48話、全力
少し急いだので文章の構成がおかしい部分があるかもしれません。
誤字脱字あるかもです。
嵐の吹き荒れる中、1人の少女は虚空を眺めていた。
しかしそれは「他人から見たら」であり、実際は、少女が自ら作り出した探索、偵察に使われる無系統魔法『偵察面蝶』を使い、構築した魔法ビジョン(正式には魔力媒材映像投影法)で、ある少年の戦いを観賞していた。
魔法ビジョンの中でその少年はSランクの魔物と対峙していた。少年と対峙している魔物は、魔界の中でも上位に存在している上級魔物だ。
少女は魔法ビジョンに映っている少年を恍惚とした笑みを浮かべながら見つめていた。
と、そこに自身の体内に覚えのある魔力信号が流れてくる。しかし、それが意味する情報は魔法ビジョンで得ているためいちいち気に掛けるほどのものではない。
だが、その魔力信号はもう一つの情報を少女に伝える。
少女はそれを感じると「ふふっ」と小さく微笑んだ。
「もう気づいたのね。流石は―――――」
その後も少女は嵐の吹き荒れる中、1人少年の行く末を見守るのだった。
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「こっちから行くぞ! 二文字解放、大剣、剛腕、瞬速!」
スキルを発動したと同時に遥希の体は赤色と青色に不自然に点滅し始め、腕と脚に歪で黒く光る機械が装着され、広げた手には遥希の身の丈ほどある大剣が顕現。
剛腕と瞬速のイメージは機械だ。機械とはこの場合、科学製品を意味するところで、今回遥希は機械によって求める力を顕現させた。
今の遥希は地球で流行ったター〇ネーターだ。
腕に付いた機械で腕力を向上、脚に付いた機械でロケットの要領で加速。ヘカトンケイルの背後に瞬時に移動し、大剣を一閃。
対するヘカトンケイルは、遥希のスピードに一瞬驚きを露わにしたがすぐに立て直し、一本の腕でその大剣を防ごうと横に構える。
が、遥希の大剣は剛腕の恩恵があり、ヘカトンケイルの腕を根元から切り落とした。
ヘカトンケイルが怯んでいるうちに、遥希はスキルを発動する。
「三文字解放、大爆発!!」
それはヘカトンケイルの顔面で発動。しかしヘカトンケイルはそれを予知していたかのように、二十の腕で防ぐ。それでも完全には無力化できなかったようで、何本かの手が引き千切れ吹き飛ぶ。
遥希は遥希で気力がごっそりと減った気がした。今の大爆発にはそれほどの魔力を注ぎ込んだからだ。これくらいで尽きてしまう魔力ではないが、なかなか辛い。
《フハハハ八ッ!! 愉快、愉快だ!!》
ヘカトンケイルの声が大音量で脳に響く。それほど楽しいのだろう。
《今度は我が動くとしようか!》
ヘカトンケイルは先ほど冒険者にやったように、森を掬い上げ粉々に砕き、その無数の手で投げてくる。その飛んでいるものの大きさは拳一個程度だが、人間はそれが当たっただけでその部分が破裂し、死んでしまうだろう。
遥希は少し顔を歪めた。が、すぐに言葉を紡ぐ。
《これが捌き切れるか人間の子よ!!》
「くっ……! 二文字解放、突風!!」
無数の弾丸に対し、突風で応戦。
遥希は真っ直ぐ飛んでくるその弾丸に、真正面に突風を当てるのではなく、横にぶつけることで軌道をずらすように考えた。
しかし、予想より数が多く速いのか、突風で防ぎきれないものが数個飛んでくる。
遥希はそれを称号で強化された動体視力で回避していく、が、全てを捌き切れないと判断した遥希は直撃するものだけを避け、最低限の移動と回避で弾丸を避ける。ただ、躱し切れなかったものが体を掠っていくことが少なくはなく、ヘカトンケイルの攻撃が終わるまでに体はボロボロになっていた。
それでもヘカトンケイルはほどんど避けれたことに感心したのか、何やら楽しげな声を上げた。
《フハハハッ!! いいぞ人の子!! ここまで耐えられるとは思っていなかった!!!》
「そりゃ……どうも………」
ヘカトンケイルに対しての返答はそれしかできなかった。回避に集中していた挙句に脚に装着した機械の常時による使用や、大爆発での魔力の消費などで、疲労が溜まるばかりだ。
それでも遥希は戦うことを諦めてはいない。何故か、と聞かれても答えられないが。
どうでもいい考えを頭の中に保持したまま、遥希は目的を1つ思い出した。
「フ、フフフフフフ」
《どうした人の子よ?》
「そういえば俺」
《ふむ?》
「まだ本気を出してないな」
遥希の目的は二つ。一つ目はニュクロスから手を引いてもらうこと。そしてもう一つは、自分自身の今の限界を図ること。
「ヘカトンケイル、一つ提案がある」
《なんだ、申してみよ》
「俺が今から魔力を振り絞り、全力の攻撃を叩きこむ。もしそれでお前の腕を半分以上削れたら俺の勝ちにしてくれ」
《別に構わぬが、いいのか?》
「あぁ、構わない。それじゃあ行くぞ」
遥希はヘカトンケイルの了承を得てから魔力収集と収束を開始。
体中の魔力を活性化させ、気絶しない程度の魔力だけ残しその他を掌に収束する。
ヘカトンケイルはしばらくその様子を見ていたが、遥希のある変化に気付く。それはヘカトンケイルだけではなく冒険者以外のルカールやアルス、ブラドマスも気が付いていた。
本人は気づいているか分からないが、体中から白と黒の光が放たれていたのだ。それは肉眼で見ることはできないが、魔力操作に長けた者ならよく見える。
「……ルカール、今の見えたかい?」
「え、えぇ。なんなのあれは……」
遥希の変化はそれだけではなかった。一瞬、ほんの一瞬だけ背中に羽が、頭に角が生えた気がした。
それは不規則に点滅すると、霧のように霧散した。
「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」
遥希は掌に凝縮した魔力の球を生成した。それだけでSランク冒険者の数倍に匹敵する量だ。
そして魔力を練り終わると、その光の球を自身の体に押し込むようにして当てる。そして――――
「三文字解放、流星群っ!!!!」
一瞬、空が光ったかと思うと、そこから大小様々な大きさの隕石が落ちてくる。
こぶし大の大きさから、高層ビルを遥かに凌駕するものまで。一つ一つの大きさは不規則で不安定だが、それらは確実に相手を殺せるほどの威力を持っていることに誰もが感じる。
《……これは何と…………!!》
ヘカトンケイルはそう呟くと、全ての手を前に掲げた。
そしてその手と流星群が直撃。その直後、世界は白銀の光に包まれた。
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