかり見ていると女王様に言いつけますよ!それより……』

 ベン爺さんはメルモの胸を鑑賞していたようだ。大きいから仕方がないか。


「社長、そろそろ始めるから、モラレスの冒険者ギルドに向かってくれ」

 テントの入口を開けて、中年の衛兵が言ってきた。

「あれ? 吟遊詩人たちって全員、こっちの本部に来るんじゃないんですか?」

「水の精霊様が、こんな人の多いところで控えているわけないだろ。会場の方に来てるのは儀式の会場をセッティングをする下っ端の吟遊詩人だけだ」

 中年の衛兵が割りと大きめの声で言った。ファンの相手をしている邪魔な吟遊詩人にも向けているのだろう。

「水の精霊様の馬車は、魔物が違うからすぐわかると思う。チーノも向かってるから」

「わかりました」

 俺は通信袋で社員をモラレスの冒険者ギルドに来るよう伝え、外に出た。

 本部の脇には、番号が振られたカラバッサやトマトに似た野菜・マテがたくさん入った籠などが置かれていた。ボウのカラバッサがひときわ大きく、他を圧倒している。

 エプロンをしたモラレスの町の人たちも、カラバッサのパイを用意していて、動き回っている。

そんななか、吟遊詩人たちがファンサービスをしているのだから、邪魔で仕方がないのだろう。

俺は人を避けながら、会場を後にし、モラレスの冒険者ギルドに向かった。


冒険者ギルドのテント近くには馬車が4台停まっており、フィーホース3頭と、デザートサラマンダーに似た大きな魔物1頭が水を補給していた。

4台の馬車のうち、1台はかなり大きく、冒険者ギルドのテントと同じくらいの大きさがある。まだ、曳ける大きさかな。大きな馬車の周囲には吟遊詩人たちが立っていた。水の精霊様の護衛だろう。

「こんにちは。よろしくお願いしまーす」

 冒険者ギルドのテントに入りながら、挨拶すると、明らかに美形の吟遊詩人たちが俺を見た。吟遊詩人たちは筋肉のバランスもよく、姿勢がとてもいい。祭り本部にいた吟遊詩人たちとは雰囲気が違う。その中に、王都で見たサッサさんたちに絡んできた吟遊詩人もいた。名前はなんてったっけなぁ? リーなんとか……。えーっと、思い出せないなぁ。

 うちの社員たちはまだ来ていないようなので、隅の方で待機。あとで、チーノか中年の衛兵から紹介されるだろう。

「貴様が水の精霊様の護衛か? どこかで見たか。そうか、王都で軍の輜重部に連れていかれた奴だな?」

 リーなんとかが、わざとらしく聞いてきた。

「その節は、どうも」とだけ返しておいた。ちゃんと覚えてるなんて偉いな。

「実力はどうなんだ? 実力もない奴に護衛など務まらんぞ」

 リーなんとかが、腰の剣を抜こうとしたところで、後ろから吟遊詩人のお友達が無言で肩を掴み、リーなんとかを床に転がした。鎖骨と首の間に指を入れて、下に押したのだろう。

「場をわきまえろ」

吟遊詩人のお友達が、リーなんとかに吐き捨てるように言って、俺を見た。

「すまんな。うちのリーベルトが失礼をした。ハンスという」

 吟遊詩人のお友達ことハンスが握手を求めてきた。俺は握手に応じながら、「コムロです」と自己紹介。ハンスは声が良い。

「我らが離れている時だけでいいから、水の精霊様を頼む」

「よろしくお願いします」

 床に転がったリーベルトが立ち上がり、俺を睨んできた。自業自得だと思うのだが。

 ちょうどチーノと、うちの社員たちがテントに入ってきた。

「じゃあ、揃ったところで、打ち合わせを始める!」

 チーノが高い声を張り上げた。

「間もなく、モラレスの代表者の挨拶があって、そこからダンスパーティーなので、吟遊詩人の皆さんには、楽器を弾いてもらう。もちろん、休みながらでいい。その間に昼食も用意するから、順番に昼休憩を取ってくれ。コムロカンパニーさんは豊穣の儀式が終わるまで、水の精霊様の馬車を護衛してもらう」

