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怠惰でチートな異世界創造者(マジッククリエーター)  作者: 市川キキ
第3章、魔国へ
52/62

52話、旅の始まり

誤字脱字あるかもです。

「おい」

「なぁに?」

「なぁに? じゃねぇわ! お前なんてことをしてくれたんだ!」

「いや、何もしてないけど?」



 ニーグスやその他の人から寒い視線を送られた挙句、「もう帰れ」と言われたあの瞬間。本気で泣きそうになった遥希。



 その時のヘカトンケイルは、弁解もフォローもせず、ただニコニコと楽しんでいた。



 遥希は、「もう我慢ならん!」と言ってヘカトンケイルを放置してきたつもりだったのだが、いつの間にか背後に立っていた。しかも露店の食べ物を持って、だ。



 早く逃げようと、全力でその場を後にしようとしたのだが、カレンに袖を掴まれた挙句、涙目&上目使いという最凶コンボをされて逃げれなくなってしまった。



 中身がランクSの魔物だからと言って、外見や口調は10前後の子供なのだ。泣かれでもしたらこっちが困る。



「っていうか、そのお兄ちゃんっての止めろ」

「いやだ!」

「はぁ、呼び名何んてどっちでもいいが、とにかくついてくるな。お前と一緒にいるといろいろと困るんだわ」

「そうなの? なんで?」

「一番の理由は、俺には既に連れがいるってことだな。お前のことも説明しづらいし」

「そうなんだぁ。じゃあ一番じゃない理由は?」

「…………」

「お兄ちゃん?」



 正直、言いづらかった。妹を思い出してしまうから、など。



 これでは遥希が妹の存在を忘れたいと思っているように聞こえるが実際はそうじゃない。遥希は麻痺しているのだ。



 この世界に来て、アウリールやガヴァロンなどの獣種、リリシアやニーグスなどの人間種と少なからず関わってきた。



 なんだかんだでその人たちとは仲良くしている。この世界に半分溶け込んでいるみたいに。



 だがそれが問題なのだ。



 この世界に慣れてきた、といことは地球での出来事が薄れて来ているということだ。



 記憶が失われているわけではない。家族の存在を忘れるなんて論外だ。だからと言って今何かができるわけではない。地球に戻りたくても妹に会いたくても所詮は叶わない夢でしかないのだ。



 この世界に来てから遥希は躊躇がなくなってきているような気がしている。人や魔物を殺すという行為だ。人や魔物関係なく、遥希は命を奪ってきている。それも自らの意志と身体で。



 だから「生命を奪う」ということに関して感覚がおかしくなっている。邪魔なものは排除するし、不都合があれば無理やり合わせる。それが結果的に生命を消すとしても。



 だが今重要なのは生命の価値観だけでない。



 遥希は妹を忘れたいわけではない、だが、必然的に忘れてしまうのだ。それはどの世界でも同じで、いつか記憶は朽ちてしまう。



 それこそが一番の恐怖。完全に忘れてしまったら、自分を止めるストッパーがなくなってしまう。そう考えると無性に怖くなるのだ。



 だが、もしかしたら忘れてしまってもいいのかもしれない。なぜなら、家族の顔を思い出す度に自分が自分じゃなくなってしまうのを実感するから。今の遥希を見て怖がられたらどうしよう、

という不安が消えるから。



 遥希の頭の中は、黒と白の絵の具を中途半端に混ぜたようにグチャグチャになっていた。完全に混ざっておらず、黒と白が一つに定まっていない。



 妹を忘れたくはない。でも忘れてしまえば結果的に楽になる。だが忘れたくない、でも楽になりたい。だが、でも――――



「お兄ちゃん!!」

「っ…………!!」



 遥希は妹関連のことで頭がいっぱいになっていたのだろうか。ヘカトンケイルの声に全く気がつかなかった。



「……なんだったっけ?」

「一番じゃない理由を聞いたんだけど……。まぁいいや」

「そう……か、悪いな」

「じゃあ、お兄ちゃんの連れに挨拶しにいこっか!」

「あぁ、そうだな。アウリールに挨拶を……って何言ってるんだ?」

「だから、挨拶を」

「そうじゃなくて!」



 挨拶をするかしないかのどうでもいいやり取りは日が暮れるまで続いた。



 結局、遥希は恋について考えていたことを忘れていた。中途半端に混ざったままの絵の具を放置したまま。乾燥して墜ちなくなることも知らずに。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「よし、じゃあ魔国に行くぞ」

