46話、アルス・キャリン
誤字脱字あるかもです。
ステータスや持ち物の確認が終わった遥希は、ヘカトンケイル戦に参加するために、決められた時刻に決められた場所へと足を運んだ。
そこにはすでに数名の冒険者が集まっており、その中にルカールの姿もあった。どうやらルカールは他のSランクと話をしているようだ。
とはいっても、遥希がルカールに目を向けたのは一瞬で、視線など感じないはずだが、そこはSランクというべきなのだろう、ルカールはこちらに気付き近づいてくる。
「はぁい、ハルキ。久しぶりね」
「あぁ、1週間ぶりか?」
「……へぇ、分かってたんだ」
「当たり前だろ」
遥希とルカールが顔を合わせたのは、1,2か月前のあの日。遥希が冒険者登録のためにギルドにいたあの日だ。実際その日に初めて顔を合わせてから今まで、面と向かって話をすることはなかった。だが遥希は、ルカールの尾行が付いていることにはその日から気づいていたし、その尾行が今日から丁度1週間前に消えたことも感じていた。
遥希の先ほどのセリフには少し挑発の意味もあったのだが、ルカールはほんの一瞬目を細めるだけで、挑発に乗るどころか、動揺をそれまでに抑えていた。
Sランクは感情操作も上手いんだな、と心の中でそう称賛した遥希だった。
遥希は一度話題を切り替える意を込めて、そういえば、と話を切り出す。
「ルカールはさっき誰かと話をしていたようだが、ほかのSランクの奴らか?」
「あの一瞬でよくわかったわね」
「それも当たり前だ」
遥希にとっては、一瞬や刹那はその限りにあらず、だ。「半悟者」や「光速キラーMax」のおかげで、俊敏性があり得ないほど上がっており、それは身体的な効果だけではない。実際遥希はこうして目で見て、それを頭脳で理解する、というように肉体と精神がそれに対応しているのが分かる。
それに加え、「半悟者」と「創造者」で魔力量や賢さが上がっており、周囲の魔力の流れやその量を感覚的、直感で把握することができる。
遥希はその情報から得たことをルカールにぶつける。
「それとな、そのSランクの奴らがこそこそと俺の方を見ているのも分かっている」
遥希のこの言葉には、流石のSランク様も驚いたようで、驚愕と呆然からくる動揺を隠せていない。完全に狼狽えているようだ。
遥希は少し殺気を込めてそのSランクに警告を出す。
「そこにいるのは分かっている。でてこい」
「全く……。大した少年だよ」
遥希が指差したところの地面が不自然に歪み、その歪みの中から一人の青年が出てきた。
銀髪蒼眼の少年で、歳は遥希より5、6歳上。髪は肩口まで伸びているセミロングでその眼は水や氷とは違う、蒼穹の空のように青い。顔立ちはかなりの美形、俗に言うイケメンだ。腰には細身の剣、細剣を下げている。
「私の名前はアルス・キャリン。君の存知あげたとおりギルドランクSだ。巷では「地爆王子」と呼ばれているね。少し恥ずかしい気もするけど」
アルスはそう言い少し頬を朱に染める。その顔を見ると少し女っぽい、というか女に見える。
遥希はほんの一時、くだらない考えをしたがすぐさま我に返り、同じように名乗る。
「俺の名はハルキだ。ギルドランクはA」
「ハルキ……。そうか、君があの「迅瞬者」か。噂は聞いているよ」
「……なんだそれは?」
「君自身は知らないだろうけど、この辺りではかなり有名だよ? 2か月程度でギルドランクをAにした強者がいるって」
「…………」
噂というのは、噂されている張本人が一番気が付かない、というのはこういうことか。
遥希は絶句するのと同時に、噂とは怖いものだと、確信した。
そんな遥希の様子を見て、今まで黙ってやり取りを見ていたルカールや、アルスが可笑しそうにクスクスと笑った。
そんなやり取りをしている間に、出撃の時刻になったのだろうか。辺りはしんと静まり返り、1人の男性の声が響いた。
「冒険者の諸君、この度はいきなりの収集に応じてくれて感謝する。私はこの街、ニュクルスのギルマス、ブラドマス・ガラエルドである」
その瞬間、辺り一面大歓声に包まれた。その冒険者の口からは、歓喜や賛美の声などが上がっている。
その歓声は、ブラドマスの合掌と共に一斉に止まった。
「今、この瞬間から諸君らは国から依頼を受けたことになっている。それが意味するところは分かるな?」
国からの依頼、それは国に多大なる影響を与える非常事態にのみ発令される。この依頼の大体は、戦争や高ランクの魔物との戦闘が主な内容になっている。勿論、強制ではない為依頼を放棄、又は破棄することができる。だがギルドランクA以上のものは実力が確定しているため強制となる。しかしそれは国内にいるときにだけ発生するものであり、国外にいた場合は対象外となる。
これが意味するところとは、つまりこの国の危機ということに他ならない。しかし危険であるために強制はしない。それは普段の依頼と比べて難易度が高く死亡率が高いからだ。その代り報酬は普段の依頼よりも比べ物にならないくらいの多額なものだ。
「それでは、ヘカトンケイル戦、開始!」
その言葉に遥希は、この世界に来て初めて気持ちが高ぶった瞬間だった。
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