37話、科学発明品
二度あることは三度ある、とよく言ったもので、今回も余談が過ぎました……
想像しながら物語を作るというのは存外楽しいものですね!
誤字脱字あるかもです
「な、第2皇女……?」
目の前の少女は人間国第2皇女と、確かにそう名乗った。
「はい!」
この状況に何も思うところがないのか、清々しく可愛らしい笑顔で返事をする。
「そうか。俺の名はハルキ。んで、こっちのフードが……アウルだ」
「ハルキ……?」
「そうですか、よろしくお願いします!」
リリシアと名乗った少女はすんなりと信じたようだ。だが遥希はアウリールのことをアウルと言った。
そのことについて思ったことがあるのだろう。遥希の耳を千切れんばかりに引っ張り寄せ、リリシアに聞かれないように囁く。
「なぜ嘘をついた?」
「それはお前が獣種だからだ。万が一のことを考えて偽名を使った方がばれにくいだろう?」
「だが……」
「それにお前は獣国の『切り札』なんだろう? 人間どもに知られている可能性が高い。そう考えると、なるべく本名を出さない方がいい」
「なるほど、流石はハルキだな!」
どうやら納得してくれたようだ。それにしてもアウリールには危機感というのが欠けている気がする。後でお灸を据えてやらねば。
遥希はまだ痛む耳を押さえながら、リリシアに向き直り口火を切る。
これは遥希にとって重要な事だった。無論、リリシアにとってもだ。
「……2つほど質問いいか?」
「はい、なんでしょう?」
「まず1つ目、一国の王女が、なぜ名も知らない男に奴隷にしろだなんていうんだ?」
「そのぉ……。先ほども言ったとおり………です」
惚れてしまったから奴隷になりたい。何か違う気がする。もしこれが誰かに教わったことなら、相当悪趣味な悪戯だ。
少し言いづらい気がもするが、このままでいいというわけにはいかない。どうせなら訂正しておこう。
「2つ目いいか?」
「はい?」
「奴隷、の意味を聞いてもいいか?」
「はい! 主のそばに一生いる、又は生涯を共にする、という意味です!」
「ハルキ……。予想通りと言ったほうがいいか?」
「あぁ、かなり重症だ」
「え? なんですか?」
やはり奴隷の意味を履き違えているようだ。重要な部分だけ抜け落ちている。半分正解、と言いたいところなのだが、大きく意味が変わってきてしまうために甘いことは言っていられない。
このまま勘違いしたまま残りの人生を生きていくには、色々な危険が伴うだろう。これでは奴隷商に売られても文句は言えない。
というわけで、早速訂正をさせてもらう。
「耳を貸せ」
「はい」
「あのな、奴隷っていうのは……」
「………………!?!?」
リリシアは遥希の説明の最中、真面目な顔で聞いていたが、終わりに近づくにつれ、羞恥に顔を染め、一頻りバタバタと慌てた後、俯いてしまった。
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「落ち着いたか?」
「はい……。すいません」
「気にするな」
誤解が解けたところですぐさま人間国に向かおうと思ったのだが、リリシアが立ち直るのに相当な時間を要してしまったのは言うまでもなく、数十分足止めを食らった。
先ほどと比べ今は随分落ち着いたようで、顔色も戻ってきているようだ。
「じゃあ、そろそろ行くぞ」
「はい。ってどこに行くんですか?」
「人間国だ。お前の目的地もそうなんだろ?」
「そうですが……。お供してもよろしいのですか!?」
「おう、俺らの目的も人間国だからな」
「急ぐとしよう。ここは夜になるとどこからともなく魔物が虫のように湧き出てくるからな」
アウリールの言うことは尤もで、魔物は暗いところを好み、夜になると活性化する。それは日本でも似たような伝説があり、太陽と月は対になっていて、太陽が光に対し月は闇、という説がある。つまりはそういうことだろう。
そして急ごうといったアウリールは、当たり前のように遥希の背中に乗る。
「流石に2人は無理だ」
「ならどうするんだ?」
「あぁ、待っていろ。ちゃんと考えている」
遥希のスキル、『創造』というのはとても便利だ。イメージすることで現象を起こせるだけでなく、物の具現化まで行える優れもの。そして具現化はこの世界のモノに限らない。
「本当は空中遊泳と洒落込みたいところなんだが、ここは単純に、一文字解放、車」
それは遥希のイメージ通りの形で出現した。車の名はゼントーノ。
なぜこの車にしたかというと、昔やっていたゲーム、グラ〇フの中で一番好きうだった車だからだ。それにスピードも結構出ることから、急ぐには丁度いい。
これは予備知識だが、某ゲームの中でゼントーノはトップクラスのスピードを誇る。欠点があるとすれば、ブレーキの性能やその外見だろう。今はスピード機能を重視した方がいいため、ブレーキと外見は捨てることにする。
そして重要な点がもう一つ。これにゼントーノは関係ないが、科学というモノを知らないアールマティ人にとって、車とは未知の領域。口止めをしなければならない。
それに今もこうして驚いている。今更誤魔化すつもりもないが、一応保険としてこれ以上『創造』について漏れるのは困る。
「最初に言っておくが、これのことは他言無用だ。もしも他人に漏らすようなことがあれば……」
遥希から発される恐ろしい殺意の奔流に、2人は首を左右に振ることしかできなかった。
あ、そういえばゼントーノってゲームの中では2人乗りだっけ? まぁいいや。
「それじゃあ行くぞ。乗れ」
「乗る……。どうやって?」
「はぁ、そうだった。これを見るのは初めてだったな」
「あぁ……」
「説明は移動中にさせてもらう。それで乗り方だが……」
ドアの開け方や、シートベルトなどの説明をするのにまたも時間を食った。
この世界に交通法など存在しないが、何と言っても遥希は免許を持っていたわけでない。運転の仕方は知識として知っていただけだ。
かなり荒っぽい運転になるため、シートベルトの着用を厳守させる。そうでなければ事故を起こした時、どうなるか想像もできない。
「シートベルトしたか?」
「あぁ、しっかり止めたぞ!」
「私も準備できました!」
「それじゃあ出発する。荒っぽい運転になるが、我慢してくれ」
遥希はアクセルを全力で踏む。何か浮遊感があったような気がするが、今は気にしないことにする。
少しの間、加速を続け、今はトップスピードの405km/h。ノリに乗っている。風になるとはまさにこのことだろう。
「よし、アウリール。これについての説明だが」
「「はぁ………」」
どうやらアウリール、リリシア共に窓から見える景色が高速で変わる姿に驚いているのだろう。食い入るように眺めている。
無論、遥希もこんなスピードで地面を駆けたことはない。
窓から見える景色は、草原一択で草が生えている程度の地域なのだが、遠くに見える森が高速で流れていくのには少し感銘を覚える。
これ以上アウリールに話しかけても返事は帰ってこないだろう。
「まぁ、いいか」
遥希は車で恐ろしく速いスピードを出しながら、何とも間の抜けた顔をするのだった。
地球の科学発明品は偉大ですね。
この話を作っているときにそれはもう深く感じましたよ!
今後も科学発明品をちょくちょく出すつもりでいます。
ご希望があればコメントをください!
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