4話、瞬殺
ストーリー上、不自然な点が見つかったので修正しました。
「そういえば俺、自己紹介してないな」
男が突然喋りだした。正直、どうでもいい。
「俺の名前はアーガルド・カーバント。獣国の七雄士の一人、韓の称号を貰っている」
「韓、というのは?」
「まあ、簡単に言うと序列だ。ちなみに韓は上から七番目、つまり序列七位だな」
「なんだ、最下位か」
「なにそのあからさまの落胆ぶり!?」
あまり興味がなかったが、流石にビビった。最下位だが、序列七位は強者だな。
一応ステータス、視ておくか。
NAME アーガルド・カーバント(七雄士、韓 キルルの護衛)
LV 89
HP 2330
MP 644
ATC 2011
DEF 1872
SPE 1598
INT 446
LACK 31
NEXT 14451
EXP 376778
KILL 七雄士の籠手
ARMOR 七雄士の鎧
MAGIC イグナイテッド 火 初級 (4)
バーニング 火 中級 (3)
SKILL 獣力解放、7 獣赫解放、2 熱雲剣、6 熱陰極剣、3 熱解離、5 精霊召喚
(強いことは強い。スキルも名前からしてかなりのものだろう)
獣国。獣耳の奴らが集まる国なのだろう。それにあの耳は獣人という人種の証で間違いなさそうだ。
体力、攻撃力、防御力が高いのはきっと近距離戦を得意としているから。それはマジックとスキルでも言えること。
技名の隣の数字、あれは熟練度みたいなので解釈はあっているはず。何となくだが。
運は生まれつきのもので、レベルがアップしても変わらないのか。上がったとしても少しだけだろうな。
(ステータスの数値は高い。一つだけ例外があるみたいだが)
アーガルドたちは急に黙り込んだ遥希を見て首をかしげている。と、そこに複数の気配。
「どうやら囲まれたみたいだぜ」
「そうみたいですね。1,2,3……。7人いるみたいです」
「7人か……。少し厳しいな」
賊の頭上には、15と表示されている。
狙いはキルルだろう。王族だし。俺には関係ない。ないんだが、
「あいつらは俺がやる」
その遥希の発言に二人は驚いている。いきなりの申し出に戸惑っているようだ。
「よし。アーガルドはキルルを守っていろ」
そして遥希は笑う。獰猛に。
「殺ってくる」
「殺すなよ!?」
「……わかった」
人の殺傷はやはり禁忌らしい。少し残念がるが、笑みは崩していない。
「ちょっと言ってくる」
ちょっとコンビニに行ってくる、的なノリで飛び出す。
「一文字創造、穴、穴、穴、穴、穴」
穴、を5回がけし、目の前の二人以外を転倒させる。
「一文字創造、刀、風、雷」
遥希は刀を左手に持ち、風に乗り行動、動作を高速化、そして刀に雷を纏わせる。
瞬時に敵の後ろに回り込む。そして刀の峰をしたにし、右腹部に一閃。標的になった敵は刀の打撃と雷の感電で、意識を刈り取られる。
「まずは一人」
その間に転んでいないもう一人が遥希に切りかかる。が、その斬撃は目に見えない不可思議な何かによって弾かれた。
「一文字創造、壁」
その隙を遥希は逃さない。本当は首を狙いたいのだが、肩にしておく。
体重移動をし、肩に突きをお見舞いする。その突きは皮だけを切り裂き、先ほどと同じように感電させる。
「二人目」
その間僅か3秒。あっという間だった。
「次は……」
そう言うと同時に移動を開始。しかし相手も負けてはいない。
「「「「「バーニング!!!」」」」」
残った五人、全員の全力攻撃。火属性の中級呪文を放つ。流石にまずいと思ったのか、キルルは、
「危ない! 避けて!」
と叫ぶが、遥希は、
「俺の後ろにはお前らがいるだろ。避けるなんてバカみたいな策はとらない。それに……」
遥希の目の前にはすでに魔法が迫ってきている。
遥希は動かない。それどころか手をバーニングに翳す。ただそれだけしかしない。何故か、それは、もう勝ち筋が見えているから。これ以上の動作はしなくていいから。
魔法が当たる。そして遥希は死ぬ。全員の頭にはその過程と結果しか見えていない。だが遥希は確信をもってこう言う。
「俺の戦いは、始まる前に勝っている」
遥希の手にバーニングが当たる。そして、
ジュッ
その音はここにいる全員が聞いた、火が水をかけられて消える時のような音。
「それはどんな状況でも関係ない。奇跡でも偶然でもないなにか。それは」
翳した手から夥しい量の水が放射される。それは残りの五人を飲み込む。
「必然だ」
その言葉と同時に水が弾ける。それは太陽の光を浴びて眩しいほどに輝く。
賊の七人は地面に突っ伏している。身動き一つ取らないところを見ると気絶しているようだ。
「次来るときはもう少し人数を多くしろ。無論、それでも叩き潰してやるがな」
キルルとアーガルドは呆然と立ち尽くしている。
第3皇女を襲った賊は何者かに潰された。7人が10秒ほどの時間に。
この話は獣国の王族の耳にも入ることになる。
そしてこれも遥希が後に英雄と呼ばれる所以である。