「今年の収穫祭は来場者が多いようだが、なにか特別なことはするのか?」

 ハンスがチーノに聞いた。

「いや、特にはないな。来場者が多いのは南部開発機構の影響だろう」

「わかった。コムロカンパニーさんは、この上下青い服を着た人たちで全員か?」

 吟遊詩人たちはハンスが取り仕切っているらしい。

「そうです」

「少数精鋭のパーティだ。うち2人はコロシアムを出禁になる程の実力がある」

 チーノが付け足した。

「なら問題はないな。我らからも、2人は護衛に就くつもりだが、途中で入れ替わりもある。無闇に近づく者の排除を頼む。あと、あまり水の精霊様に近づき過ぎないよう気をつけてくれ」

 ハンスが良い声で注意事項を説明してくれた。近づき過ぎないよう、か。誘拐するつもりなんだけどな。

「わかりました」

「では、各々方、持ち場に行ってくれ!」

 チーノが言って、全員動き出した。


 護衛とは言え、やることはほとんどない。

 水の精霊様が乗っているという馬車の周りで立っているだけ。馬車の横には美形の吟遊詩人がピタッと張り付いていて、中を覗くこともできないし、探知スキルで見ようかとも思ったが、呪われて大事になったら、計画が崩れるので止めた。

 収穫祭が始まった音が聞こえ、吟遊詩人たちの音楽が響き始めた。モラレスの町の建物も少なくなっているので、何をやっているのかくらいは遠目で見える。

 会場の西側の砂埃も消えている。星詠みの民たちが仕事をしてくれたようだ。

 メルモが水の精霊様の馬車を牽いてきたデザートサラマンダーに似た大きな魔物の舌を引っ張ったりして遊んでいる。人に慣れているのだろう。メルモも魔物を使役するスキルがあるので、戯れているようにしか見えないが、馬車に張り付いている吟遊詩人たちの顔は青ざめていた。「あれはデザートサラマンダーの亜種だろうな」とベルサは言っていた。

「しかし、暑いな!」

 時間帯なのか風が止み、日が照ってきて気温が上昇している。うちの社員たちは服の上から青のツナギを着ているようで、汗をかいていた。

アイルは上半分を脱いで、袖を腰で縛っている。相変わらず、上半身はビキニアーマーなので、吟遊詩人たちの視線を集めているのだが、本人は気にしていないらしい。俺としては全人類の女性に同じ格好をしてもらいたいが、アイルにされても、なんか腹立つだけだ。

「そこのコムロカンパニーの人!」

「俺ですか?」

 突然、馬車に張り付いていた吟遊詩人に呼ばれた。

「水の精霊様が暑いそうだ」

 いや、そう言われても。天候を操れ、と?

「風が出る魔道具を作れるというのは本当か? 作れるなら、早急に作ってくれ。金は後で冒険者ギルドを通して払う」

「わかりました。ところで、なんで俺が魔道具を作れると?」

「水の精霊様はなんでもお見通しだ」

 水の精霊様は鑑定スキルでも持っているのかな? そういや、土の精霊も少年の姿のとき、俺をじっと見ていたな。精霊は、能力やスキルを見ることが出来るのかもしれない。神様が俺に称号を与えないのも関係してんのか。

 俺はベタベタ罠用の木の板を取り出して、風魔法が出るように魔法陣を描いて焼き付けた。

「本当に作れるのだな?」

 見ていた吟遊詩人が驚いている。

「このくらいなら。はい、どうぞ」

 と、俺が吟遊詩人に手渡そうとしたら、馬車の隙間から手が伸びてきて、風魔法の魔法陣が描かれた木の板を持っていった。

 隙間から見えた水の精霊は、無表情のまま「フフッ」と高い笑い声を発し、馬車の中に消えた。ちら見しただけだったが、妙な違和感を覚える。たぶん、四肢のバランスがおかしいのだろう。ただ、口の下にあるほくろは、はっきりと見えた。

 その後、なぜか水の精霊が馬車の中から、吟遊詩人を通して質問をしてきた。

「名前は?」「恋人はいるのか?」「独身か?」「出身はどこか?」「今、気になっている娘はいるのか?」などなど。

 俺は、「恋人はいない」「独身」「出身はアリスフェイのクーベニア」「気になっている娘は……チオーネという軍人」と答えておいた。クーベニアはこちらの世界に来て、初めて住んだ町で、チオーネは昨日ボウに言われたので、気になっているということにした。別に付き合おうとか、結婚しようなどという気はないし、向こうもそんな気はないだろうが、もしかしたら、俺の隠れファンという説も捨てきれない。

