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怠惰でチートな異世界創造者(マジッククリエーター)  作者: 市川キキ
第2章、光と闇
49/62

49話、日常

誤字脱字あるかもです。

 春樹の放った流星群とヘカトンケイルの腕が接触、強烈な爆発音と溢れんばかりの光、それに続き爆発によって引き起こされる猛烈な爆風。それは辺りの木々を根こそぎ吹き飛ばしてしまうほどの威力を持っていた。



「うわあぁぁぁぁぁ!!」

「ぐっ……!!」

「なんだ、なんなんだ!?」



 所々で状況についていけない冒険者たちの驚きと困惑の合わさった悲鳴が聞こえる。それは光と爆風が収まると同時に静かになっていき、静寂が訪れる。



 冒険者たちが見たものは空に浮かぶ遥希の姿と、流星群を受けてもなお原形を留めているヘカトンケイルだ。



《驚いたぞ。これほどまでとはな》

「俺の方こそ驚いた。倒せるまではいかなくても、戦力はかなり削れるはずだったのに」

《我が本気を出せばどうってことはない。だが、本気を出さなければ消え去るところだったわ》



 遥希の目の前に佇むSランクの上級魔物、ヘカトンケイル。それは遥希の魔力のほとんどを注ぎ込んだ流星群を受け、立っているだけならまだしもほぼ無傷に近い状態で現存していた。



 これには流石の遥希も動揺を隠しきれない。まさか流星群、そのものを消してしまうなんて思いもしなかったからだ。



「全く、バケモンだな」

《そなたが言うか》

「ふ、それもそうか」



 二人、正確には一人と一体は相手の戦闘力を称えるかのように笑った。それは普通ではありえない光景だとも知らずに。



 それにヘカトンケイルの遥希を呼ぶ言葉が「貴様」から「そなた」に変わっていた。それはヘカトンケイルが遥希の力を認めた証である。



 そしてひとしきり笑った後、遥希は当初の目的について話を切り出した。



「それでこの勝負は」

《無論、そなたの勝ちだ》

「そうか、そうでないと困る」

《我も久しぶりに熱くなってしまったため少し休養が必要と判断した。それに》

「それに?」



 ヘカトンケイルは少し楽しげな弾んだ声で語る。



《そなたの言った勝利条件には満たなかったが、我が最初に言ったことは満たした》

「それは、我に力を示せ、だったか?」

《そうだ。それは既に満たしている。なら約束を守らなければ名が廃るだろう?》

「魔物が何を言っている」



 遥希の尤もな突っ込みにヘカトンケイルは声を上げて可笑しそうに、楽しそうに笑う。



 と、遥希に背を向け、海岸の方向を眺める。



《……そなた、名を何という?》

「ハルキ、ハルキ・シンザキだ」

《ハルキか……。覚えておこう。それでは我は帰るとしよう。また一戦交える機会うを楽しみにしている》

「あぁ、じゃあな」



 ヘカトンケイルは遥希に別れの言葉を告げると、元来た道をゆっくりと歩き出す。



 遥希はヘカトンケイルの姿が地平線の彼方に消えるのをじっと見つめていた。そして姿が見えなくなった頃、



「次は勝つ。待っていろ」



 ヘカトンケイルの背に、小さな声でそう告げた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 現在、遥希は宿の前にいた。離れていたのは数時間のはずなのになぜかとても懐かしく感じる。



 いつもの街にいつもの宿、いつもの店主にいつもの扉。ただそれだけなのに、見ているとジーンとしてしまう。



 そして止まっている部屋の前まで来て、ゆっくりとその扉を開く。すると、



「ハーールーーキ――!!」

「ハルキさぁぁん!!」



 アウリールとリリシアの元気な声が聞こえる。



 と同時にまだ部屋に入っていない遥希に向かって両手を広げて駆け寄ってくる。



「…………姿気透過(インヴィジブル)



 すると二人が遥希に着く前に、遥希の体が透ける。



 遥希というゴールを見失った二人は、仲良く扉にぶつかり勢いで廊下に飛び出す。



「ハルキ!! 避けるなぁ!!」

「うぅ、ハルキさん、酷いです……」

「へぇ、見よう見まねでやってみたが、案外できるものなんだな」

「話を聞け(聞いてください)!!」



 自分たちをテキトーにあしらい、魔法を使えることに感心していた遥希に、二人は説教わがままを始めた。



 これだからハルキは、とか、全くハルキさんは、とか、何かとても理不尽な気がする。



「兎に角、その、は、ハグは避けるな! いいな!?」

「あぁ、分かった」

「「それじゃあ早速……。えいっ!!」」

姿気透過(インヴィジブル)

「うわっ!!」

「きゃっ!!」



 二人はまたも勢い余って壁に頭からタックルし、その場に蹲る。



 そして何かを訴えるかのように涙目で遥希を睨む。



「避けるなと言っただろう!?」

「いや、今のは抱擁ではなくタックルだったろ?」

「お前は何を言っている!?」

「そうですよ!! れっきとしたハグをしようと……ってベットに入って何してるんですか?」

「ん? ベットに入ってすることなんて一つしかないだろ?」



 遥希の無駄な言い回しに、二人は、まさか、と顔を赤くする。



「は、ハルキ……。ここでは……な?」

「そ、そうですよ。ここはまずいって言うか……何というか……」

「は? ベット以外のどこでするんだよ。外とか嫌だぞ」



 外で、という言葉にさらに顔を赤く染める二人。赤くなる意味が分からないぞ。



「い、いや……でもな……」

「アウリールさんの言うとおりです……よ……」

「意味が分からないな。とにかく俺は寝るぞ」

「「……は?」」

「いや、寝る、と言ったんだが、何かおかしいか?」



 二人はその言葉を聞いてあからさま過ぎるぐらいに動揺していた。



 アウリールは目を丸くし、リリシアは口を開けて呆然としている。



 そして少しずつ正気を取り戻す、と同時に顔をさらに赤く染めた。熟したトマトのようだ。



「まぁいい。俺は寝る。また明日な」

「「………」」



 遥希は二人の返事を待たずに横になる。と疲れていたのかすぐに寝息を立て始める。



 その後二人はどうすればいいか分からず、興奮と羞恥で顔を染めたまま朝を迎えた。

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