56話、海上戦闘
誤字脱字あるかもです!
遥希はカレンもとい、ヘカトンケイルを出した時のクラーケンの表情の変化に気が付いていた。だが実のところ、その変化の原因がヘカトンケイルに関することだけとしかわからなかった。
その理由を知りたいとは思っても遥希自身聞き出せないでいた。それもそうだ。自身が異世界人だということ以外何も教えていない自分が相手の事情だけ知ろうとするなど虫がよすぎる。
どうしたものかと遥希が首を捻っていると、不意にクラーケン声が周囲に響いた。
『オ前ハ、奴ノ知リ合イナノカ?』
「知り合いっていうには会ってからの時間が少ないが、まぁ少しは知っている」
『ナルホド。ソウイウコトカ』
クラーケンは一人納得したかと思うと、次の瞬間、一本の腕を上げ、こう呟いた。
『我ハオ前二戦イヲ挑ム』
遥希は、自分に戦いを挑んだクラーケンの意図が分からなかった。ほとんど謎だと言っていい。
ただ、普通に話していただけに思う。それを思っているのはきっと自分だけでなくクラーケンも同じだろう。今までの会話の内容の一部を除いて。
遥希には、なぜクラーケンが自分に牙をむくのかは分からなかった。きっと何か理由があるのかもしれない。だが、その理由を聞くのは今ではない。今はただ――――――
「いいだろう。その勝負、受けて立つ」
売られた喧嘩を買うことが先決だった。
「さあ行くぞクラーケン。これから楽しもうじゃないか?」
『サア来イ人ノ子ヨ。我二ソノ力ヲ示セ!』
そうして二つの魔力の渦が衝突した。
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いつから戦闘狂になってしまったのだろう。なぜ、こんなにも胸が高鳴るのだろう。日本という争いが少ない世界で暮らしていた自分には分からない。自分のことなのに、この胸の高鳴る理由が見えてこない。だけど、そんな不確かな動機を探す中で、唯一1つ言えることは、
自分ハ血ヲ欲シテイテ、血ガ足リナイトイウコト。
「いくぞクラーケン! 一文字創造、翼っ!」
その言葉は遥希のイメージ通りに具現化し、イメージ通りに羽ばたいた。
「二文字創造、竜巻。一文字創造、雷」
それと同時にクラーケンの目の前に、雷を伴った竜巻が迫る。その竜巻の様はまさしく、雷龍。空に海水を巻き上げ、稲光を発しながらクラーケンに迫る。
『小賢シイ……。ハッ!』
クラーケンは雷龍に向かって津波を発生させた。その津波は雷龍を飲み込み、共に消滅するはずだった。しかし、雷龍は衰えるどころか津波を吸収、巨大化してクラーケンに襲い掛かった。
『ナ二!?』
これには流石のクラーケンも目を見張った。
そのせいか、迫る雷龍に対する反応が遅れてしまい、巨大化した雷龍の攻撃をまともに受け、大きな水しぶきを上げた。
雷龍の放つ熱の波により、クラーケンの周りの海水が蒸発して、クラーケンが見えなくなった。
「やったか。――――いや、この言葉はフラグか」
遥希が一人で喋っていると、水蒸気の中からクラーケンが姿を現した。
『クックック。我ガコノ程度デヤラレルワケガナカロウ』
そう楽しげに笑いながら現れたクラーケンにはダメージが入っているようには見えない。それどころか外傷らしい外傷が何一つ見つからない。
遥希は、なにもんだこいつ、あ、魔物か。と1人心の中で呟きながら、クラーケンとの会話を再開する。
「だろうな。あれだとフラグだし」
『何ノコトダ?』
「いや、こっちの話だ」
クラーケンは『フラグ……。フラグ……』と悩んでいるが、正直遥希には関係なく、少し獰猛な笑みを浮かべ問いかける。
「それよりも、まだやるのか?」
『イヤ、モウヨイ』
「そうか」
クラーケンは、少ししゅんとした遥希を眺め、内心苦笑した。こんな小僧が自分に攻撃を与えたなど考えたら変な話だ。
人の身では抗えない絶対的な力を持つ相手に挑まれ、怯えるでもなくただただ好戦的で、尚且つ平気で戦いを受ける。しかもそれがただの人間とは思えないほどの力を持っていて、少しだけだが自分がおされたなどというふざけた状況。
これを面白い、と思わなくて何と思う。
クラーケンはきっと遥希が忘れているであろうことを口にする。
『トコロデハルキヨ。貴様ハ行クトコロガアルノデハナイカ?』
「あ、そうだった。俺は今から魔国へ行く」
『魔国トナ。何故ダ?』
「しいて言うなら暇だからだ」
