表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怠惰でチートな異世界創造者(マジッククリエーター)  作者: 市川キキ
第1章、始まりと終わり
4/62

3話、無意識な英雄誕生

「あ、あの……」

「ん?」



 そこには一人の女性が立っていた。大人か子供、どちらかというと子供だろうか。



 顔を見ると、かなり美人だ。目はクリッとしていて大きく、肌は白い。しかし不健康そうな肌色ではなく、艶がありふっくらとしている。真珠のような肌とはこのことを言うんだろう。



 髪は肩口まで伸びているショートで水色をしている。しかし、その子の頭には何やら不可思議なものがついている。



「獣耳……?」



 その言葉に少女はビクッと肩を揺らす。が、遥希の変わらない表情を見て少し安心したのか、胸を撫で下ろす。



「わ、私の名前は、キルル・ガウニール……です」



 相手が名乗ったので、遥希もそれに倣う。



「俺の名は。ハルキ・シンザキという。まあ、とりあえずよろしく、だな」



 そう言いつつ遥希は、一文字創造(シングルキャスト)を発動。



 どうやら声に出さず頭の中で言っても効果は発揮されるらしい。



 そうして発動した文字は、視。



 遥希自身にステータスがあるのだから、この世界の人にもあるのだろう。



 勝手な推測の上に、視えても視えなくてもいいやと思っているのだから、逆にキルルに申し訳ない。



 もちろん、遥希自身申し訳ないなど微塵も思ってない質が悪い。



 NAME キルル・ガウニール(獣王の第3皇女)


 LV 5


 HP 101


 MP 72


 ATC 51


 DEF 56


 SPE 94


 INT 79


 LACK 42


 NEXT 15


 EXP 30


 KILL


 ARMOR


 MAGIC


 SKILL 魔物隷属化(モンスターマスター)(1)



(王族なのかこいつ。いやそれにしても魔物隷属化(モンスターマスター)か……。効果は何となくだがわかる)




 思考を巡らせている遥希にキルルが声をかける。




「先ほどはありがとうございました!」



 と、キルルは素直に感謝の気持ちを述べる。まあ、遥希にしても下心があった、否、下心しかないわけだが。



「いや、助けたのは自分のためにやったこと。気にすることはないぞ」

「え? あ、はい……」



 遥希は自分に利益があるからやったと言ったつもりなのだが、なぜかキルルは顔を赤く染めて俯いてしまった。



(こいつ、キルルといったか、何か意味をはき違えている気がするが……)



 今はそんなことどうでもいいから、当初の目的を果たそう。



「少し聞きたいことがあ」

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」



 誰かの突然の介入に遥希の言葉が中断される。



「この賊め! キルル様に近づくなどなにご……と…………」



 どうやら介入してきたのは40代前半くらいの歳の男だった。



 体は筋肉質でかなりゴツイ。世間一般ではゴリマッチョと呼ばれている部類の人だ。



 その男はハルキに文句を言おうとした。言おうとしたのだが、ハルキの今の状態と、周りの肉片を見てフリーズする。



 大量の返り血を浴びて、服の大半を赤く染めた遥希と、大小さまざまになってそこら中に転がっている何かの肉片。



 少しの間、沈黙が訪れる。が、その沈黙を破ったのは遥希だった。



「いきなり出てきて黙るなよおっさん。喜怒哀楽激しすぎやしないか?」



 少し挑発するように言ったのだが、男はまだ固まっている。



「まあいいや。ところでキルルとやら。本題に入らせてもらう」

「は、はい」



 彼女はどうやら固まったままの男を心配しているようだ。



(ちっ。これじゃ話ができねえな)



 遥希は男の頭上に向けて手を伸ばす。そして、



一文字解放(シングルキャスト)、水」



 呪文と同時に向けた手の先、男の頭上にバケツ一杯分ほどの水が出現。遥希が手を降ろすと、その水は重力に従い、男にかかった。



「%#’%#$&$%!?」



 男はよくわからない声をあげて我に返った。



「てめえなにしやがる!」

「うるさい、黙れ、ついでに散れ」

「ぁんだとガキ!!」

「それでさっきの話の続きだが……」

「無視すんなぁ!!」



 遥希は内心、面倒なおっさんだな、と思った。もちろん声に出すとまた何か言われそうなのでやめておく。



「わかった。わかったから少し落ち着いてくれ。な?」

「私からもお願いします」

「ぐっ、キルル様がそう仰られるのであれば……」



 どうやら男は納得したようだ。これで話が進められる。と、その時



 ぐうううううぅぅぅぅぅぅ……



 遥希の腹から雷鳴が聞こえた。



 キルルはふふっと笑うと、



「先に何か食べましょう。話はその時で」



 と言い、男と一緒に歩き始めた。



 この時から何か嫌な予感がしていた。しかし腹が減った遥希はキルルたちを追いかける。



 この出会いは後に、英雄誕生と呼ばれることになるとは知る由もなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