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駆除人  作者: 花黒子
~駆除業者の日常~
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11話

 家に着くと、セーラとバルザックがタオルを持って待っていた。


「ただいまー」

「おかえりなさい、ナオキ様」

「どうした?タオルなんか持って」

「お忘れですか?」

 セーラが俺を見る。

「そうだった!銭湯行く予定だったな。よし行こう!」


 俺はセーラとバルザックを連れ立って、近くの煙突から煙が出ている銭湯に行った。

 銭湯の歴史は古く、2000年くらい前に来た異世界者が広めたらしい。

 ローマ人かな?


 大衆浴場なので、ちゃんと男湯と女湯に分かれている。

 セーラは女湯へ入っていった。


 俺とバルザックは脱衣所で服を脱ぎ、タオル片手に風呂に入った。

 風呂は大きかったが、洗い場はない。

 代わりにベンチがいくつか並んでおり、主人の身体を奴隷が洗ったりしていた。

 とりあえず、ベンチで身体を洗うことにした。


 バルザックは俺に洗われるのを断ったが、「服を脱げば奴隷も主人も関係ないさ」などと言って無理矢理洗った。

 周りからは変な目で見られたが、「良い主人を持ったな」などとバルザックに話しかけてくるものもいて、考えは人それぞれだ。

 バルザックと湯船に浸かりながら、アイリーンと喫茶店で話した事を教えた。


「実は、墓地の墓守がベスパホネットに殺されてしまっていないそうなんだ」

「ええ、知ってます。セーラが鑑定してましたから」

「それで役所が後任を探していてな、中々人が見つからないらしいんだ」

「あそこは町と少し離れていますからね。それに屋敷のこともあるし難しいかもしれませんね」

「どうだ?バルザックがやってみないか?」

「え?私がですか?」

「そうだ、いや無理にとは言わないけど。前から言っているように、俺としては2人に仕事を見つけてもらって、早いとこ奴隷から解放したいんだ。墓守なら、そこまで町の人と会わなくてもいいし、家はあるし、給料も役所からちゃんと出る」

「しかし、私は犬の獣人ですよ」

「そこもいいじゃないか。匂いがわかれば遺族が来た時に、すぐ墓がわかったりするだろ」

「ですが、ナオキ様のお世話は?」

「本当は一人のほうが俺は気楽なんだよ。いつどうなるかもわからないんだし」

「そうですか。セーラはどうするんですか?」

「それなんだよなぁ…」

「セーラはナオキ様から離れないと思いますよ」

 ザブっと俺は顔を洗った。



「はい、私は離れる気はありませんよ」

 エルフの薬屋の自室である。


 銭湯でバルザックとは別れた。

 俺が、バルザックを墓守にしようと思っていることを話し、セーラもどうだ?と提案してみたのだ。

「だけど、このままずっと奴隷のままだぞ?」

「はい、このままずっとナオキ様の奴隷でいいのです」

「良くはない。俺だって、この先どうなるかもわからないんだ」

「だったら、なおさら、お世話をする者が必要なはずです」

「わかった。セーラには正直に話そう。実は、そろそろこの町を離れようと思ってるんだ」

「ど、どうしてですか?」

「俺はこの世界のことをほとんど知らなかった。でも今日、アイリーンと話していて、違う町や都会にも行ってみたくなった。この国以外にも、世界の端がどうなっているかも見てみたいんだ。そこにセーラは連れていけないよ。危険だから」

「私はナオキ様の奴隷ですよ!後ろを付いていくのが奴隷です。死んだら置いていけばいいのです」

「そんな風に割り切れないよ。セーラは俺に気を使うだろ?病気になっても言わない可能性がある。そういうことが危険なんだよ」

「私が足手まといということですね。それなら、ナオキ様をお守りできるくらい私が強くなれば問題はないわけですね?」

「ん? どうしてそうなった?」

「わかりました!ナオキ様!明日にでもギルドの訓練を受けさせてください!」

「全く、俺の話を聞いていないな」

「こうしてはいられない!ナオキ様寝ますよ!明日の朝は早いですから!」


 セーラはランプの明りを消して、寝床に潜った。

 俺もベッドに潜り込み、目をつぶったらすぐに眠れた。

 夜中、セーラのすすり泣く声を聞いた気がしたが、たぶんあれは夢だろう。

 