「というか、なんで俺にそんな質問を?」

「いや、非常に珍しいことではあるが、水の精霊様がコムロさんに興味があるようなのだ」

 俺が土の精霊をクビにしたことに気づいていて、警戒しているのか。

「光栄です」とだけ、返しておいた。

「ちなみに、コムロさんはなにか楽器は弾けないか?」

「弾けません」

「そうか。吟遊詩人ギルドに加入してもらいたかったんだがな」

 吟遊詩人は本当に残念がっていた。


 昼時に、コムロカンパニーに、チオーネが飯を持ってやってきた。吟遊詩人たちは交代しながら、祭りの会場で食べているらしい。冒険者ギルドの裏にあった居酒屋などが出店しているという。

 昼飯は旬のカラバッサと豆の煮付けとパン。パンを切ろうと思って、アイテム袋からナイフを取り出そうとしたら、ナイフがどこにも見当たらなかった。木の椅子とテーブルを作った時に、どこかに忘れたか? というか、アイテム袋の中身を全然整理していないからかもしれない。アイルに借りようと声をかける前に、チオーネがナイフを渡してきた。

「貸しですよ」

「ありがとう」

「今度、私をジャングルに連れてって下さい」

 あら、やだ。デートのお誘いですか? 顔を真赤にするくらい恥ずかしいなら、言わなければいいのに、とも思うが、さすがにアラサーにもなると女性に恥ずかしいことを言わせてしまった不甲斐なさの方が勝ってしまう。

「わかった。約束する」

 デート出来るタイミングがあればいいのだが。

 パンを切って、チオーネにナイフを返そうとしたが、「ジャングルに行く時に、返して下さい」と言ってきた。グイグイ来るじゃん! どうしちゃったわけ? 

ナイフの柄に刻印されているグレートプレーンズのマークを俺は見つめた。

「私の実家の方では、収穫祭に告白すると、豊穣の神に祝福されると聞いたことがある」

 アイルが、走り去っていくチオーネの背中を見ながら言った。そういや、アイルの実家ってどこなんだ? クーベニアではないのかな。

「チオーネと一緒にジャングルに行く時、陰から見ていていいか? 面白そうだし」

 ベルサはデートについてくる気でいる。

「社長は、どんな愛の言葉を囁くんですか?」

「ンクックク。ダメよ。そんなの笑っちゃう!」

 セスもメルモも想像しただけで、笑ってしまうようだ。

「セーラにはどう説明する気なんだ? フフフ」

 アイルも口を閉じて笑っている。

「別にどうもしないよ! まったく、お前たちときたら」

 完全に笑い者だ。ま、男女の関係なんて、なるようにしかならないだろう。そもそも、俺は旅を続けないといけないしな。


 昼食後、何人かの貴族っぽい人たちが水の精霊様に挨拶をしようとしてきたので、追い払った。商人も何人か、こちらを窺っていたが、アイルが木刀を素振りし始めると去っていった。

 祭り会場からは、優しげな弦の調べが聞こえてくる。楽器の種類は知らない。

 俺は時々、水の精霊に吟遊詩人を通して質問をされながら、音楽を聞いていた。

 途中、水の精霊が「もう少し、お祭りの会場に近づけないかしら? 音楽が遠いわ」という要望を言ってきた。吟遊詩人たちも、ちゃんと俺たちが護衛しているのを確認していたので、より祭りの会場に近づいた。

 馬車を急遽移動させたので、昼寝していたデザートサラマンダーの亜種は不満そうに喉を鳴らしていた。

 会場全体が見える位置まで、全員で移動。冒険者ギルドのチーノにも報告しておいた。


 ダンスパーティーが終わった時、すでに日は傾いていた。

 次は、野菜の品評会のはずだ。本部のテント脇には壇が作られており、優秀な野菜を作った農家は表彰されるようだ。

 トマトに似た野菜、マテを作った者の中から、一番甘いマテを作った農家が表彰され、続いてカボチャに似た野菜、カラバッサを作った者の中から、一番重いカラバッサと一番大きなカラバッサを作った者が表彰されることになった。たぶん、ボウが軽くて大きなカラバッサを作ったため、重さと大きさで分けたのだろう。

 日に焼けたツルツル頭の農家と伏し目がちのボウが帽子を目深に被って壇上に上がった。

 2人にはモラレスの代表者から、賞品として盃が贈られ、ボウが壇上から降りようとした時、一陣の風が吹いた。

 盃で手が塞がっているボウは、一瞬、帽子を押さえるのが遅れ、上空へと帽子が飛んだ。

 壇上には頭に角が生えたボウが目を見開いて、立ち尽くしている。

 一瞬、祭り会場が静寂に包まれ、

「ゴブリンだぁぁああああ!!!」

 という、誰かの叫び声とともに、阿鼻叫喚の渦につつまれた。



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