『……ソンナ生半可ナ覚悟デ行クナド無謀ダ。アソコニハ我ヨリ強イ者ガウジャウジャトイルゾ』
くだらないことで命を失ってほしくない。
本心を口に出さなかったクラーケンは、自分の身勝手なわがままと遥希の旅路に水を差すようで悪いと思いながら脅すようにそう言った。
それを聞いた遥希は怯えるでも驚くでも、ましてや震えるでもなく、ただ一言、
「上等だ。そうでなきゃつまらない」
そう言い張った遥希の顔には、期待と歓喜が浮かんでいた。
クラーケンより強いものがいるという期待と、それと戦えるという歓喜。
もしかしたら自分が死んでしまうかもしれない、などという想像は一切していないのだろう。その口元には獰猛な笑みが浮かんでいた。
それを見てクラーケンは言葉で説明しきれないほどに震えあがり、そして体が火照った。
無謀、そう思っていた考えが今では、遥希ならやれる、という身も蓋もない考えに変わっていることにクラーケンは気付くはずもなく。
『ソウカ。コレカラノ貴様ノ活躍、楽シマセテモラウゾ』
「あぁ、そうだな。……お前ついてくる気か?」
『無論ダ。コンナ二心躍ッタトキハ生マレテ初メテダ。ソレニ、ココマデノ強者ノ力ノ全貌ヲ見タイトイウ考エハ普通ダロウ?』
「でもお前人化できるのか?」
『ソレモ無論ダ。アヤツ二出来テ我二出来ヌコトナド存在セン』
そういうと、突如クラーケンの周囲にかなりの量の魔力が流れ始めた。
クラーケンは何か呪文を口遊んでいる。その時間は決して長くはなかったが、その間も魔力の流れは相当なものだった。
「もう良いぞ」
膨大な魔力が消えたかと思ったら、今度は前方から女性の声がして思わず反応した。
遥希は少し唖然としながら、その女性の頭から視線をゆっくりと下におろす。
髪は白髪で、腰まで伸びているロングヘア。顔は20前後で大人の女性という感じがする。その発育豊かな胸から腰までのラインがきれいな曲線を描いており、そこから臀部までも同様。全体的に見ても綺麗なモデル体型で、尚且つグラマーなスタイルだ。
その完璧すぎるカラダに加え、雪のように白いきめ細かな肌。その肌が水を弾いて太陽の陽を浴びているのを見ると、綺麗を通り越して神々しいと言った方が正確な表現だ。
「おい? 固まってどうしたのだ?」
「何でもない」
「そうか。ならいいのだが……」
そう、この口調、ここに立っている麗しい神はクラーケンが人化した状態なのだ。
この女性がクラーケンというところまでは、まぁいい。問題はその部分一つじゃない。
「それより一ついいか?」
「なんだ?」
「お前、なんで服着てないんだ?」
「我が服を着る? 服を着ないで何が問題なのだ?」
「その姿だよ!」
そう、問題は1つではない。彼女は今服を着ていない状態。つまり裸なのだ。
確かにあのイカの状態で服を着ていろ、というのもおかしな話だが、それでもこれはあまりにも目に毒だ。……いや、目の保養になるのか?
「兎に角、服を出してやるからそれを着ろ」
「このままでは何かまずいのか?」
「逆にまずくないわけがないだろう?」
「ふむ、そういうものか」
遥希は創造を使い、タオルや服を出してゆく。
クラーケンはそれを拾い、なぜか海に浸けた。
「お前何やってるんだ!?」
「いや、なにって濡らさないとまずいだろう」
「何がか言ってみろ……!」
「濡らさないと干からびてしまう」
「もうお前海に帰れ!」
「なぜだ!?」
こんな感じのやり取りは日が沈むまで続いた。
まぁ、そういっても15分程度なのだが。
投稿が相当遅くなってしまい申し訳ありません!
私事の関係でパソコンを使えませんでした。
長い用事も終わったことですから、投稿再開と行きたいところです。
とはいっても毎週暇なわけではありませんから、とりあえず投稿する間隔を定めたいと思っています。
毎週日曜日の午後10に投稿、という形にさせていただきます。
もしかしたらまた今回のようなことが起こるかもしれませんが、これからもよろしくお願いします。
最後に、ツイッタ―のアカウントを変えました!
@Kk_Syousetu です!
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ツイッタ―の活動内容ですが、毎週月曜日辺りに次回予告なる者をやりたいと思います。(フォロワー0の場合はしません)
それではまた来週の日曜お会いしましょう。




