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怠惰でチートな異世界創造者(マジッククリエーター)  作者: 市川キキ
第1章、始まりと終わり
7/62

6話、偽物

誤字があったので修正しました。

 ボトッ ボトボトッ



 その音はアーガルドを包んでいた肉片が剥がれ、落ちる音だ。



「ひっ………」



 アーガルドを形成していた肉は、地面に落ち溶けるように消えていく。



(これは魔法なのか?)



 ふとそう思うが、今集中べきことはアーガルトの始末だ。



 しかし、少しまずいことがある。それは



(MPがない……!)



 この問題はどうやっても解消できない。MPがなければスキルが使えない。



 そうなると後に残るは……。



「死、あるのみ……か」



 さすがに死にたくはないが、こうなるとどうしようにも考えるしかない。



 だが、アーガルドが迫ってきている状況で悠長なことはしていられない。



「ぐがあああぁぁぁぁぁ!!」



 アーノルドは人間ならざる声を発しながら、迫ってきている。



 その中で遥希は決心した。



「やったことはないが、必ずできる。効果にそう書いてあったしな」

「ぐらぁ!!」



 遥希はアーガルドの一撃を避け、



一文字解放(シングルキャスト) 妨害(ジャミング) 眠!」



 その言葉は確かに声に出した。それは紛れもない事実。だが、



「ぐっ……。うがぁぁ!」

「くそっ!」



 アーガルドは一瞬だけ怯むだけだった。



 そして遥希は腕に一撃を食らってしまう。



 掠っただけだが、恐怖を煽るのには十分すぎるほどの傷だった。



 生物干渉は相手の精神が不安定なほど効果は長い。



(だが、その逆も然り、か)



 しかも遥希は異世界に来て初めて攻撃を受けたわけで、その効果は絶大だ。



(くっ、あの時、果物なんて出さなければ……)



 そこで遥希はハッとし、キルルを見る。



(いけるか? いや、やるしかない!)



 遥希は攻撃を避けながら、キルルに



「ちびっこ! そこの果物よこせ!」

「えっ? こ、これですか?」

「そうだ! 投げろ!」



 それは遥希が先ほど作り出した果物だった。どうやら食べ物は、維持するための魔力を必要としないようだ。



 キルルは足元に落としていた果物を力いっぱい投げる。



 それは空中できれいな弧を描きながら遥希の手の中に納まる。



 そのリンゴは土や砂で汚れていたが、四の五の言ってられずそのまま齧り付く。



「うっ……」



 味はもちろん最悪。口の中でシャリシャリとジャリジャリが奇妙なハーモニーを生み出している。



 無論、遥希はそんなこと気にしていられない。



一文字解放(シングルキャスト)、剣!」



 と、その右手の中に1つの両刃剣が生まれる。



「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ふんっ!」



 ザンッ



 そして少しの沈黙。



 倒れたのはアーガルドだ。



 アーガルドに斬られそうになったとき、左手の一部を犠牲覚悟で振り、剣の軌道を逸らしカウンターを放ったというわけだ。



(左手がなくなる覚悟で振ったのに、結局無傷かよ)



 と、そこにキルルが駆け寄ってくる。



「うまく勝てましたね!」

「あぁ、そうだな」



 そして遥希は笑顔で、



「そんなお前にご褒美をやろう」

「えっ」



 ブシュッ



 キルルの言葉は発されることはなかった。なぜなら、



 遥希がキルルの首を刎ねたからだ。



 切られた首は宙を舞い、アーガルドの死体の近くに転がる。



「なかなかの演技力だったぞ。普通の人間なら騙されていたのかもしれない。だが」



 遥希は顔に、身が凍えるような冷酷な笑みを浮かべて、横たわったキルルの死体を見下ろし、



「騙す相手を間違えたな。自作自演乙」



遥希は思い出していた。キルルの称号について。



 アーガルドの称号の時に称号の有無が分かったことが大きいのだろう。



 遥希はもう一度キルルを一瞥する。



 キルルの手には短剣が握られていた。それは15㎝ほどの、人を殺せるほどの長さのものだ。



 そして、キルルの死体はアーガルドの死体のように、肉が剥げ、その肉が溶けるように消えていく。



「あっ、今の魔物だったかな?」



 遥希は、しまったと言いたげな顔をしていた。



「魔物なら、名前知っておきたかったな。しかし、ステータスまで変えられる魔法とかあんのかよ」



 そのあと遥希は、夜の帳が下りた森を一人で歩く。



 少しばかり歩くと、森が開け、広い草原が広がっていた。



 その草原の上には、今にも零れ落ちそうな星が、まるで自分の存在を主張するかのように神々しく輝いている。



 元の世界ではなかなか見ることのできないもので、少し感動していた。



 それはきれいに輝いているのと同時に、自分の、人間という生き物のちっぽけさを感じさせるようでもあった。



「もう当分、仲間なんて呼べるものできないだろうな。ってかもうこりごりだわ」



 そういい、異世界に来てから今までの自分の運のなさを鼻で笑い、また一人で闇に溶けていった。

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