 翌朝、セーラを連れてギルドに行った。

 バルザックには、途中の道で合流して事情を説明した。

 やはり通信機器がないのは辛い。


 確か、魔法陣で遠くの相手と会話ができるようなものがあったはずなので、あとで調べておこう。

 ギルドの受付で、アイリーンにセーラの冒険者カードを作ってもらい、そのまま初心者講習を受けさせた。


 初心者講習は早くても、昼まではかかるし、そのまま初心者用の訓練も受けさせるので、今日1日は帰ってこれないだろう。

 俺はゆっくりバルザックと朝食を食べていた。


「墓守の件、お受けすることにします。今朝ギルドの人からも頼まれました」

「そうか。よかった。じゃ、俺の奴隷から解放するよ。手続きとかいるのかな? あと、金な。はい、とりあえずあるだけな」


 俺は財布袋ごとバルザックに渡した。自分が無駄に使ってしまうよりも、よほどいい。


「ナオキ様。相変わらずですね。手続きはあとで構いません。お金もこんなに頂くわけにはいきません」

「じゃ半分くらい渡しとけばいいかな?」


 そう言って1500ノット、金貨15枚ほど渡した。

 バルザックはうなだれながら、受け取って自分の袋の中に入れていた。


「最後にナオキ様と依頼を受けたいのですが、よろしいでしょうか?」

「いいけど、俺はGランクだから、大した依頼は受けられないよ」

「記念ですので」

「そうか、わかった」


 久しぶりに依頼掲示板を見てみた。


「これなんかどうですか?ゴブリン5匹の討伐依頼」

「町の外にでるのか?」

「ダメですか?多めに狩れば、Fランクになれますよ」


 Fランクに上がるためにはゴブリンの右耳10個必要なのだ。

 ただ、俺が今まであまり冒険者のランクに興味がなかったため、奴隷のバルザックやセーラがバカにされることがあった。


 直接危害を加えられないならバカにされてもGランクで良かったのだが。

 バルザックを奴隷から解放する記念として、ランクを上げるのもいいかもしれない。

 ただし、上位ランクには絶対に行かない。


 上位ランクになると、直接王都から依頼されて、受けざるをえない状況になるのだとか。

 その話を聞いた時点で、「なにそれ超大変」と思った。


「じゃあ、それを受けよう」

「ありがとうございます」

「装備をしっかりしてから行こうな」

「わかっています」


 依頼書を掲示板から剥がし、受付に持っていく。

 アイリーンも俺が町から出て、ゴブリンを狩るということに驚いていた。


 武器屋で鉄の剣を、防具屋で鉄の胸当てを買い、バルザックにプレゼントした。

「あの…ナオキ様の装備は買わないのですか?」

「俺はツナギがあるから。ちょっと待ってて部屋に戻って準備してくるから」


 そう言うと、俺は一旦エルフの薬屋に戻り、自宅からバッグと余っていた魔石の粉を持って来た。

 魔石の粉を水で溶かし、バルザックの剣の腹に魔法陣を描き斬れ易くする。

 鉄の胸当てにも、防御力上昇の魔法陣を描いた。


「これで、雨とかが降らなければ、2、3日はもつはずだ」

「あの、何をされたんですか?」

「ちょっと攻撃力と防御力を10倍くらいにしただけだ。これでゴブリンも楽に狩れるだろう」

「ナオキ様!今後このようなことは不用意になさらないでくださいね!」

「ああ、バルザックだからだよ」

「わかっておりますが、簡単にアーティファクト級の物を作られると、私としても心労に耐えかねます」

「大げさだなぁ」


 なんてことを話しながら、森へと入っていった。

 


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