58話、魔国
誤字脱字あるかもです。
超音速旅客機『コンコルド』に乗ってから既に1時間が経過した。
道中にクラーケンとの戦闘があり、少し余計に時間を消費したが、遥希たちは無事に魔国に着くことができた。
しかし―――――
「これ、どうやって着陸するんだ?」
魔国上空約200メートル。
遥希は操縦桿を握り、迷走していた。
飛行機の構造は知っている。が、操縦は全く持って知らなかった遥希。
離陸直前にそのことに気付いたが、
『ま、飛んじまえば何とかなるか』
などと、気軽に思っていたのがここにきて凶と出た。
遥希が着陸に戸惑っていると、異変を感じたアウリールたちが操縦室に入ってきた。
「どうしたのだハルキ。魔国はすぐ下だぞ?」
「あぁ、知っている」
「ならなんでまだ降りないんですか?」
「それはだな……」
このタイミングで、『着陸の仕方分かんねぇ。てへっ』なんて言ったらパニックになりかねないと即座に感じ取った遥希は、速攻で言い訳を考えた。
「いや、今魔国に降りても大陸全体の様子とか街の場所とか分からないだろ? 今は上空を飛んでいいるから、それを知るチャンスなんだ」
尤もらしい理由を見つけ、適当に返す。
それを着いたアウリールたちは、なるほど、と納得したように頷き、客席に戻っていった。
「さてと、これからどうすっかな」
遥希は、操縦室と客室を隔てる扉を眺め、溜息をついた。
「誤魔化せたのはいいが、着陸できないことにはどうしようもないしな」
遥希は思考を巡らせ、さまざまな策を思い浮かべる。
とはいっても飛行機を着陸させることができる策は見つからない。
安全に、それでいて不自然がないように着陸させるにはどうするべきか。
「普通に着陸させるのが無理なら、どこかに不時着させるか、それとも風の抵抗を使って飛行機を浮かせるか……。空気抵抗……? あっ」
と、ここで遥希は閃いた。
「絶に着陸させなくてもいいか。どうせ俺がイメージを消せば飛行機も消えるしな」
数分後、下りる地点を決めた遥希は、みんなのいる客室へと足を運んだ。
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「と、言うわけで、いまからお前らにはこれで地上に降りてもらう」
「「「「えっ……?」」」」
そういう遥希が手にしているのは、クラーケンのもとへと降りたときにも使った落下傘。
「お前らにはこれを使って地上に降りてもらう。俺が作ったから安全性は問題ない」
「この乗り物って地上に降りられないの?」
「降りられないことはないが、稼働音が大きすぎるから気づかれる可能性がある」
「なるほど。ここは魔族の領地。という事は攻撃される可能性もあるってことだな」
「あぁ、そうだ。これはある意味不法入国だからバレたらまずい。」
その返答で、最初に質問したカレンとアウリールは理解し、納得した。
だが一方で、解せない、というような顔をしている人物、もとい魔物が口を開く。
「貴様の考えは分かった。だがなぜ気づかれるとまずいのだ? 貴様の実力ならば正面突破できるのではないか?」
「お前は馬鹿か? それとも脳ミソないのか?」
「なっ……!」
絶句しているクラーウェンを横目に、遥希は嘆息交じりに理由を述べた。
「いいか、ここは存在しているのかもわかっていなかった未知の領域だぞ? しかも相手は人間種よりもはるかに強い魔族。それと真っ向から戦えだと? 相手の個々の戦力も組織全体の構図も地理でさえわからないこの状況で? はっきり言って無謀だ。確実に捕まるか殺される」
「確かにそうだ……だが、遥希ならば……!」
「いや、無理だ。断言できる」
「ぐっ……!!」
クラーウェンの言いたいことは分かる。自分を負かした相手がだれかに負けるなどという想像はしたくないだろう。
きっと理由はそれだけではないと思うが、ここでは関係ない。だが、
「いいか。お前は、俺なら突破できる、といったんだ。この意味が分かるか?」
「それは貴様の実力ならば容易いと……」
「それだ。その考えは根っこから間違っている」
遥希はそこまで言うと、不意にクラーウェンに近づき、頭を撫でた。
「なっ……! 何をする!」
「ちょっと話を聞け」
クラーウェンが静かになるのを待ってから、遥希は先程までの苛立ったような表情を引っ込めた。
「いいかお前のセリフの一番の間違いは、俺ならば、というところだ」
「……どういうことだ」
「俺一人でできることなんかたかが知れている。だから俺は、できない、といった。だけど違うだろ?」
春樹はそこで話を切って、ほかの皆を順番に見る。
と、遥希の言わんとしていることに気付いたのか、皆同じように微笑んだ。
「俺は今一人じゃない。アウリールやリリシア、カレン、そしてお前がいる」
そのセリフを聞き、クラーウェンがハッとする。
「今お前が思った通りだ。俺は一人じゃ何もできない。でも今はお前らがいる。と、いう事はだな、つまり」
遥希は少し恥ずかしそうに頭をかきながら呟くように言った。
「みんなでなら大丈夫、ってことだ」
その言葉を聞き、クラーウェンは勿論、アウリールたちまで泣きそうになってた。
遥希はやはり恥ずかしいのか、窓の外を覗くようにして顔が見えないように背を向けた。
反射した窓越しにアウリールたちの嬉しそうな顔が映る。
それを見て遥希は、ちょっとカッコ付けすぎたかな、とため息をついた。
その顔が少し笑っていたことに、本人は気付かなかった。
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「それじゃあ、本題に入る」
その言葉で皆、顔が引き締まった。
「さっきも言ったが、魔国に降りるためにはこれを使う」
いいながら手にした落下傘を持ち上げ、全体に見えるように掲げる。
「これは落下傘って言ってな、今は収納されている状態でわからないと思うが、この両側の糸を引っ張ると閉じてある布が展開して、宙に浮くようになっている」
遥希は言葉を一度切ってから、だが、と続ける
「タイミングを間違えたり、空中で慌てたりするとかなり危険だ。俺が作ったからそれ自体の安全性は大丈夫だが、お前らの操縦が下手だとそれも意味なくなるからな。
いいか? うまく行けば魔国に降りれる。そうでない場合は、言わずともわかるな?」
それを聞いて皆の顔が少し強張る。
つまり、遥希が言ったこととは、うまく行けば何もなく地上に降りられるが、操縦を誤れば地上に真っ逆さま、という事だ。
ましてやここは存在すら不確定でいまだ未知な大陸。落ちて助かる保証もないだろう。
そんな皆の緊張を感じ取った遥希は、まぁ、と続ける。
「俺の指示通りにやれば危険性はそれほどないから」
そんな軽ーいフォローをしてから「早速」とつぶやいて『コンコルド』の昇降口に手をかける。
「よし、じゃあ、行くか」
そうして短期間で最大級な恐怖の空中浮遊が始まった。
この度は投稿が遅れてしまいすいませんでした。
言い訳っぽくなりますが、今回の投稿遅延の理由を述べますと、単純にパソコンが壊れてしまっていたからです。
そして悲しいことに前のパソコンに入っていたデータは全て消え去り、無に帰してしまいました。
まぁ、そのおかげで新しいパソコンに変えられたのですが。
そんなこんなで一か月と半月、久しぶりの投稿なわけですが、今回は投稿遅延のお詫びという事で、話を少し長めに書きました。
こんなことでお詫びというのもなんですが、まぁそういうことです。
と、いう事でパソコンも新調したことですし、また頑張っていきたいと思っております。
以上、市川キキでした!