「わかった!」

「わかりました!」

「はい、お兄ちゃん!」

「だが一点、出発する前に確認したいことがある」



 翌日、なんだかんだでヘカトンケイルがパーティーに加わっていた。ヘカトンケイルのことを問い詰めてこないということは、何かを察してくれたらしい。有難いことこの上ない。



 そしてこのまま魔界に……とはいかなそうだ。なぜなら、1人、変なのが混じっているからだ。



「リリシア」

「はい?」

「お前は帰れ」

「え!? 何でですか!?」

「いや、なんでじゃねぇよ? 一国のお嬢様が何言ってんだ」

「これはこれ、それはそれですよ!」

「いや、んなもん関係いないからな」

「ハルキさ、何をおっしゃっているのですか!? 冒険するのに王女も何もありませんよ!」

「アホかっ! 大有りだわ!」

「ありません!」

「いや、だからな?」

「ありませんって!」



 頑固すぎる。遥希はここにきて初めてリリシアの性格が見えた気がした。



 遥希はそこまで子供じゃない。それにリリシアの頑固さも分かったところで、仕方なく受け入れの態勢に入る。



「わかった。連れて行こう」

「本当ですか!?」

「あぁ、だが1つ条件がある」

「はい?」



 リリシアは歓喜に満ち溢れた顔を少し抑え、遥希の条件とやらに耳を傾ける。



「ニーグスには言ってあるのか?」

「はい、それは勿論!!」

「………はぁ、分かった」

「やったぁ! これからよろしくお願いしますね!!」

「あぁ…………」



 遥希は渋々といった形でリリシアを受け入れた。一国の王女を冒険に連れて行くなどあまり乗り気ではないが、この際仕方ないだろうと踏ん切りをつける。



 遥希は、そういえば、と一つの案件を思いだした。



「そうだヘカトンケイル」

「なにお兄ちゃん?」

「お前の名前、決めないとな」

「え?」


 案の定、困惑の表情を浮かべている。



 それを見た遥希は、名前を付ける理由を述べる。



「お前に名前を付ける理由は、ヘカトンケイルと呼ぶには名前が長いのと、俺たち以外の前で呼べないことだ」



 ヘカトンケイルはSランクという、魔物の中でも高いランクにいるため、知名度が高い。



 そのため人の前で『ヘカトンケイル』と呼ぶにはリスクが高く、最悪、兵士に通報されて死刑になってしまうかもしれない。



 それらを考慮すると、名前を付け、本来とは違う別名で呼ぶ、という結論に至った。



「そういうわけで、お前の名前はカレンな」

「カ……レン……」

「あぁ、そうだ。これからよろしくな」

「……うん!!」



 ヘカトンケイルもとい、カレンは嬉しそうに顔を綻ばせている。



 とりあえずこれで準備は整った。遥希は三人の顔を順々に眺めると宣言した。



「それじゃあ魔界に向けて出発だ!」

「「「おーー!」」」



*おまけ*



カレン「そういえばお兄ちゃんって国王に呼ばれてたよね?」

遥希「あぁ、そうだな。誰かさんのせいで切り上げられたが……」

カレン「笑顔で拳を作るのは怖いよ!」

遥希「お前のせいだろうが」

カレン「あ、でも結局話ってなんだったんだろうね?」

遥希「さぁな。聞いてみないと分からん」

カレン「え? じゃあ出発したらまずいんじゃないの?」

遥希「いや、大丈夫。あいつにはケータイを持たしたから」

カレン「あ、そ、そうなんだぁ。ふ、ふーん」

遥希「そうだ、だから問題ないぞ」



遥希(……カレンの奴、知ったかぶったな)

ヘカトンケイル改めカレン。属性はロリでお転婆ですね。

なぜヘカトンケイルが女の子なのか、それは…………ご想像にお任せします。

あ、別に考えていなかったわけではありませんよ? いえ、本当に!

流れでリリシアとカレンが仲間になりました。

「ん? これでいいのか?」と私自身も感じたのですが、まぁいいでしょう!!

何がいいのか、とかいう具体的なことは聞かないでね!


幾つかの訂正のコメントをいただきました。

今すぐというわけにはいかいので、後日直していきたと思います。


因みにニーグスに携帯電話を持たせたというのはうそです。

遥希が面白半分で言ったということで。

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